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性的衝動染みた音楽のすゝめ

 私にはもうすぐ2歳になる甥っ子がいる。そんな甥っ子の成長時期によって薦めたい曲がそれぞれある。今回甥っ子の成長段階に分けてその曲を紹介しようと思う。
 
甥っ子 13歳 ~性の目覚め~
 さすがに中学生にもなると音楽も齧るだろうし、射精もできるようになるやろう。そんな時期にこそ薦めておきたい曲がある。
 
『VIVA! アジア丸出し』 
作詞作曲 石野卓球
唄 電気グルーヴ

 この歌詞は「丸出し むき出し アジアだし それが好きさ 好きさ 好きさ 好き ハー ビバ ノン ノン」だけである。今私はJASRACに訴訟されないかむちゃくちゃ怯えている。
 この曲が収録されているのは『オレンジ』という電気グルーヴのアルバムであるが、この曲の次に来るトラック『なんとも言えないわびしい気持ちになったことはあるかい?』もぜひとも合わせて甥っ子に聴いてほしい曲である。

 この曲のイントロ、完全に洋モノのAVである。そして「エビバディ セイ アジア丸出し~♪」と茶々を入れてくるのはあのカルアミルクおじさん・岡村靖幸である。こんな耳で摂取するシャブを中坊のころ聴いちまったらどんな大人になるのか大変興味深い。ていうか中学生の時点で電気グルーヴ聴いてるやつがどれくらいアレな人間になるのかみてみたい。多分オードリーの春日俊彰は電気グルーヴが好きだと公言しているみたいだけど、電気グルーヴを聴き続けているからということには結びつかないにしろ、アイドルの楽屋の水を持って帰ってその中に飴を入れて飲むみたいなその精神構造はまじでヤバい。

 この頃の甥っ子には「人間は時として迸り、その後には賢者タイムが存在する」そんな神秘的な世の理を体得してほしい。私は洋モノのAVは(喘ぎ声で萎えるので)見ない。が、甥っ子の父はロシア人女性に玉砕した過去があるので、息子の彼も果敢に国際的な文化交流(意味深)に挑戦していただきたい。
 
甥っ子 20歳 ~穢れ行く純潔~
 さすがに大学生にもなると、音楽を知ってるかのような顔をするだろうし、女ともパンパンやっちまうだろう。そんな時期にこそ薦めておきたい曲がある。
 
『踊る脳』
作詞作曲 桃野陽介
唄 monobright
 
 この頃がどんな音楽シーンになっているかわからないけど、まあ「えっモノブライトって何?」みたいなことになるだろう。或いは「モノブライトなんか何ですすめんの?」みたいなことになるだろう。でもいいからまず聴け! と言いたいが彼の時代には草食系男子は絶滅してるのだろうか。わたしは大学生の男子はみんなこんな精神構造なんじゃないかと思っている。
 
 どんな曲か、歌詞をみてみよう。まず朝からメロンソーダを飲むこの勢い! 躁である。軽躁状態である。(甥っ子も私と似て感性に波があるのではないかと思う)そんな感じで歌詞の彼は目の前にいる君と抱き合ったりしちゃう様な未来図に苦労する。でもそれを実行する勇気はない。彼は男だからって強くケダモノのようじゃない、という言い訳をする。ここでラーラララララララーとボーカルが歌う。
 しかし君と手が触れ合っただけでテンションがおっ起っちゃってる彼の脳は、何を考えるわけでもなくまさに興奮状態。彼自身別に君に対して下心はない。でもそれは君には残念ながら伝わらず、この純粋がゆえの思いを重く受け取られてしまう。

 ここでまたもラーラララララララーと歌うボーカル。コーラスのハイハイハイハイ! が聴き手の我々の鼓動を鼓舞する。さらには、アツいアツいギターリフの暴力音! こんなに、ここまでして、高まっちゃっていいのだろうか。テンションがこんなに高くなっちゃったら、どうなるのだろうか。

 ここで桃野は言う「僕の心はどこへ行った 恋はすでに落っこちていった 僕の心はどこへ行った あの迫力はどこへ置いてった」
おっと? どうしたどうしたと思う我々を置いて彼は鬱もとい賢者タイムに入ってしまう。ジュースのメロンサイダーをあんなにハイテンションの源だった君が飲み干してももうダメ。それもそのはず薄情は時間と一緒にやってくるという事情がある。言ったでしょ、君との責任をとる勇気はありません、だってそれ僕には必要ないし、男だからって強くケダモノの様じゃないんだから。
 
こんな薄情を糞と思うか尤もなことだと思うか、それは自由だけど甥っ子がそう思うなら肯定してやりたいものである。この曲にもあるように普遍的なものだって。間違っても俺だけが糞だっていう結論には至らないでほしい。
 
甥っ子 28歳 ~廃れ行く人生~
 さすがにこの年にもなると、あらゆるものの道理がわかっとるやろう。一般的に私よりはうまくいっていると良いくらいの人生がそこにあれば私は褒める。恋愛至上主義は糞だが、それでも甥っ子にとって一生添い遂げたいなにかがあればいい。つまり射精して着床する先があれば尚よい。お前の遺伝子は遺す価値があるのだ。そんな時にお薦めしたい曲がこれだ。
 
『なんとなく夢を(extended remix)』
作詞 坂本慎太郎
作曲唄 ゆらゆら帝国
 皆さんが身に染みるゆらゆら帝国です。私は甥っ子にゆらゆら帝国を聴くと落ち着くみたいな精神構造になっててほしいと思うし、なると思う。それはつまり、あんまりうまくいってない人たちの典型だと私は思う。うまくいってなくても、私の想定内なのである。
 
 ここで歌詞をみてみよう。私のウォークマンにはリミックス版しかないが、アルバムバージョンの歌詞は『美しい』に収録されているプレーン版のものより長い。
 楽しみもなく。悲しみもなく。なんとなく夢を求めている。それは砂漠に花を、トンネルに風を、求めてしまうようになんとなく夢を探している。このような一般論を提示するあたりは共通である。
 プレーン版及びリミックス版は「となりで 笑う なんとな く楽しい となり で笑う 楽し みなもなく 悲し みもなく なんとな く夢を」と続き、最後は「夢 を 夢 を 夢 を 夢 を」で締めくくられる。

 だがアルバムではとある二人が説明されることで歌詞が続く。
二人はここで生まれ、ここで大人になる。夜がまたおとずれたのですぐ明日になる。二人の間柄というのは、となりで笑うとなんとなく楽しく、となりで笑う好きな人は楽しみもなく悲しみもなくなんとなく夢を探している。二人はここで生まれ、ここで大人になる。夜がまたおとずれたので、二人は重なり合う。二人はここで生まれて、ここで大人になる。夜がまたおとずれて、すぐ明日になる。

急に説明が下手糞になったが、歌詞がこう書いている以上、こうとしか言えないし私にはわかりようがないのである。
そして、終盤には「楽し みもなく 悲し みもなく なんとな く夢を 求めている だけど 二人は すでに出会った 何もない 砂漠に立った 二人は すでに出会った 探している 夢 を 夢 を 夢 を 夢 を 夢 を 夢 を 夢 を 夢 を」と言って閉じる。ここにいる二人にとって、なんとなく抱いた夢は二人が出会ったことで叶ったことがわかる。
甥っ子にとってそのような相手が恋愛沙汰で判明するとも限らないし、複数存在する場合も考えられなくもない。将来同性同士の妊娠も望めるかもしれない。とにかく甥っ子には、リミックス版の『なんとなく夢を』のリズムが如く躍動する君の精子を後世に残していこうではないか。
 
私の戯言は以上である。甥っ子よ、ごきげんようまた会おう。