天誅と人殺し

「天誅だ！」
笑わせんじゃないよ
アンタたちはただの人殺しさ
1人じゃなにも出来ない
天のせいにする臆病者たちめ
そんな奴らに最愛の夫を殺されたなんて
はらわたが煮えくり返る

夫は大名を守るために殺された
大名が天誅の相手と百歩ゆずっても
他の人間まで殺すことを天が許すと思うのかえ？

仇討ちが許されないなら
アタシもアンタ達と同じ
人殺しになろうじゃないか
女は鬼にだってなれるんだ
まずは夫を殺した奴らから

斬る相手は罪人だけ
正義を語る気はないさ
天誅とほざく奴らと同じになんかなるもんか
人殺しは人殺し
どんな大義名分かがげていようが
それ以上でもそれ以下でもないのさ

そんなアタシを夫は悲しむか
もう遅い
一度手を汚したなら
引き返すことは出来ないのさ
人殺しは殺されるのが世の定め
人殺しとなった私は
夫と同じ場所には逝けないだろう
それが世の理

鬼とかし咲き乱れる屑の花
鬼とかし我を厭うか亡き妻よ
（季語なし）

未完