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怪文書展『その怪文書を読みましたか』についての考察~補足とメタ視点からの検証~

◆はじめに

当記事は以前に書いた考察記事にて不足していた情報の追記及びメタ視点の考察・検証と個人的な感想のようなものを書き連ねております。『その怪文書を読みましたか』の本編の概要、考察につきましては【怪文書展『その怪文書を読みましたか』についての考察】をご覧くださいますようお願い致します。


◆情報補填とその考察

前記事では本筋には直接関わらない、または助長になるために省いたものに加えて新たに得た情報を追記します。

・冷蔵庫の付箋

会場の奥に設置されていたスタッフ用のものでしょうか。業務用冷蔵庫が設置されていたのですがこちらに意味ありげな付箋が貼ってあったそうです。完全に見落としていました。
写真をアップしてくれているアカウントがいくつかありましたので埋め込みにて引用させていただきます。
※問題がありましたらお申し付けください。対応いたします。


・妖精ともの会と集団ストーカー

怪文書の中でも比較的ポピュラーな類型(※個人的な分類です)に「監視型」「集団ストーカー型」があります。会場の展示物にもいくつかその型が散見されました。

監視型
集団ストーカー型

これら単体では特別意味をなすものでないため、何となく読み流してしまいそうですが会場には紙媒体の他にも動画による展示があり、実はこちらと繋がっているというニクイ仕掛けが用意されています。動画内容としましては
①winnyで共有されたmov
②Youtubeにアップされた説明会の動画
③出処不明のビデオレター
の3つを繰り返し流すというものでした。

動画の撮影を失念したため文章上での説明となりますが、注目すべきは2番目の「Youtubeにアップされた説明会の動画」です。指定の場所にただ立っているだけのバイトを募集するという内容で「特定の人物に気付かれたら終了」という非常に気になる条件も提示されています。
指定された場所に立ち、特定の人物に気付かれたら終了。これはつまるところ、監視・ストーキングのバイト募集動画であり、投稿者は妖精ともの会に関わる人物の可能性が高いと言えるでしょう。展示された監視型、集団ストーカー型の怪文書は妖精ともの会の被害報告であったというわけですね。

これらの嫌がらせを行う理由ですが、妖精ともの会関係者が制作したであろう以下の貼り紙によると「怪文書とは妖精さんの声を受信できる人間によって制作されており高精度に代弁しているものの完璧に翻訳されてはいない」そうです。つまり素質はあるけれどまだ未熟という事ですね。ではどうすれば完璧な翻訳ができるようになるのでしょうか?

下記の画像から怪文書制作者が監視やストーキングによって疲弊し、やがて“声”を聞くようになる過程が見て取れます。この3枚以外にもう1枚同一人物が書いたと思われる貼り紙があるのですが、こちらはシェア禁止マークがついていたので画像を載せる事はできませんが、精神的に相当参っている様子で聞こえてくる声や電話に悩まされているという内容になっています。

この頃はまだ元気に怪カツに勤しんでいる
監視とストーキングが始まる
選定完了

恐らく怪文書制作者をより完全な翻訳者へと成長を促すためのに行われるのが監視やストーキングといった行為なのではないでしょうか。精神的に疲弊させる事で幻聴という名の妖精さんの声を聞く段階に至り、これをもって成熟したと判断すると考えれば辻褄が合います。


・tokyotokyo530

アリシムジャバについて語るスレのレス番号6に「tokyotokyo530」というハンドルネームの書き込みがあります。続く7番から「また来たぞ粘着野郎 以降スルーで。」と言われている事からあまり良い印象は持たれていない常連のようです。

全て平仮名で書き込まれているところに何か感じ取れるものがある

実はこのtokyotokyo530が制作者と思われる怪文書が展示されています。
下記画像の赤枠で囲んだ部分にご注目ください。

tyokotyoko530

スレッド上のハンドルネームはtokyotokyo530(ときょときょ530)なのに対して怪文書上のIDはtyokotyoko530(ちょこちょこ530)なので微妙に異なりますが恐らくアナグラムでしょう。同一人物の可能性が高そうです。
こういう細かいネタが色々仕込まれているようで後で気付く事が結構あります。


・電話の声

上記画像では下部が破れて電話番号が分からなくなっていますが、シェア禁止ゾーンに番号が分かる状態の怪文書が展示されていましたのでかけてみました。内容を大まかに説明しますと見事妖精さんに選ばれ、特別に妖精さんの声を聞かせる旨を伝えられます。電子音のようなノイズが数回混じった後「あ~ぁ」と男の声がして電話が切れます。

こちらは関係があるか微妙なところですが、上記画像の切り抜きによれば怪文書に書かれた人物を発見し話しかけたところ「あー」とだけ言い残し去って行ってしまったそうです。電話の男と同一人物でしょうか?詳細は不明です。


・かれらのこえを受け入れてください

こちらはTwitter上で指摘されている方がいらっしゃいました。妖精ともの会のホームページのソースコード上に「かれらのこえを受け入れてください」「わたしたちのこえを受け入れてください」という文言が仕込まれているというものです。
これは気付きませんでした。非常に面白いネタです。

◆メタ視点からの検証

ここから先は正直、書こうか書くまいかだいぶ悩みました。というのも恐らく運営が想定していない、というよりも快く思わない可能性が大いにある揚げ足取りような検証を行っているからです。
ここまで読んでくださった方や実際に参加した方ならお判りでしょうが、『その怪文書を読みましたか』は怪文書をテーマにしたエンターテイメント企画であり展示やそれに関わるサイトは全てフィクションとなっています。考えてみれば当然なのですが怪文書の性質上、肖像権を始め、ここでは書きづらいセンシティブな問題を多数抱えているため、そもそも本物を使った展示は成立しないでしょう。こういった推測はイベントが提供する楽しみを損なうものですし、この先はさらに邪知な検証を行っていく事となります。ただ、以下に記載する検証の内容はファクトチェックとして有用だと考えており、時に怪文書のような形で流布されるフェイクニュースに対して、防衛策としての価値があるのではないか?という思いから公開するに至りました。
決して当イベントに対して批判的な意図を持つものではない事をご理解いただけますようお願い申し上げます。

・用意されたアカウント

ネットに散りばめられた情報群の足掛かりとしてまず、Twitter上でアリシムジャバについて言及するアカウントを発見した旨は以前の考察記事で書きましたが、実のところこのアカウントには不審な点がありました。

このアカウントは2022年の11月に開設されており、2023年の2月22日に懸賞系のリツイートを行ったのが初の投稿となっています。以降数回、同様の懸賞リツイートを行った後、3月20日に怪文書展へ行ってきたという投稿をしています。この時からアリシムジャバが気になる旨を呟いており、以降は体調の悪さを訴えるツイートをしています。
そして3月24日、以下のツイートを最後に投稿が途切れています。

怪文書展の開始日2023年3月17日からおよそ4か月前にこのアカウントが開設されている事になりますが、仕込み時としては丁度いいように思えます。


・アリシムジャバスレの矛盾点

次にアリシムジャバについて語るスレに関する矛盾点です。
こちらは恐らくオカルト板の過去スレッドと思われ、デフォルトネームが「洒落にならない怖い名無し」となっています。しかし2004年当時から現在に至るまでオカルト板のデフォルトネームは「本当にあった怖い名無し」であるため矛盾が生じます。また本来の5chであればテキストリンクになっているはずの部分が、ただ色を変えただけのフェイクリンクになっており、これは模倣サイトで見られる一つの特徴です。
蛇足にはなりますが、URLに含まれる「kako-thread-viewer」の文字列ですが、過去スレッドビューアというサービスに聞き覚えがないため検索をかけてみたところヒットしませんでした。似たようなサービスに過去ログビューアがありますがこちらは有料サービスで誰でもアクセスできる類のものではないため異なります。無料で過去ログを検索できる「かころぐβ」というサイトもありますが、こちらは当時のURLへアクセスするものですので「kako-thread-viewer」の文字列は含まれずこちらも別物です。
ちなみに当時のデフォルトネームやサイト構成を確認する際にこの「かころぐβ」を使用させていただきました。ありがとうございました。

以上の検証からこのオカルト板風の過去ログが創作である事が分かり、これをツイートしたアカウントも企画用に仕込まれたものと見て間違いないでしょう。

◆感想

・創作と分かったうえでも引きずり込まれる圧倒的魅力

やれ創作だ、やれフェイクだの難癖付けているように見えるでしょうがこの企画にのめり込んで心底楽しんでいる事を最後に伝えたいと思います。
当企画が創作である事は先述したように例のTwitterアカウントに出会った時から勘付いてはいました。他の方からすれば気付くのが遅いと思われるかもしれませんが如何せん心根が純粋なものでして。はい。
ただ、創作と分かったうえでも次から次へと現れる情報を辿る興奮は確かなものでした。アリシムジャバスレを紹介するアカウントをフックにして、妖精ともの会のホームページまで辿れるよう計算して導線を引いたのでしょう。他にも取っ掛かりはいくつか用意されており、どこから始まっても答えに辿り着けるようになっているのは非常に巧妙と言わざるえません。
そして創作と分かり一旦落ち着いた後「あれ?これってもしかして……」と仄かにざわつく心と同時に湧き上がる好奇心。この感覚にどこか懐かしさを覚えて思い返してみたところ、2003年から2017年まで不定期に放送されていたフジテレビ系列のホラードラマ「放送禁止」を初めて見た時の感覚と一緒である事に気付いたのです。

【放送禁止(フジテレビ系列のテレビ番組)
「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定の、一見ドキュメンタリー番組だが実はフィクションというフェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)である。当然ながら架空の設定であり、本当に放送禁止になった映像や出来事を使用しているわけではない。

「事実を積み重ねることが必ずしも真実に結びつくとは限らない」をテーマにしており、実在のデータや出来事・人物のコメントを重ねていくことでリアリティーを高めている。しかし、一見普通の「ドキュメンタリー番組」は不審な点や違和感を持たせる展開を経て、最後に恐るべき「真実」が提示される。また、最初からフィクションと理解している視聴者は映像に隠された細かい伏線を「解明」していくことによって楽しむことができる。

もちろん本物のドキュメンタリーではなく「作り物のドラマ」であるため、最後に「この番組はフィクションです」というテロップが表示される(第5回・第6回の放送では冒頭にもテロップを表示している)が、本当のドキュメンタリーと誤解した視聴者からの抗議・苦情も少なからず発生していた。

Wikipediaより引用

ふと始まったドキュメンタリー風のドラマに何か違和感と不穏さを感じながら、深夜という時間も相まって独特の空気感の中展開していくあの感覚。最後にフィクションと明かされ「なんだ、やっぱりそうだったのか」と少しがっかりしながらも「でも結局アレって何だったんだろう?」というモヤモヤに寝付けなくなり2chの実況板にアクセスしたあの夜の事。
あの時の感覚と同じものが僕の中に生まれ、蠢いているのを感じました。最高の体験です。

そして何より秀逸だと感じたのは、物語の理解が本格的に進むのは会場での体験ではなくインターネット上の情報を得てからというギミックです。現場のみの体験であれば会場を出た時点でその体験は終了し途切れてしまいます。しかしネット上にメインの情報を散りばめる事で、参加者は非日常である会場を出た後も各々の端末からアクセスして日常の中で体験を継続する事ができるのです。
下記の動画内で企画者の「梨」氏はこのように述べています。

「私達の生活の隣にこういった怪文書の世界というのは確実に存在している。」

・僕は今正気なのだろうか?

それとは別に、少しヒヤリとする感覚がありました。
情報を辿り、点と点が線で繋がる瞬間は非常に快感を覚えるものであり、自分の手によって得られた気付きのように感じる瞬間が多々ありました。あらゆる情報に何かメッセージが隠されているのではないかとつぶさに観察する自分をふと客観的に見た時「これって怪文書を作る側の心理状態では?」という思いが過ったのです。
一見すると関係のない情報にメッセージを見出し、隠された意図を読み取ったと喧伝する様はそれそのものではないか、と。怪文書を作っている人達は読み取った“真実”に疑いを持ちません。本人は自分が異常だとは思っていないし至極冷静に物事を分析してメッセージを汲み取ったと考えているでしょう。それは僕も同じです。他者の反応や比較によって客観性を保っているつもりではいますが、他者への認識自体が歪んでいたとしたら何をもって正常性を担保すればいいのでしょうか。
もし参加者がこういった疑念に駆られる事まで計算していたのなら、恐ろしく緻密に作りこまれた企画であり、唯一無二とも言えるのではないでしょうか。
未だに少し不安になります。


最後までお読みいただきありがとうございました。


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