見出し画像

えかきもじ展によせて ② 枠内でのオリジナリティの抽出

50人のイラストレーターさんによる『もじ』を主役にした『えかきもじ展』。前回の投稿では、えかきもじ展の参加のルールを話してますので、気になる人はそちらから。

色紙サイズの自分らしさ

ある一定のルールの中で表現をするからこそ現れるイラストレーターさんたちのある種『くせ』とも言える『個性』『オリジナリティ』が今回の展示の魅力の1つです。しかも大前提として『絵』を主人公にさせないことで、その濃度があがったといえます。色紙サイズのアートボードの中で練りに練られて詰め込まれた「自分らしさ」のおかげで、50枚という数が並んでも作品のエネルギーは分散されることなく、1つ1つ見応えがある展示になったと自負しています(多くのグループ展は分散されカタログ化してしまうので)。

事前に色紙を渡した、というのはサイズを統一したかっただけで、送った色紙のサイズであれば、自分の好きな画材を使ってもらって構いません。

凧あげするか

そんな中、一番型破りなフォーマットで仕上げてくれたのが先日の大津萌乃さんの2人展が記憶に新しい unpis さん。

画像2

なんと、蛸とタコが描かれた凧(たこ)が届きました。凧作るの楽しかったですと話す unpis さんならではというか、絵を描くことや、グッズを作ることを普段から工作のように楽しんでいる感じが伝わってきます。文字描いてって言われて「凧あげするか」というところまでスイッチさせる柔軟な回路はまさに unpis ワールド。彼女の絵の独創的な世界観やしぐさにつながっていくんだなと改めて思いました。そんな unpis さんはデビューがパークでの個展だったので、その後の活躍ぶり、娘の成長を見守る父親の気持ちで楽しく見てます。今年の活動にも期待。凧もグッズとして納品される予定なので、お楽しみに。

生クリームみたいな絵の具

そして、オフィシャルの色紙でも、色紙感を感じさせないアプローチで楽しませてくれる人が今回たくさんいます。その中でも、

画像2

アクリル絵の具の特色を上手に活かしたイラストレーターでデザイナーの satsukim さんの作品。色紙とは思えないですよね。大好きな山や草花を使って『たのしい』という4文字を。日本一入手困難なチーズケーキと言われるオンラインのチーズケーキショップ『Mr.cheesecake』のアートワークを手がけるだけあって satsukim さんの作品は『絵』というより『スイーツ』みたいんだなっていつも思います。生クリームみたいに塗られた絵の具は、いつだっておいしそうで、甘いものを食べた時みたいに心がパッと明るくなります(モデリングペーストを混ぜているそう)。『えかきもじ展』の次は、satsukimさんの個展です。少しでも多くのひとに、原画をみてほしいなって、そう思います。

ペンと筆でレコーディング

色紙を使わない例として、

画像3

使い慣れた木板を画材として選んだイラストレーターのはるやまひろしくん。絵を描くことを『レコーディング』と話す彼は、いつだって大好きな『音楽』を近くに感じながら絵を描いていて、今回の作品も、大好きなロックバンド『ギャラクシー500』からのインスパイア。お気に入りの猫の絵を添えて「好き」であふれた1枚。昨年パークで開催された『青』をテーマにしたグループ『青展』あたりから使うようになった鮮やかでどこかあいまいさの残るブルーとざらっとした手触りを感じるステンシル表現は、はるやまさんの代名詞。音楽好きはチェックすべきイラストレーターの1人です。

色のセレクトと配置で残す個性

音楽が好き、といえば。

画像4

ボブ a.k.a えんちゃん。80年代のシティポップな世界観で人気を博し、様々なメディアや広告で活躍するイラストレーター。バカリズムの『架空OL日記』で知ったって人もいるかもしれませんが、音楽が好きなひとなら EMC(ENJOY MUSIC CLUB)をはじめ、チラシやレコードショップで見たっていう人も多いと思います。いまとなっては時々お仕事をお願いしたりしている関係ですが、イラストレーターというより音楽の方の文脈でずっと前から知り合いで、当時ビール片手に酔っ払ってるぼくをよく見てたのでしょう、パークのことを考えながら描いてたら、中国語で『ビール』を意味する『啤酒』の2文字が浮かんできたとのことでした。最高かよ。そして色のセレクトと配置でしっかり『えんちゃん』感が残ってますよね。

近々、待望の個展のお知らせがあるみたいなので、気になったひとはぜひチェックを。

謙虚で慎ましいけれど、鋼のように強靭

今日はもう1人。

画像5

イラストレーターというよりアーティストという印象が強かったので、声がけするのを一瞬ためらったんですが、彼女が描く文字が個人的にすごく好きで(パークで個展をした時にステートメントの代わりにメモとして貼っていた言葉と字体のバランスが美しかった)オファーさせてもらいました、カワイハルナ。最近少しずつ描き始めているという「架空の花」をモチーフに、花言葉として『もじ』が添えられています。押し花のように、まるで標本のように綴じられた花の可憐さと、「ゆるやかな生活」という花言葉が、凛とした表情を醸し出しています。謙虚で慎ましいけれど、鋼のように強靭な、彼女らしい作品です。

昨日今日で紹介した7人の作品はもうすでに売り切れてしまってるのですが、会期中は原画を見ることができますので、気になった人はぜひ、感染予防を徹底した上で、ご来場ください。

今回紹介した作家さんのインスタグラム(ぜひフォローを)

・unpis
https://www.instagram.com/wa_unpis

・satsukim 
https://www.instagram.com/satsukim12

・はるやまひろし
https://www.instagram.com/hiroshi_haruyama

・ボブ a.k.a えんちゃん
https://www.instagram.com/bobobobobob58

・カワイハルナ
https://www.instagram.com/haruna_kawai






🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️