見出し画像

ソフビの原型を作るお話

ソフビの原型を作る?
というのは結構特殊な作業で、好きなように作れば良いわけではなくかなりの制約のもと製作せねばならない。
概ね、人形作って生きてますにて細かいことを伝えていくつもりですが、こちらではもっと実務的な、例えば道具は何を使ってるの?とかどんなふうに作業するの?というようなお話ができればと思います。

そもそも、何で作ったらいいの?
って話になった時、実際は『なんでも良い』という答えになる。
と言っても、ご飯粒で作ります!っていうのは困るわけで(笑)ある程度常識的な材料で作ります。

主に一番多いのが『粘土』になると思います。
金型にした時に干渉しない材料を選ばないといけない、と言ってもそこは先人が色々と試しているので、どちらかというとワックスに転換する際に気をつける部分が多いと思います。(ワックスについては後述)

主に
・石粉粘土
・紙粘土
・クレイ系粘土
・ポリパテ
等々

原型にこれはいけない、というものはあまりありません。
本当に常識的な材料で良いと思います。

これから『ワックス転換』という作業をしてざっくり割愛しますが金型製作に入ります。
金型にするためには『ワックス転換』というのはほぼ必須な作業で(厳密には他の材料でもできます)このワックス転換時に金型製作=電鋳に影響の出ないものを選びます。

このワックス転換というのが難儀で、シリコンで複製を取り、指定温度度でワックスを流し込み複製する。
という作業があります。
かなり難しい作業なので概ね業者にお願いする場合も多いのですが、複製はお手の物、という方はご自分で作業したりすることでコストカットを図ったりします。

今回はこの『ワックス転換』を一足飛びして『ワックスで原型を作る』という荒技で原型を作ります。

またそもそもの話ですが(笑)

『ワックスってなんぞや?』

と思われる方の方が多いと思います。
床にツヤ出すやつっすか?って話ですよ。
学校の長期休みの前に塗るやつですね。
あの臭いやつ。

ではないです。
想像しやすいものとしては

『ロウソクのロウ』

と思っていただけると分かりやすいと思います。
ロウソクのロウは『パラフィンワックス』というものできています。
いわゆるワックスですね。

その中でも鋳造しやすいワックスを選びます。
概ね現在インジェクションワックスというシルバーアクセサリーなどに使われるブレンドされたものを使われる方も多いと思いますが、実のところそれだけでは失敗する確率がかなり高いです。
なので『ソフビ電鋳用のワックス』にブレンドが必要となります。
この辺の欠点やら何やらはいずれ人形作って生きてますで解説できればと思います。

インジェクションワックスだけだと焼き出しという金型からワックス原型を熱で溶かして流し出す際に粘土質が高く、金型の先端部分にワックスが残ったり焦げたりと失敗する可能性が飛躍的に上がってしまいます。
そこで流動性が高いワックスを入れたり、造形用には硬くなるワックスを入れたりツヤを出すたまには…といろいろなワックスをブレンドします。

ただ、このブレンドに関しては0.1g配合を変えただけでも手触りが違ってしまったりでそう簡単にはできません。
またブレンドを間違えると金型を作る電鋳槽を破壊してしまったりします。
なので、金型屋さんが販売しているようなら購入するか、専門の業者に転換してもらう、というのが得策です。

よく配合を聞かれますが、上記のように何かしら問題が起きた時にこちらで責任を取ることができません。
なので、ブレンドに関してのご質問にはお答えできませんので悪しからず。

前置きが長くなりましたが(笑)ここからはどんな道具を使ってますか?
というお話に入ります。


おおむね使っているものはこれだけです。
ほとんどが今や通販やヨドバシカメラでも買えるようなものばかりになっています。
それは、以前使っていた造形師プロデュースのスパチュラを使っていましたが、長い間使っていたものが折れてしまい(!)それ以降しっくりくるスパチュラを見つけることができず、市販のものでいつでも使える物へと変えました。

まあ、実際道具というものは自分に合うものを使えば良いので、それが100円ショップで購入したものだろうと『自分に合う』と思ったらそれが自分に良い道具、ということです。
色々と試して自分に合うものを見つけましょう。


とはいえ上の画像、実は同じスパチュラで…
左のスパチュラは死ぬほどスカルピー造形をしてきて削れてしまったんですね…
このマイルドな感じがワックス造形にはフィットしてとても良いんです。
これが折れたらどうするか…
頭抱えます。


先にも書いたように、ワックスはロウを扱うので熱で作業するワックスペンというものを使います。

以前は輸入製のハープ社のワックスペンを使っていましたが、ワックスペンは非常に故障しやすく、特に断線が多い。
断線をすると線からペン本体の交換になるのですが、輸入品であるために在庫がないと入荷待ち。
その間に作業できず。
さらに高価である。
という三重苦。

なので現在は日本製のアーテック社のものを使用しています。
まず部品の調達が早いというのと、大抵がペンにつながるコードの断線が1番の故障の原因で、ハープ社はペン自体の交換になるが、アーテック社のものはコードだけを取り替えられてリーズナブルでもある。
ショップの店員さんに勧められて日本製にしました。

削り出しですが、切り出しナイフでワックスを削るので親指が死にます(笑

鉛筆削りなどで切り出しナイフを使ったことがある方なら分かると思いますが、親指を支点に削っていきます。


画像のようになるので親指にかかる負担はすごいです。
テーピングを巻き、そのテープの粘着が出ないようにマスキングテープで覆ってます。
裁縫で使う布製のキャップも使ったことありますが、それもボロボロに擦り切れるくらいえらいことになります。
ガードせずに親指で作業すると皮が剥け、数日間痛みに悩まされることになりす!
必ずガードしましょう!



そんな感じでワックスブロックから形を削っていきます。



このような人形を削り…



約2時間半程度でここまでできます。
ワックス造形は仕上げをベンジンで磨く、という通常の原型製作からは考えられないようなスピードで仕上げができるという利点があります。

何かの機会があるようなら一度はワックス原型製作に触れてみるのも良いかもですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?