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Mメソッド(雑誌「発明」連載)紹介シリーズ1(共和技研㈱特集)

 発明協会(発明推進協会)は、日本の発明や知財を推進する老舗の機関です。発明推進協会からは、業界誌「発明」が毎月発行されており、知財業界の中では最も老舗の業界誌と言えるでしょう。

 技術コンセプト=技術の本質を見出せると、商品=事業の広がりを作れる。「コンセプトワーク」は、知財経営と知財経営コンサルの基本!


 私は、2012年から縁があって同誌に定期連載および不定期掲載を持っております。(1)自分が支援している中小企業の取り組みや汗と努力を世の中に広く知ってもらいたい。(2)自分なりに試行錯誤してきた、知財による事業活動への貢献(知財経営コンサル)の実情やロジックを、知財専門家に知ってもらい、知財業界を盛り上げてほしい。との2つの目的がありました。自分のノウハウを幾ら公開してライバルが増えても構わない、それで知財と知財業界全体が盛り上がるならよし、が、私の信念です。

 一方、同誌に記事を連載する上で譲らない線は「自分がきちんと支援に係った企業やケースのみを題材とする。お国や行政の依頼で「みんなが注目している旬の企業」をインタビューしただけの企業を、表面的に題材とすることは絶対にしない」ということ。後者のような記事を見ることは(〇〇白書などでも)多いですが、読み物としては面白いが、参考にできる熱量は低いです。否定はしませんが、そういう記事を書かないということを、自分への縛りとしています。

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 2012年11月号が私の記事の最初でした。対象としたのは、私の顧問先でもある福岡県にある「共和技研㈱」。空気圧でボールを発射するバッティングマシンを開発した小さな町工場のような企業です。当時は社長+数名の企業でした。当時はテレビのバラエティー番組で、200Kmのボールを打てるか?みたいなシーンに使われていましたね。そういったメディアを通じて知った人もおおいのではないでしょうか?

 この商品の技術の肝はたくさんあります。空気圧の制御、機器の構造、制御等々。当時は、メディアにも出て行政も取り上げてくれる。バンバン売れると企業さんは考えていました。でも、話題と販売量は違うんです。話題になれば類似品や同業との争いも多くなります。そこで、特許権を始めとした知財をきちんと考える方向に進めていきました。

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 知財権の取得に並行して、顧客での信頼性向上や同社の営業での自信が増えていき、話題先行から確実な販売につながって行きました。でも、私はそれだけでは不十分と。「空気圧でボールを発射するピッチングマシン」のみの特許だけではなく、この商品を、技術要素に分解していくと様々なものがあるんです。これらのそれぞれには、様々な工夫がある/あるいは今後の工夫の必要性がある。同社の顧問弁理士として、定期的な知財会議の中で、これらを見過ごすことなく発明を発掘・整理します。それを特許にするという短絡思考ではなく、その技術が商品販売の下支えになるか?どのようにすれば下支えになるか?のストーリーを最初に作ります。そのストーリーが成立すれば、特許出願を進めていきます。

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 同社のように、「町工場が新しい技術で商品を開発→マスコミなどでもてはやされた→行政なども注目」というと、さぞやすごいことが起こっていて、まさしく「下町ロケット」のようなサクセスストーリーがあると考えられてしまいます。でも、下町ロケットはあくまでドラマ。現実は、販売にも製造にも苦労するのが現実です。地味で地道なことをやっていかないと、結果は生まれません。町工場のサクセスストーリーは、ロケットを作るといった国家的プロジェクトのお金が注ぎ込まれて出口が用意されているから、携わる中小企業は仕事ができるのです。自ら出口までを用意しなければならない普通の中小企業が、サクセスに行けるのは1000分の3でしょう。

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 私は、地道だけど、このような中小企業が着実に出口を作っていくために、「リスク管理→論理思考→共栄での他社との役割分担確保→ビジネスストーリーに合わせた知財権確保」を、時間をかけて同社の中に作り上げていきました。私がかかわったころは、ピッチングマシンの販売台数よりも、バラエティー番組に出る方が多かった同社は、いつの間にか様々な場所にマシンを販売するようになりました。

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 更に、多くの中小企業や知財専門家に訴えたいのは、技術コンセプト=技術の本質を愚直に探ってほしいということです。これを見出すのは、極めて苦しい。技術者だからできるわけでも、営業マンだからできるわけでも、弁理士だからできるわけでもない。これらの融合から見つかる。この技術コンセプトが見つかれば、ボールを発射するピッチングマシンで、この事業が終わらず広がっていくことに気づきます。

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 同社の顧問弁理士になって12年。早いものです。これらの内容は、雑誌「発明」の2012年11月号、12月号に特集したものです。初めての記事で、作成から校正まで、長い苦労をしたことを思い出します。でも、その後も同誌に連載を持つことができたことは誇らしいですね。記事の内容は、ぜひ同誌のバックナンバーで確認してもらえたら嬉しいです。単なるインタビューではなく、私自身が深く・長く・苦しくかかわった企業を題材にしたからこそ、熱量のある記事になっていると思います。

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