見出し画像

FP1級実技 2022/2/19 PartⅡ 面接体験記

私が最初に受けたのはこのPartⅡでした。

一見、対処しやすい設例と思われましたが、実はそこには大きな落とし穴が待ち受けていました。

設例は以下(金財サイト)の 2月19日 PartⅡ をご参照下さい。
https://www.kinzai.or.jp/fp/news-fp/34707.html

※尚、やり取りにおける回答は正解ではありませんので、お取り扱いには十分ご注意下さい。

設例課題を渡され、15分間読む

・主人公Aさん(66歳)は、甲土地(自宅)と丙土地(駐輪場)を所有している。

・甲土地に隣接する乙土地がマンションデベロッパーのX社に売却されるらしいとの噂を耳にした。

・そのX社から「ぜひ甲土地も購入したい。相場の3~4割増しでも構わない。等価交換が希望なら対応可能」との話が舞い込む。

・甲土地の自宅は築40年で修繕費もかさみ、将来の生活資金を考えると魅力的な提案だと思われる。

・Aさんは妻Bさんと二人暮らしで、収入は年金と妻の給与と駐輪場収入、預貯金残高は2000万円ほど。一人息子のCさんは都内の分譲マンションで妻と2人の子の4人で安定した生活を送っている。

・妻Bさんは甲土地を売却するのなら、駐輪場となっている丙土地に家を建ててもよいかもしれないと言っている。

設例文の右には、甲・乙・丙、及び丙に隣接する丁土地の概要図が示されている。

ざっと読んで、「これは行ける!」と感じた。

まずは、定番の質問。Aさんに直接聞くことと、FPが確認すること、そして本事案に関与する専門職業家をメモっておく。

そしてメインの質問はまず、「甲土地を相場より高く買いたい理由」と「X社と価格交渉する際のアドバイス」か。

乙土地の正面道路幅員は4メートル。Aさんの甲土地は角地で正面幅員は8メートルだから、甲土地を買って一体化すると、容積率と建蔽率が上がるわけね。楽勝、楽勝。

あとは、価格交渉の際のアドバイスか。自宅の取り壊し費用は当然込みだろうけど、あとは、何だろう。ちょっと思いつかないなあ・・・

とりあえず、次の質問へ行かないと。「丙土地には新たに建物を建築できるか?」か。

丙土地は、路地状敷地だな。接道部分が2メートル以上ないと建物は建てられないけど。あれ、でも、これ長さが書いてないぞ・・・ なんでだ?
(実は、この丙土地部分は下に拡大図があって、接道部分は1.8メートルと書いてあるのだが、この時はこれを完全に見落としていた)

時間がない、時間がない。最後の質問に行かないと。「等価交換方式の概要とメリット・デメリット」か。

よしよし、これをメモって、と。課税関係は立体買換えの特例適用ね。

ここで時間切れ。15分はあっという間。

まあ、正解が見えない部分もあるけど、メインの高く買いたい理由と等価交換方式はまとめたから、あとはやり取りの中で助け船に期待しておけば大丈夫だろう。

それなりの自信を胸に秘め、いざ、面接室へ。

大パニックの瞬間が待ち受けているとも知らずに・・・

12分間の面接の模様

案内係に誘導され、設例の紙・電卓・筆記具を持って、ドアを3回ノック。

木製のドアが分厚くて固いせいで、ノックの音が響かない。

構わず「失礼します」と言って入室。

ああ、面接受ける側にも机があるんだと、今さら知る。机の上にはアルコール消毒液。

【私】
ラスパーと申します。宜しくお願い致します。

【面接官】
はい、手を消毒して、おかけ下さい。

(質問担当の方は女性でソフトな印象。お隣の書記担当の方は男性で厳しそうな雰囲気。目を伏せている。)

【面接官】
それではまず、Aさんから直接聞いて確認する情報を教えて下さい。

【私】
はい。甲土地・丙土地について取得時の書類や測量図があるかどうか。X社の提案について長男Cさんに相談しているかどうか。
マンションに住むことは考えているかどうか。相続はどのように考えているか等です。

【面接官】
他にAさんに関して確認しておくことはありませんか?

【私】
Aさんの今後のライフプランでしょうか。どれくらい賃料収入が欲しいか等も・・・

【面接官】
X社についてはどうでしょう?

【私】
(矢継ぎ早に質問来るなあ。)
えー、X社の会社の状況でしょうか。

【面接官】
会社の状況とは?

【私】
経営状況ですとか・・・

【面接官】
はい。あとは、取引実績とかですね。

それでは、FP自身が確認することを挙げて下さい。

【私】
対象不動産の現況、権利関係、法令等制限の確認と・・・

【面接官】
それらはどこで確認しますか?

【私】
(えーっ、また質問か。定番フレーズでスラスラ言える所なのに、リズムが乱れるなあ)
法務局と、市役所の都市計画課や建築指導課です。

【面接官】
続けて下さい。

【私】
X社の提案内容の詳細の確認、近隣の類似不動産の取引価格等の確認、適用できる税制特例・措置等の確認です。

【面接官】
はい。

それでは、X社が甲土地を相場よりも高く買いたい理由を教えて下さい。

【私】
はい、まず、乙土地単独よりも、甲土地を一体化することで、容積率が上がります。

また甲土地が角地だとすると建蔽率も上がり、2つの道路に接続することで利便性も高まります。

【面接官】
容積率について詳しく説明して下さい。

【私】
(えーっ、そこ深入りしてくるんだ。数字メモっておけば良かったな)
えーっ、まず乙土地ですが正面道路の幅員が4メートルですので、(10分の4かけると1.6だから)容積率は160%ですが、甲土地と一体化すると、幅員が8メートルですから、(10分の4かけると3.2だから)指定容積率の300%となります。

【面接官】
それでは、X社との価格交渉について、どのようなアドバイスをしますか?

【私】
(さて、どうするかなあ・・・ここは、困った時の最終手段、逃げの答えで行ってみるか)
価格交渉の材料として、少々費用はかかりますが、不動産鑑定士の先生に鑑定評価を依頼されたらどうかと思います。

【面接官】
(逃げたなと思われたのか、案外それが正解なのか、笑みを浮かべながら)
はい、わかりました。

それでは、丙土地ですが、新たに建物を建築することはできますか?

【私】
丙土地は路地状敷地で、接道している部分が2メートルあるかどうかですが。

この図には長さが明示されておらず・・・

【面接官】
えっ? どの部分の長さですか?

【私】
道路に接している部分です。丁土地の横の部分の・・・

【面接官】
えっ? 

【私】
(だって書いてないんだもん。どうする、どうする・・・)
うーん。・・・(数十秒の沈黙)

【面接官】
どうしました? 建築できるんですか?

【私】
・・・
(完全に頭が真っ白。ずっと凝視していた概要図から、ふと目を離し下にやると。何とそこには・・・)

あっ、下に拡大図が! 接道の長さは・・・1.8メートルでした!

だから、建築できません。

【面接官】
そうですね。

それでは、どうすれば建築できるでしょうか?

【私】
(ショックから立ち直れないまま)
どうすれば・・・?

えーっと、丁土地の一部と交換ですか?

【面接官】
交換?

【私】
あ、いや、位置指定道路にして・・・

(と、口から出まかせの無関係ワードを連発)

【面接官】
えっ? 

【私】
うーん。丁土地を購入するか、借りるかですか?

【面接官】
足りないのは20センチだけなので、この場合は丁土地の所有者Dさんとの関係性の問題ということになりますね。

それでは次に、等価交換方式の概要とメリット・デメリットについて説明して下さい。

【私】
(よし。これはメモった通りに)
土地を提供して、そこにデベロッパーが建物を建て、出資割合に応じて土地と建物を取得できるものです。

メリットとしては、自己資金なしで区分所有建物等を得ることができ、自己の居住用あるいは賃貸物件として活用できる点。

デメリットとしては、土地を手放す必要があることと、取得した建物は譲渡した土地の取得費を引き継ぐことから、減価償却費が小さくなり、不動産所得の税負担が多くなってしまう点等です。

【面接官】
税制面はどうでしょうか?

【私】
立体買換えの特例が適用されます。

【面接官】
立体買換えの特例を説明して下さい。

【私】
(また、説明か)
個人が土地等を譲渡して、代わりに取得した資産を居住用や事業用に供した場合に適用されます。

譲渡所得が100%課税繰延されます。

【面接官】
はい、そうですね。

それでは、専門職業家を依頼する業務と共に挙げて下さい。

【私】
確定測量図の作成等で土地家屋調査士、所有権移転登記等で司法書士、価格評価等で不動産鑑定士、売買の媒介で宅地建物取引士、税務申告等で税理士です。

【面接官】
FPが行ってはならない業務について例を挙げて下さい。

(ここでタイムアップ)

【私】
例えば税理士業務なら、税理士法に規定されている税務代理、税務書類の作成、税務相談は行うことができません。

【面接官】
はい、ありがとうございました。

面接後の感想

私はこの PartⅡ からの面接だったのですが、設例を読んでいる時から、完全に雰囲気にのまれ、かなりの緊張状態にありました。

その結果、設例中に示された拡大図に目が行かず、面接中もそれに気づかないという大失態を演じてしまいました。

依頼者に係る基本的な情報を見落とすという、FPとしてあってはならないミスであり、仮に他が答えられても、このことだけで不合格になっても文句は言えないなあと思っていました。

幸い、次のPart1 の面接では開き直ったせいで、心を落ち着かせることができました。設例自体は過去の傾向から外れた難問だったのですが、たまたま知っていた知識を動員して、何とか切り抜けることができました。

結局、得点は139点だったので、PartⅡの失敗はそれほど影響しなかったのかもしれません。

でも、焦って、体が硬直して、言葉が出てこなくなったあの数十秒の体験は、今後も夢に出てきそうで怖いです。

設例では、等価交換方式や立体買換えの特例など、その内容について説明を求められることが多かったのが印象的です。

重要な特例・制度の内容や要件などは、簡潔な説明文にまとめて覚えておくと良いと思いました。

なによりも「答えられる確証があるもの」をたくさん持っていると、面接に際して心の余裕を保つことができるのではないかと思います。

ところで、受検後に気づいたのですが、このPartⅡで問われた「等価交換方式の概要とメリット・デメリット」と「立体買換えの特例」ですが、ちょうど1ヵ月前の2022年1月23日に実施されたFP1級学科応用の不動産分野の空所補充問題で、なんと、そのまま出題されています! 

試験問題:2022年1月試験

《問62》の〈等価交換方式による有効活用〉のところで、FPの口調で、「マンションを建築する方法として、自己資金を使わず、マンション住戸を取得できる等価交換方式という手法があります・・・」と、すべて説明してくれてます。

設例自体も、土地の一体化を問う趣旨が何となく似ているように思います。

直前に行われた学科応用の不動産分野の問題は、チェックしておいたほうがいいかもしれませんね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?