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備えあればうれしいな

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最近の記事

どうしてこうなった、を味わう。吉川浩満さん『理不尽な進化』

吉川浩満2021_理不尽な進化 増補新版_ちくま文庫  1月ほど時間をかけて、けっこうゆっくりと読んだ(この文章を書くのはもっと時間がかかった)。途中しんどくなって、増補新版で追加された「パンとゲシュタポ」に飛んでみたり、戻ってみたり。しんどさの原因は明白である。進化生物学については自分はまったくの無学だから。予備知識がないと、基本的には読書はつらい。この本はダーウィニズムにまつわるあれこれとグールドが戦った適応主義にまつわる理不尽さが書かれているのだが、グールドのが界隈で

    • 量子論入門、松浦壮さんの本。

      松浦壮2020_量子とはなんだろう 宇宙を支配する究極のしくみ_講談社ブルーバックス  量子とはなんだったのか。それは粒子の性質と波の性質を併せ持つ。観測をした時点で、その振る舞いと組み合わせが確定される。とても曖昧なもの。日常生活との親和な相対性理論のような古典物理学の世界とは全然異なる物理学。  真剣に読もうとすれば読もうとするほど、訳がわからない。私が物理とか理系なるものの理解を諦めてから10数年経っている。行列の計算とか物理式が出てきている時点で結構しんどかった。し

      • 木村元さんの『学校の戦後史』

        木村元2015_学校の戦後史_岩波新書  2019年末から起こった新型コロナウイルスによる影響で学校は新たな方向性を打ち出さなければならないという状況に追い込まれてきた。オンライン授業や学びの保障、学校の福祉的な機能、感染症対策といったものがあげられる。しかし、コロナ禍以前から不登校の問題やオルタナティブスクールなどの別の仕方の学びが求められていたし、発達障害をめぐる当事者の学びやすさを求める運動、教職員の多忙化問題とパラレルにチーム学校による学校の機能を高めていくような文

        • 米澤穂信『本と鍵の季節』感想

          米澤穂信2021_本と鍵の季節_集英社文庫  2年前に単行本がでて、今年文庫化されたらしい。「古典部」シリーズのように舞台は高校。図書委員の男子高校生2人の謎解きもの。2人のやりとりはとてもみずみずしく描かれている。高校が舞台になっているので「古典部」と比較してしまうのだが、こちらの方が結末は若干重め。「古典部」は学校の中での人間関係という感じがするのだけれども、「本と鍵」は学校の外に数歩でてしまっているような印象を受けた。ぐいぐいと読まされてしまうミステリーはさすが。人へ

        どうしてこうなった、を味わう。吉川浩満さん『理不尽な進化』

          「非モテ」という現象をちゃんと理解するところから始める

          西井開2021_「非モテ」からはじめる男性学_集英社新書  「哲学の劇場」の第74回(https://youtu.be/v6PmROFioPE)をpodcastで聴いていた時からなんとなく頭から離れないタイトルだった。フェミニズムやジェンダー論は巷よく溢れているが「男性学」という分野については、さっぱりだ。昨日の本屋で無事にサルベージできたので読み始めた。なるほど「非モテ」。これは男性にとってあまりにも大切なテーマだと思えた。  まず「非モテ」という言葉はスーツケースワー

          「非モテ」という現象をちゃんと理解するところから始める

          広田照幸さんの『ヒューマニティーズ 教育学』を読んで

          広田照幸2009_ヒューマニティーズ 教育学_岩波書店 岩波書店からでている『ヒューマニティーズ 教育学』。「知のゲリラ」として教育社会学者の仕事をされてきた広田照幸さんの本。ご本人が教育社会学が「知のゲリラ」と言っているのだから、先日ちくま学芸文庫で文庫化された『陸軍将校の教育社会史』のような本も、なるほどゲリラ戦のようなテーマだよな、と感心してしまう。  この本は教育学の入門書的な立ち位置をとる。大学で教育学を勉強したけれども、なんだかよくわからずそのまんま教員になって

          広田照幸さんの『ヒューマニティーズ 教育学』を読んで

          森川すいめいさんの『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』を読んで

          森川すいめい2016_その島のひとたちは、ひとの話をきかない 精神科医、「自殺希少地域」を行く_青土社  著者である森川さんが「はじめに」で言っているように、オープンダイアローグについて知りたかったら、終章だけを読めばいいのかもしれない。私自身もこの本について、森川さんがオープンダイアローグを取り入れている精神科医で、オープンダイアローグについて書いていると事前に知った上で手に取っている。それでも、自殺希少地域とはなんなのか、何が作用して自殺を少ない状態にさせているのかつい

          森川すいめいさんの『その島のひとたちは、ひとの話をきかない』を読んで

          戸谷洋志 2021_ハンス・ヨナス 未来への責任ーやがて来たる子どもたちのための倫理学_慶應義塾大学出版会 

          【読書メモあるいは整理した関心ごと】 「あなたの行為の影響が、地上における本当に人間らしい生き方の永続と両立するように、行為せよ。」  ドイツの哲学者ハンス・ヨナスの思想が凝縮された言葉だ。ヨナスはユダヤ人であり、第2次世界大戦を乗り越えていた人間である。  ハンス・ヨナスの哲学的人間学において「代謝」という概念がある。あの、私たちが日頃意識せずとも勝手に行われる代謝のことだ。汗をかくとか、水を飲むとか、そういった行為で促されるもの。その代謝の存在こそが有機体の条件とな

          戸谷洋志 2021_ハンス・ヨナス 未来への責任ーやがて来たる子どもたちのための倫理学_慶應義塾大学出版会 

          【発達保障と共生の間で】

          小国喜弘編 2019_障害児の共生教育運動 養護学校義務化反対をめぐる教育思想_東京大学出版会  特別支援教育は2007年の学校教育法一部改正の際に特殊教育から名称を変更をしている。特殊教育の歴史は辿ってみると長く、1878年の京都の盲唖院からはじまる。その100周年の節目である1979年に養護学校義務化が施行されることになる。このときには日本の特殊教育の方向性がおおよそ固まっている。それは1969年の「特殊教育の基本的な施策のあり方について」の答申で示される。この答申のな

          【発達保障と共生の間で】

          2021/08/15、読んだ本

          今思うと戦争関係の本を読んでおけばよかったなぁと思う。 引き続き、『ヨーロッパ思想入門』。アウグスティヌスとかトマス・アクィナスとかデカルトとかカントとか。ルターの思想史への差し込み方が面白い。哲学史ではキリスト教やルターは宗教という扱いで触れられないこともある中で、この取り上げ方はなるほどと思う。 『障害児の共生教育運動』は終章から、いくつかそうだよなと思うような言葉を見つける。結局「共生」を語りながら、昔とは「別の仕方」で分離を広げているのが現状であると肌感覚からも感

          2021/08/15、読んだ本

          2021/08/14

          戸谷洋志さんのヨナス本を読んでいる。ヨナスの〜すべしはカントの当為の哲学とどれほどの距離があるのか。距離があることは分かっている。カントは道徳律に従う。ヨナスは、未来世代、まだ見ぬものへの想像力に従う、という感じか。 岩波ジュニア新書。岩田靖夫さんの『ヨーロッパ思想入門』。本当にこれジュニアなのか… 小国嬉弘さんの障害児の共生教育運動も並行して読んでいる。痛いくらいに大切な歴史がそこにはある。 森川すいめいさんの島の本も記録をしようと思って引っ張り出したけれども、途中挫

          2021/08/14

          三中信宏さん/読む・打つ・書く 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々

          # 三中信宏 2021_読む・打つ・書く 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々_東京大学出版会 << 読書から書評へと、暗闇の中の跳躍を果たす>> 理系でも研究者でもないのに、どうして「理系研究者の日々」を読むのか。気になったからだ。ただただそれに尽きる。読書はする。書評は書かない。執筆もしない。しかし、書くことへの憧れのようなものはずっと持ち合わせている。そういう気持ちをくすぐってくるのがこの本だ。 読書は好きだ。読書をした分だけ、何かが自分の中に残る気がしている

          三中信宏さん/読む・打つ・書く 読書・書評・執筆をめぐる理系研究者の日々