見出し画像

コンサル弁理士による知財コンサルへの誘い2

 知財コンサルに取り組んでみたいと思う弁理士はたくさんいるでしょうが、弁理士にいきなり「技術開発支援」とか「海外進出支援」などのコンサル依頼は来ないでしょう。

 前に説明したように、弁理士の日常業務の一つである「知財相談」を、法律論だけで片づけない。相談企業や相談内容の裏に潜む問題や疑問を洗いだして、「課題」を抽出する。この作業により「知財コンサル」への取り掛かりが近付いてきます。つまり「発明の新規性」、「特許の取得手続き」、「見積もりや先行調査」などのキーワードだけで話していては、知財コンサルはちっとも近づいてきません。勿論、企業側もその相談単体には満足しても、本来の「事業活動をレベルアップ」ということに近づけません。需要者の企業も供給者の弁理士も、いずれも真の満足に近づけません。

コンサル022

 この図のように、「知財相談」から分析・課題抽出に持ち上げることが必要条件です。この持ち上げるために必要となるスキルは「妄想」の力。想像という言葉が普通でしょうが、弁理士の本業に凝り固まっていたり、企業感覚の低い弁理士は、「想像」くらいでは不十分。「妄想」が必要です。何を妄想するかといえば、「この相談者は社内ではどんな位置づけだろう?」、「発明内容の技術。会社の事業と合ってないような(新規事業?単なる思い付き?)」、「名刺には、溝口工業とあるが、ワンマン中小企業かも」、「作業着で相談に来ている。現場を大切にする会社かも」、「資料など必要なものを持参してない。日頃から社内での資料整理ができてないから、社内の情報管理ができてないかも」と、いったようなことです。

 口に出したら失礼だなと感じるレベルの疑問などを次々と思い浮かべます。名刺そのものからも妄想します。バラバラで妄想するだけではなく、一つの妄想から次の妄想へつなげてみます。「ワンマン中小企業→作業着→資料の管理ができてない→相談者は「課長」との役職だけど、開発・設計・営業などの何でも屋にされている。ということは、発明も企業の事業に乗っかったものではなく、社長の思い付きくらいかも知れない。となると、相談企業は、『 既存事業が行き詰っていて、新規事業を模索しているけど、そもそも新規事業を構築するためのメソッドを持ってないかも知れない』という、課題を仮定できるかも知れません。

 これが妄想の力です。妄想ができない限り、知財コンサルには近づけません。私は、こういう活動を15年以上も続けて、代理だけでなく企業支援(コンサル)でも相当量の仕事を受任してきております。知財コンサル単体でも、事務所維持できる売り上げを上げ続けています(そんな弁理士は少数でしょう)。その売り上げの源泉は、この「妄想力」。

 ぜひ、知財コンサルをしてみたい方は知財相談の時、企業と打ち合わせるとき、明細書を書くときも、常に「妄想」をしてみてください。また、このようなセミナーの講師もよくやっています。講師をしていると「妄想って言葉は悪い言葉です」といった生真面目な反応を示す弁理士さんもいますが(苦笑い)。でも、そういう言葉で自分のスタイルを作り替えるくらいをしないと、知財コンサルには入っていけません。

 多くの弁理士が知財コンサルに入ってきて、より多くの中小企業を支援すると共に、弁理士の専権業務のパイを食い合う不毛な状況から、自分なりのマーケットを作り上げる状況が生まれることを期待する日々です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?