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泣いた赤鬼(改)

村はずれに赤鬼が住んでおりました。
この赤鬼は心のやさしい鬼で、人間とも仲良くしたいと思っていました。
そこで小屋の横に立て札を立てました。

「心のやさしい鬼のうちです
どなたでもおいでください
おいしいお菓子がございます
お茶も沸かしてございます」

しかし人間は鬼なんかのところに来ようとはしません。
鬼なんかと遊んでいたら、自分まで同類と思われます。
心がやさしいくらいで、誰とでも仲良くなれると思ったら
大間違いです。この世界は完全会員制です。
そして誰でも会員の資格が持てるわけではないのです。

そこへ青鬼が現れます。

「私が村で暴れよう、君は私をブチのめして退治するのだ、
そうすれば君は村の英雄になり、みんな仲良くしてくれるだろう」

青鬼は棍棒を振り回し、村の家を焼き払い、女を犯し、狼藉の限りを
尽くします。そこへ赤鬼が現れて青鬼をやっつけます。

「まいったまいった」

青鬼は一目散に逃げ出しました。

赤鬼は村人が、今度こそは遊びに来てくれるだろうとお菓子とお茶を
用意して小屋で待ちますが、誰一人現れません。
村に行ってみると、村人は青鬼の話で盛り上がっています。

「めちゃくちゃな奴だけど、おもしろいよね青鬼って」
「あれこそロックンロールだね」
「私、ああいうの実はタイプ」
「え~?!どMじゃんそれ、でもわかるわかる」
「退屈だから青鬼呼ぼうよ」
「マジで~?大変だよ~ でもいいよ!」
「私、ああいうの実はタイプ」
「呼ぼう呼ぼう」

赤鬼はとぼとぼ小屋に帰りました。
そして自分でいっしょうけんめい丁寧に書いた
看板をぼーっと眺めました。

「心のやさしい鬼のうちです
どなたでもおいでください
おいしいお菓子がございます
お茶も沸かしてございます」

赤鬼はそれを読んでいるうちに、目から涙があふれ出してきて、
泣いても泣いてもどうしても涙は止まりませんでした。

おわり