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2020 キルトフェスタ XVが次につなげるものとは?

本来ならば東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会が開催の年に行われる予定だった”キルトフェスタ2020”。主催の鷲沢玲子先生はじめ、多くの生徒さんや関係する皆さまが、2年に一度のこの展示会開催に向けて怠りなく準備を進めてきただけに、予想もしなかった新型コロナウイルスの出現。「開催順延もやむなし」と判断するまでおおいに胸を痛め、悩んだ末の2021年6月14日から19日までの開催となりました。

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日本ヴォーグ社が所有する、中野クラフティングアートギャラリーでの開催は、2018年に続いて2度目。それまでは新宿パークタワーホールを会場に、9回に渡って実施してきましたが「キルトはあたたかいものだから、パークタワーホールのメタリックな感じよりも、こちらの会場の雰囲気がより近いように思います」と鷲沢先生。以前は新宿駅に近く、誘い合わせてキルトフェスタを鑑賞したあとは、食事やおしゃべりを楽しむのが皆さんの恒例でしたが、このコロナ禍の状況ではそうもいきません。「会場が変われば、また違う楽しみ方があるのでは?」と都会の喧騒からひとしきり離れた場所に、視点を変えた愛着を抱かれているふうに思えます。

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今年1月に開催されるはずだった東京ドームでの”国際キルトフェスティバル”も中止になってしまいましたが、この最大のキルトイベントでも鷲沢先生は中心的な存在。2019年には「モネが愛したジヴェルニーの庭」を。2020年には「キルトが奏でるミュージック・ブレーメンの音楽隊」をテーマに、ストーリー性のある印象的な展示作品で、多くのファンの目を虜にし続けてきました。

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世界中がコロナ禍の真っただ中にいる状態で、あらゆるものが大きな打撃を受け、今なお抜け道が見いだせない中、ハンドメイドがもたらす役割は何なのか、私たちはずっと考えていたように思えます。そして”東京2020オリンピック”が終わり、パラリンピックの開催となった今、イベントを開催したことの意味とそれがもたらす影響を、さまざまな立ち位置から考えていくべき時なのでしょう。
大小規模の大きさは問題ではなく、展示会等のイベント開催には大きなリスクが伴うことを思い知らされた昨今、取りやめるのか思い切って開催するのかの判断は、私たちにとって新しい試練となりました。鷲沢先生にお話をうかがっている間中、お客さまはひっきりなしに訪れます。が、密になることはありません。それぞれがどうしたら相手のことを思いながら、自分自身も感染対策をとるかという術を、多くの人が新しい習慣として身につけ始めているからでしょう。

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目についたのは、一人で会場入りして、静かにゆっくりと作品一つ一つに目を合わせている方の姿。お仲間と連れ立っての楽しいおしゃべりは無理でも、丹精込めて作られた作品に直に向き合う時間のかけがえのなさを、かみしめているようにも思えます。

作り手にとっては、教室やお仲間と共に手を動かす時間は減っても、作品を生み出すために費やす時間はむしろ増え、心穏やかでいる方法の一つとしても、ハンドメイドは注目されていることを実感しています。『2020キルトフェスタXV』作品集の冒頭に記されている鷲沢先生のメッセージ。「日々の暮らしのなかで、大好きな針仕事を穏やかな気持ちで続けてこられたキルトのある生活は、シンプルな人生に豊かな色を挿してくれました」

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今回の作品展が、生徒さんやお仲間に次に進む道しるべとなることを確信したからこそ、実施に踏み切った鷲沢先生の英断に拍手を送りたい──。そんな思いを強くした時間でした。


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