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【 レビューあり 】 Oo! 『SOUTH SUPERMARKET』 東京都

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ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY)

先日 COLLECTIVE 2021 は閉幕しましたが、最終日ギリギリまで届き続けた全ての ZINE のレビューを1冊残らずお届けしていきます!

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ー 言葉のおもしろさ、地域の魅力は国境を超えて

台湾出身で東京在住の作家、Oo! (オウ)さんによる、とってもクールZINE が届いた。タイトルは『SOUTH SUPERMARKET』(サウススーパーマーケット)。興味深い! Oo! さんの地元、台湾の南に位置する高雄のスーパーマーケットに陳列されている現地ならではの食材や食品をテーマした1冊。商品に描かれた現地の言葉を、日本に住むようになってからの視点で解きほぐし、明らかにさせていくという内容。陳列された商品の写真とメモ書きのように記されたエピソード、そして普段 “作字創作活動” をしているという Oo! さんによる、オリジナルのタイポグラフィもたのしめる。

Oo! さんの地元である、台湾南部の高雄(カオシュン)という街は、南国の薫り漂う港町。現在、日本での生活が10年近くなるという、Oo! さんは、ひさしぶりに帰省した(当時2019年)故郷で、家族と向かった地元のスーパーマーケットに並ぶ、個性的なフルーツやご当地ドリンクなどに改めて心を惹かれて、自分が生まれた町の新しい魅力を発見していきたいと思い、この企画に至ったそう。

表紙のデザインは、現地の眩しい日差しを再現するためにホログラム紙が使用されており、なんともインパクトのある印象だ。南国ならではの青い空、港からの風景、風に漂うヤシの木の葉。そこにギラギラと光が反射するホログラム加工がなんともおもしろい見せ方だ。

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その時の感情や言葉の意味を特徴的な形にした、完全オリジナルの作字タイポグラフィが毎ページ披露されていく。普段から、癖の効いた『文字』に興味があったわたしは、Oo! さんの描く、ポップでグラフィカルな作字の魅力に取り憑かれていくのだ …!

『肉』 ⋯ マンモス肉のシルエットを形どっているのかな。

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『スイカ』⋯ 球状のスイカをイメージさせる曲線がおもしろい。

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いっしょに添えられた、品物にまつわるエピソードや台湾語文字の解説も興味深い。

例えば『肉』のメモ。スーパーマーケットに並ぶ生肉は日本とあまり変わらない、パッケージもしっかりされたものなのだけど、伝統的な市場に行けば、肉をそのまま切って売るといった、視覚的にも嗅覚的にもインパクトがあるものらしい。怖いもの見たさで興味もある …。『パイナップル』のメモには、台湾語で『殺鳳梨』と書くパイナップルをそのまま日本語で読み解くと、いわゆる「パイナップルを殺して捌く」という意味になる。少し怖いね。だけど、Oo! さんにとっては愛着がある言葉のままなので、可愛さも感じるそう(笑)

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非日常でめずらしいことほど、わたしたちは興味を持つ。

”スーパーマーケット” というテーマで絞られた『SOUTH SUPERMARKET』いう名の ZINE を、ガイドブックみたいな気分で読んでみるのもいいと思う。生まれ育った場所を愛し、他人を魅了させるこの ZINE は、愛に溢れていてかっこいいのだ。

レビュー:いのうえ あかね(PARK GALLERY)


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ---

価格:¥1000(税込)
ページ数:8P
サイズ: 148 × 148mm


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作家名:Oo!(東京都板橋区)

台湾・高雄生まれ育ちの南国人Oo! です。現在、インスタグラム「南国超級市場」にて台湾語・中国語・注音(台湾カタカナ)・日本語作字創作活動しています。

https://instagram.com/ss_spmk

【 街の魅力 】
賑やかではないが田舎じゃない、ギリギリなラインにあるのは板橋。
【 街のおすすめ 】
① 器々 Kiki(カフェ)... 板橋は暮らしやすいが、居酒屋が多いので「落ち着く」とは少しかけ離れます。Kiki は一人の静かな時間を楽しめるところです。



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