届かないラブレター1

今日はひとつ、ラブレターを書いてやろうかと思う。

誰に対してかというと、そりゃあとてもかわいい素敵な女性に対してだ。最初に断っておくと、大学の4年間での彼女との出会いからこれからまで書くのでべらぼうに長くなりそうだし、気持ち悪いと思われる部分もあるかもしれない。だからそうだな、僕は佐藤健でその彼女のことは有村架純と置き換えて読んでほしい。


それでは改めて、僕の紹介からはじめよう。僕は現在大学4年生、心理学部の臨床心理学科を専攻している。もう卒論も就活も一応終え、来る4月を楽しみにしながらも不安で仕方ない生活を送っている。

彼女と出会った今の大学というのは第1志望でも何でもなく、googleの検索窓に「大学 心理」と打ち込んで1ページ目に出てきた大学だ。滑り止めにはちょうど良いと思っただけで出願したような大学だから、大学自体のことはそんなに好きでもないし、入学当初はそこでの友達すらも必要ないと思っていた。

しかし、代返やグループワークも盛んな大学生活にはいわゆる「必要の友達」が必要なため、始まってすぐに作った。入学してすぐには、名ばかりのクラス制度があり、案外簡単に友達はできた。そして一人友達ができれば後は簡単、大人数の友達グループにも芋ずる式に入っていくことになり、そこのグループでクラスのかわいい女性の話題で盛り上がった。前置きが長かった。これが今日の話のはじまりだ。

そこでもりあがった女性は主に二人。その友達グループにはいない、NさんとTさんだ。Nさんは少し気の強そうな女性で、女優で言えば菜々緒さんのような人だ。18歳ながらその気品と凛々しさを感じさせる姿にグループのほぼ全員が夢中になっていた。しかし僕は、綺麗だとは思ったが惹かれはしなかったなあ。

僕が惹かれたのはもう一人の、Tさんだ。初対面で「ああこの人かわいいな」と心が弾んだのを覚えている。Nさんとは対照的に静かな場が似合うと思える女性で、でも人当たりは良さそうで活発な部分も見え隠れしていた。そして長髪、耳ぴょん。(耳ぴょんとは僕の造語で、僕は長髪から少し見える耳に萌えるという誰にも理解されないフェチをもっている。) そんな彼女に、僕は既に心を奪われていたのかもしれない。

しかしそんな彼女とは、クラスは同じでもグループ違いだった。講義も遊びも、大学にいるうちは自分のいるグループで過ごすのが当然。一度グループから抜ければもう戻ってこれない。そんな排他的な空気が流れており、ビビりの僕は他グループの彼女に話しかけられなかった。同じ学科で同じクラス、更には同じ英語の習熟度のクラスと、講義で彼女を見かけることはとても多かったのに、彼女のことは何も知らなかった。勇気を振り絞って声をかけようとも思ったが、接点もなしにかわいいからという理由で彼女に声をかけるのは失礼だと思ったし、そもそもそんな度胸もない。もどかしいが僕は、講義の度に見かける彼女をたまに見て、見とれることしかできなかった。もはや、彼女はテレビや雑誌越しにみかける女優と同じような対象で、その人と友達になろうということさえ、だんだんと思わなくなっていった。

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