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ZOOM対談第3回目はディー・エム・シー株式会社 代表取締役 小山田光晴さん

2011年に、DMC日本支社の社長に就任して、ちょうど10年が経つという小山田光晴さん。フランスはもとより、欧米、そしてアジアで手芸糸における世界最大のプラットフォームになるという本国DMCの戦略のもと、刺しゅうの持つ魅力をさまざまに語っていただいたYouTubeでのZOOM対談でした。刺しゅうはオートクチュールの最後の仕上げ。おしゃれの極みとしてとらえられ、それは和服に施す刺しゅうと立ち位置は同じことだというお話など、今まで気づかなかった発見が随所にあった、とても興味深い内容でした。詳しくは、ぜひこちらをご覧ください。

刺繍人気を支えるさまざまなキーワード

昨年のコロナ禍がもたらした環境の変化で、ハンドメイド業界が追い風になっているという話はあちこちから聞きますが、刺しゅう人気は実はそれ以前からひたひたと押し寄せていたのだとか。「キャラクターを刺しゅうする提案をしたのがヒットにつながったり、クロスステッチなどの簡単な技法で刺しゅうが手軽に楽しめることがわかったり。刺しゅうの分冊本が発売されたり。いくつかの要因が重なって、多くの方が刺しゅうに興味を持つようになっていったと考えられます」と小山田さん。「中でもすい星のごとく現れた新しい作家さんの存在は特質すべきことでしょう。樋口愉美子さんという作家さんがいらっしゃいますが、簡単な手法を使っているのに、今までにない完成度の高い作品にひきつけられていった方が、SNS等を使って情報を広めていったのも大きな要因になりました」

ここでもハンドメイドの一つである刺しゅうと、インスタグラムなどのSNSに親和性があり、情報発信のツールとして活用されていることがよくわかります。小山田さんと話していると、この事象と、別なところで起こっている事象をつなげて考え、そこに何らかの共通項を見出して言葉にして伝えるのがとても上手な方だということがよくわかります。ハンドメイドの中でも、なぜ刺しゅうが大きく取り上げられるのか、大きな網を広げるような問いにも、数秒のうちに明快な答えを言葉にしてくれます。DMCが生み出す刺しゅう糸の素晴らしさについても熱く語る言葉の強さ。「歴史、品質ともにDMCの糸は世界一」だと誇らしげに語ります。お話をきいているとその内容にどんどん引き込まれていき、動画での対談もあっという間に終わってしまった感がありました。

「動きながら考える」を日々実践し、次の一手を探る

企業のトップとして、大所高所から物事を見て判断する役目を担っているのが社長と言われる人々ですが、小山田さんはとにかく現場の動き等で気になることがあると、居ても立っても居られなくなるというタイプのよう。自社の素材を使ってのデモンストレーションなども自ら出演して、DMCが作り出す刺しゅう糸や編み糸の魅力をさまざまな場所で発信しています。今の刺しゅう人気を支える樋口愉美子先生のことも、動画で詳しくお話しいただきましたが、刺しゅうと”ダーニング”と呼ばれる今ひそかにブームになっているハンドメイドのことも、お聞きしてみたのです。

「ダーニングはイギリスが発祥で、衣類を繕いながら大切に長く着るという思いが現れた手仕事ですが、なんでも使い捨てにするという考えとは対極にありますよね。環境問題も含めて、物を大切に扱いたいという若い人たちがとても増えていると思われますね」穴が開いたりほつれたりしたところを、針と糸で丁寧に、しかも可愛く繕うこと。これも古くからあるけれど、新しい刺しゅう文化だといえそうです。

間近に迫った日本ホビーショーのことを聞くと、「リアルとオンライン。両方で発信するホビーショーのこれからの可能性は、計り知れないものがあるはずです。今までだったら沖縄に住んでいるから、会場には行けないという人を、オンラインを使ってその場に居合わせているかのような体験をしてもらうことだってできるんですよ。旅費の問題や時間の問題を一足飛びに飛び越えてしまう。パソコンがなくても携帯にアプリを入れれば、ワークショップだって参加できてしまう。それもオンラインならば50人、ものによっては100人だって参加が可能になる。これは、すごいことですよね」と小山田さんは目を輝かせます。

最後に小山田さんの、プライベートで楽しんでいる趣味を伺ってみたところ「僕、実は釣りなんですよ」と即答が。「鮭を釣ることに夢中なんです。川でイクラから稚魚になった鮭が、川から出て海を回遊して、最後はまた川に戻って一生を終える。海から戻った鮭が河口にたむろして、しばらく体をなじませるんですが、だいたい満月の夜に遡上するんです。体を慣らしているところを釣るんですが、場所も限られているし非常に難しい釣りで、80人くらい参加していても釣れたのは5人だけというのもざらなんですよ。このことを話し出したら止まらなくなる。釣りも実は、針と糸を使うんですよ」針と糸で釣りねー。刺しゅうと同じというわけですか?小山田さん! 

コロナが落ち着いたら今度はワインでも飲みながら、釣りとDMCの刺繍糸との相関関係をじっくり聞かせていただく約束、忘れないでくださいね!



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