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コンサル弁理士による知財コンサルへの誘い4(稼げる弁理士になろう)

 これまで、知財コンサルの入り口は、弁理士として一般的な知財相談から、企業内部に潜む課題を把握することと説明しました。ところで、多くの弁理士さんは、この知財相談に真正面から答えて終わってしまいます。「特許性がありますね」とか、「先行文献を調査してみないと」とか。

 あるいは、相談者を喜ばそうとして「はい、その技術が世に広まると楽しみですね」と、リップサービスをしてしまう。これらは、弁理士の本筋として悪いことではないのです。ただ、真正面から答えて終わり。相談者の相談に何の疑問も持たずに終了すれば、知財コンサルは永遠に始まりません。勿論、相談者にとって本当に必要となる「解決すべき何か」が見逃されます。

 弁理士による知財コンサルのスタートに必要なスキルは、ずばり「妄想力」。相談者の相談内容、人となり、態度、やり取りの中から次々と疑問点を浮かべます。疑問点をさりげなく投げかけて、更なる疑問を持つ。あるいは、生じた疑問の裏に潜む何かを想定する。これらを「妄想」として、作業していくのです。

 例えば、名刺に「溝口鉄工株式会社」「専務 溝口督生」とあれば、「ああ、同族企業で、若いのに専務。社内ではプロパーが大切にされないかも知れないなあ。力あるエンジニアの出世が止められているかもなあ」といったことを「妄想」できるでしょう。あるいは、やり取りの中で「やたら大企業との取引実績を自慢する」相手であることもあります。そのとき、「どうも胡散臭いなあ(笑い)」とかも。じゃあ、胡散臭い裏には何があるだろう?って考えてもいいでしょう。昔の栄光にしがみついているだけでは?と。かつ事業内容からすると、取引すべき相手の種類を変えるタイミングに見えるとか。

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 では、「妄想」する力を向上させるにはどうしたらよいのでしょうか?弁理士さん向けの講演をすると、私にはそのような質問が数多く寄せられます。皆さん真面目な弁理士さんで、研修を受けたり、本を読んだりと頑張っています。でも、決定的に欠けていることがあります。「日々の活動を利用していない」ということです。本を読んでも研修を受けてもそれは一瞬。一過性ですし受け身のままでは「スキル」は身に付きません。常に実践しないといけません。

 上の図は、日々の行動で妄想力を養う例を示しています。毎日、通勤したり外を歩いたり食事をとったり施設を利用したり。。そんな日々の中で常に疑問を持って、それの「なぜ、ではこういうことでは」を考える癖をつけることが重要です。私は毎日そうしています。新聞やニュースを見ても、「今日のアナウンサーはなぜこの部分をオブラートに包むのだろう?圧力があった?それとも自分が納得してない?」っていうことを妄想します。

 図にあるように、「金券ショップはなぜ集まるのか?なぜ金額も横並びなのか?」という疑問も持ちます。カルテル状態かも知れないし、皆で分業体制を取ることで不良在庫の持ちにくいようにする(これが本筋かな)ことが目的か。あるいは、集客力を高めることかも知れません。

 松屋やすき屋は食券なのに、吉野家はなぜ違うの?経営者がお金のやり取りを通じて社員教育したいのか。それとも、メニューを増やさないため?このお店は何故動線が悪いのだろう?こう変えたら動線が良くなるのになあ。といったことをいつも頭に巡らして、シミュレーションまでするのです。そこまですると、次の妄想も生まれます。

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 このような妄想力があれば、知財相談をそれだけで終わらせずに済みます。図のように「大学との共同開発成果の特許を取りたい」という相談が企業からあったとします。「はい、特許出願しましょう」で終われば特許出願の売上のみ。でも、妄想で「開発体制は、ビジネスモデルは、営業戦略は、じゃあ、契約や技術整理は?」とやっていけば、仕事として対応しなければならないことは増えます。無論、企業にとっても処理しておくべきことが把握できメリットがあります。

 こうなれば、当然により大きな仕事と対価を得ることができます。勿論、当該企業からの信頼も高まるでしょう。

 そうなれば、すなわち「稼げる弁理士」になれるのです。弁理士マーケットは完全にシュリンクしており、弁理士の数は増えるだけ。その小さなパイを奪い合う考え方からいい加減に脱却して、自ら弁理士としての次のビジネスモデルを作り上げることが、何よりも「稼げる弁理士」への第一歩なのです。

 

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