見出し画像

月夜

「かえりたい」
月を見上げてそう呟く。
「家に?」
と聞かれた。
「違う。どこにかえりたいんだろう。分からない。不思議と月を見る度にそう思うんだよ。」
月を見上げたまま立ち止まる。
「月に帰りたい?」
少し笑った口調で聞かれた。
「いいね、かぐや姫なのかも。」
私も笑って答える。
「かぐや姫は月に帰って幸せになったのかな?」
純粋な口調で聞かれた。
「どうだろう。大事な人と別れてまで自分の国に戻ることの方が大切だったのかな。それが幸せだったのかな……天女の羽衣もそう。そこで『おわり』って、すごく不思議。」
日本独特な気がする、と呟く。
「読んだ人それぞれがいろんな『おわり』を考えられる。」
今度は楽しそうに言った。
「続きは自分で決めろってことね。」
私は歩き始める。

「あ、分かった。『かえりたい』は『帰りたい』じゃなくて、『還りたい』だ。」
もう一度、月を見上げて微笑む。

返事はない。
はじめから誰もいない。

「君とまたいつか話せるかな?」
独り言ちる。

周りからみたらずっと独り言か
そう呟いて私は静かに笑う。


【あとがき】
 最近中途半端な熟成した下書きがたくさん。もはや一から直すべきか、と(苦笑)
でも無性になんか書きたくて、思いつくままになんとなく書きました。シンプルに密かにやってみたかった書き方をしつつ、日本語や天女とかめっちゃ掘り下げたい衝動を抑えました!笑
 不思議さと少し不気味な世界観が書きたかったし、いろいろ想像してもらえたら良いなー。自分で書いたのって客観的になれない。面白くなくても面白いと思うこともあるし笑
この写真前も使って、全く別なのに今回も使ってしまった。これ好き。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?