弁理士試験の勉強方法に関するQ&A

弁理士の佐藤です。Twitterのアーカイブをダウンロードしたら過去のツイートから弁理士試験の勉強法について役立ちそうな情報が出てきたので記事に起こしました。

以前Twitterやskypeで弁理士試験の受験相談にのっていたことがあり、質問に対する回答をgoogle docsでまとめていたのですが、その内容をさらに再編成したのが以下となります。参考になれば幸いです。

条文の覚え方

条文の覚え方の流れは、その条文が大枠として何を決めたいのかを知ることから始まると思います。数行程度の簡単な条文ならいいですが一つの条文が半頁を超えるような条文をいきなり最初から理解しようとするのはNGです。
その条文が何を決めたいかを知ったうえで、その内容をどのように表現しているのか、具体的にはどうか?例外はないか?という流れで知っていくことになります。基本的には受験機関のテキストをベースに講義を聞きながら勉強するのが一般的かと思います。LECなら短答アドバンスですしTACなら短答逐条テキストです。
最初からいきなり青本や審査基準で理解しようとすると逆にしんどいと思うのでお勧めしません。青本はあくまで裏付けなどが必要な時に参照するものだと思っています。もちろん受験機関のテキストを十分に理解した後で青本や審査基準を参照するのは全く問題ありません。
テキストで勉強するときには、条文の構造を覚えること(かっこ書や読み替えの内容を理解すること)も重要ですし、引用している条文番号がだいたい何をいっているのかを知ることも重要になります。
条文では、そのなかで号分けなどせずに並列的に項目が記載されることもあり、これらの項目の関係を正確に理解するのも最初のうちは難しいです。
例えば「及び」、「並びに」、「又は」、「若しくは」で並列に記載されている係り受けがわからなくなります。なので、講義で内容をしっかり把握すること、そしてペンで線を引いて分けるなどそれらの関係をしっかり記録しておくことも重要です。
そういった構造が理解できたうえで、条文で規定されている重要な事項、手続等の主体、時期的な制限、手続の内容や制限などを例外を含めて覚えていく形になります。このような複雑な内容を効率的にこなすことを考えるとやはり予備校を活用した勉強が必要になるのかなと思います。
それらをスムーズに進めるためには、条文集への書き込みのような条文集を使いやすくするための工夫も必要になります。章ごとにずらしながらタブを付けて引きやすくするとか、かっこ書は細いペンで囲って本文を読みやすくするとか、蛍光ペンで重要項目を塗っていくとか方法はいろいろです。ペンで塗るとページ同士の密着度が下がりページをめくりやすくなるという利点もあります。四法ぐらいはペンで塗っておくのをお勧めします。
タブのつけ方については以下のツイート(レスも含む)が参考になると思います。

それから、条文へのメモ書きなどにはフリクションのペンを必要に応じて使うのがよいと思います。
理由は、間違えてもいいから、あとで直せるからと気楽に書けることで足跡を残せるのがよいのです。
私が勉強するのに使っていたペンをまとめたツイートもありますのでこちらも参照してもらえればと思います。

条文をどのぐらい覚えたか

ここは人によってまちまちだと思いますが、大枠としては「過去問と答練で出たものをしっかり覚える」ことが大事と思います。
それから、短答、論文、口述、それぞれ覚えるべき内容が変わってきます。
短答
ぶっちゃけ過去問で出た条文、答練で出た条文を設問の趣旨に沿ってしっかりあてはめて使えるようになっていればよいのかなと思います。この時にできるだけ条文番号は覚えるようにしましょう。論文で活きます。
頻出かつ複雑な条文は、A4/A3のコピー用紙に自分なりにまとめてみましょう。特許であれば仮通常実施権、優先権など、実用新案の訂正など、意匠であれば利用抵触、商標なら各種審判の相違点など、テキストで学んだだけだと理解して使いこなせるようになるのは難しいかもしれません。もちろん、受験機関で良くまとめられたものが提供された場合にはそれを使うので構いません。
それからマイナー条文をがんばって覚えてもあまり費用対効果は高くありません。どこにどんな条文があるのかぐらいは覚えるのでよいでしょう。
論文
条文を論述でどうやって使うのかが重要になる論文試験の対策としては、過去問や答練で論述するのに使われたものを再現できるようにすべきです。
そもそもの話として、論述に使用する条文はどこにあるのかを知る必要がありますし、条文番号の条・項・号を正確に記載できるように、これらをまず覚える必要があります。
答案では条文の文言を出来る限り再現する必要があるので、条文で規定される主体・客体・時期・手続・効果を覚えるのも重要ですが、条文からレジメなどで書かれているような記載にどうやって落とし込むかを研究し使えるようにすることも重要な勉強になります。
口述
ここでは過去問などを考慮して重要な条文(例えば50ぐらい?)をできるだけ暗唱できるようにしたいです。私の受験した2019年から条文集を開いたままで回答できるようになったようですが、それでもすらすら答えられるように覚えておきたいです。論文試験が終わったら少しお休みを挟み、論文の合格発表の前から過去問などを参考に勉強を進めていきましょう。

テキストの回し方

テキストは、まず講義に沿って重要な箇所をマーキングしながら内容を理解し、問題を解いたときに分からなかった部分を見直して記録するものだと思っています。そして、試験前に見直して知識を入れ直すための準備の場所でもあります。
マーキングのしかたとしては、重要なところを赤青黒の細ペンでまず塗り、より大事な部分は太いペンで塗ります。
さらに重要だと思ったときは、線で囲み、または、理解した内容(理解すべき内容)を要約して脇にメモするのもよいです。語呂を作って書くなどもよいです。テキストにもメモや語呂を入れていくことで、自分なりの解説付きのテキストノートに育てていく感じがよいと思います。
テキストについても蛍光ペンの塗り方はLECの宮口先生の塗り方がよいと思います(講座を検索してみてください)。
さらに目立たせたいときは、シールを貼るのもありです。私は下の商品を近くの文具店で買いだめして、過去問や答練で解けなかった条文のテキストの個所や特に覚える必要があると思ったところに貼っていました。薄くて目につきやすくてよかったです。

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自分の好みのシールを探して文具店に行ってみるのも良いでしょう。
テキストは文字ばかりで読むのがしんどいですが、シールを貼っていくことで可愛い動物が注意ポイントを教えてくれるような感じになりほっとできました。ただし白い動物(パンダとか)は貼っても目立たないので使わずに余りました。
別の方法として、ある程度勉強が進んだら、問題が解けなかったとき、分からなかったときに日付をつけてその旨を書き込むのがいいです。後で見直したときには知識がついて自分で回答できることがあります。逆に出来ないところをそのまま残して試験に臨むのが一番いけないことです。もちろん悪問まで全て溶ける必要はありません。
試験勉強の目的は試験前に問題を解けるようになっていること、又は知識を入れ直せるように準備することにありますが、短答アドバンスだと全科目合わせると確か全部で1700ページぐらいあったと思うのですが、短答の直前期までに全部見直せるようにしておくのがいいと思います。
そのためには、直前期に1700ページ全部を読むのはしんどいので、重要な所が目立つようにしておくと見直しが楽になります。というか現実的に可能な作業になります。
そういうことを逆算してメモやマーキングをしていくのです。

記憶の定着させ方

つまるところ繰り返してやるしかないです。
ただ、繰り返しに無駄がないようにすることが重要という話です。
例えば、間違えた問題はノートにメモしておいてそこだけ次の日も見直すとか、次の日もそこだけ解き直してダメだったら次の日も解くとか、そういう工夫がすごく重要です。あと、どう間違えたかをメモしておいて繰り返し解いたときに後で見られるようにするとかもよいです。以下のツイートの感じがおすすめです。

ツイートのリングノートは折り返せて問題集と並べやすくおすすめです。
試験勉強は、家で勉強しているときに解けるためのものではなくて、試験の現場で解けるようにするためのものなので、勉強しているときに記憶を定着させることもスタートラインとして重要ですが、直前期に覚え直せるようにすることのほうが重要です。繰り返しになりますがここが重要です。
別の工夫として、知識の集約するツールとしては、A4のバインダーに白紙を挟んでおき、覚えるべきものを付箋に書いてその紙に貼っていくのがおすすめです。単語帳に書くのもしましたがめくる作業が無駄です。
バインダーに挟むスタイルにすると、付箋が増えてきたらジャンルごとに再分類して貼り直したり、並び替えたりできるのがいいです。普通のノートだとそういった融通をきかせることができません。
付箋もいろんなサイズがあるので、内容によって使い分ければいい感じのノートになります。

1日の勉強量(平日の勉強の確保の仕方など)

平日の目標は、朝1.5時間、夜1.5時間で3時間できれば御の字でしょうか。
Twitterを見ていると朝4時に起きて4時間勉強するという人もいますが大変そうに思います。
朝も5時起きしようとすると最初のうちはしんどいですけど、慣れればそれなりに起きれるようになります。というか目が覚めるようになって、試験後に起きるのを遅らせるのに苦労しました。
仕事の環境によっては、通勤時間、会社での昼食後、風呂の時間などを使えば朝夜の時間は減らしてもよいかなと思います。その分3時間以上勉強してもいいですが、疲れがたまってしまうおそれがあるのでおすすめはしないです。
通勤時間は講座の音声教材で復習が鉄板かなと思います。コンパクトな条文集を使い、メモした場所を見直しするのもいいですね。ただ、単に読んでいくようなやり方は正直どうなのかと思います(そういうのが得意な人は別です)。あと、↓で共有したパリ条約の音声を聞くのもいいですよ。

会社での昼食後は短答アプリとか条文の確認、なんだったら自炊したテキストとかをスマホ等で読んでもいいです。
風呂では、暗記したいものを、ラミネートしたり、チャック付きのカードケースに入れて読んでいました。一例として、LECの過去問をA3両面コピーで、表面は設問(できれば問題構成も)を印刷し、裏面は解答を印刷したものをラミネートして、風呂に入るときに1通は読むようにしていました。
LECの過去問集の模範答案は字は小さいですが2ページ構成で作られているので、4ページに分けているTACよりそういった面では便利でした。
1年4通×7年で28通ですから1月で1周回せる感じになります。1年やると風呂時間だけで12周見れる。これだけでも差は結構大きいです。
土日の目標は、午前中3.5時間、夕食前まで4時間、食後に2.5時間で10時間が目安かなと思います。もちろん家族がいるような場合は難しいかもしれませんが理想的な数字はこうだと思います。
いずれにしても夜は遅くとも11時には寝ましょう。朝も勉強するので夜が遅いと体調が悪くなって勉強できない日ができたり、頭が回らない状態でしんどい思いをして勉強しても頭に入らない問題もあります。12時間勉強する日もありましたが、その後にあまり勉強できない日が続いたりして、トータル的にはマイナスになりやすかったです。出来る人はどうぞ。
こんな感じで、一週間で35時間、年間1824時間勉強できる計算です。昔読んだ本だと2000~3000時間の勉強で合格できるとのことだったので、上手くやれば1年で受かるかもしれないっていうのはあながち嘘ではないというのが分かる数字です。

ひとまず今日のところは以上ですが、聞いてもらって答えられることがあれば追記するかもしれません。



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