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【日本のコクサイテキ評価】

日本で障害者の暮らしがどの程度、建設的に支えられているかという視点のお話。
少し難しいですが、興味深い話なので分かりやすくまとめていきますね。

先日、国際的にこんな「評価」が行われたそうなのです。


記事概要

●日本に対する、障害者権利条約の審査が行われた。

●結果が錚々たるものだった。
アゴラ


「障害者権利条約」とは

世界で定めた「条約」の一つで、その名の通り「障害者」の「権利」を唱えた条約です。
昔から、障害を持っている人の生活のしづらさは折り紙つき。
それを見直すために世界的に動いた結果、このような条約が誕生したんですね。

世界で条約が誕生したのが、2008年。

ただ、世界的に条約が生まれたからと言って、すぐに各国に適用される訳ではありません。
各国の意向によって「その条約をウチも守るよ!」と、宣言することで、初めてその国での条約の存在が認められます。
その宣言を、「批准」と言います。

日本で批准したのが、2014年。
世界に遅れること、6年でした。


障害者権利条約の審査

ワタシも、これは知らなかったのですが、条約を「批准」すると、「ちゃんと批准したなりの行動はとっているかな?」と、国連から定期的に審査されるのですって。ということで…

2022.8月 審査が行われました。

その結果、目も当てられぬ指摘が満載だった…というのが、冒頭の記事のお話なのです。


障害者権利条約の審査結果の概要

●障害者に対する法整備を進めた点はがんばったね!

●でも、改善したいことはその10倍!

●まずは、障害に関する用語の訳し方が不適切だね

●日本は「障害を治そう」という概念が強すぎるよね

●その概念を修正すべきなんだ


用語の訳し方

世界的な条約や、医学・心理学等の基礎は全て英語です。
海外で誕生し、海外で定義づけされているからですね。

例えば、統合失調症もschizophrenia(シゾフレニア)という原語があり、それを日本語で使いやすいように訳した言葉です。
その昔、精神分裂病と訳してしまっていた時代がある通り、時代背景や訳す際の日本人の価値観が、和訳の背景となります。

言語って、文化的な背景や民族の価値観などの上に成り立つので、英語にしかない表現、日本語にしかないがそれがあります。
例えば、英語はwaterだけなのが、日本語では水・お湯・白湯・ぬるま湯などがあります。
例えば、日本語では牛だけなのが、英語ではcow・cattle・bull・calfなどがあります。

そういう価値観の違いがあることを承知の上で、原語を的確に和訳する必要があります。
今回、それが疎かであるという指摘があったようですね。
原語で表現しようとした価値観を、日本語で正確に表現できていない=日本人に正確な意図が伝わらないという指摘です。

医学でもなんでもそうですが、その道の専門家が何名も集まって、原語の正確な意図を日本語で表すために奔走すると思います。
それが、障害の分野では不十分だったのでしょうか。


治す・治さないの概念?

日本は、何か突飛なことがあれば「正常に戻そう」と考える傾向があると思います。

例えば、発達障害。
ワタシが多くの人の相談を受けている中でも「発達障害と診断されたので医者に通って治している」という表現が多くみられます。

障害って「治す」ものではないんですよね。
大雑把に言うと、それを一つの個性として、その人自身がそれなりに社会で生きていけるように工夫するものが障害です。

専門職は「バイオ・サイコ・ソーシャル」という価値観を持っています。
ざっくり訳して「身体・心理・社会」。
身体は、病気や障害に視点を当てて、治すべきものは治す視点。
心理は、その名の通りメンタルヘルスへのアプローチ。
社会は、日本人に薄い概念の一つ、社会一団となって生活を“工夫”する視点です。

日本は身体の視点が主で、社会の視点が薄弱だよ・という指摘が入りました。
「医学モデル(バイオ)から社会モデル(ソーシャル)に切り替えなさい」という指摘をいただいたようなのです。
先の通り、障害であろうと病気であろうと、何でもかんでも「治す」=医療がトップという価値観の根強い国ということがわかっちゃいました。


つぶやき

審査というのは、得てして「要求すべきこと」を探すために行うものでしょう。
組織におなじみの監査などのように。
とはいえ、今回はギクリとすることも多い内容だったのではないかと思います。

日本は、他国の良いとこ取りをするのは得意ですが、自分たちの頭の中を変えることは苦手なのかなぁとも感じます。
審査を良い振り返りとして発展していきたいなと思うのでした。


原文はこちら

https://tbinternet.ohchr.org/_layouts/15/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CRPD%2fC%2fJPN%2fCO%2f1&Lang=en



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