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【 レビューあり 】 折田千秋 『Image picture @Nakaminato』 神奈川県

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ZINE REVIEW by ivy(ゲスト)

今、私が見ている世界は、実は私にしか見えていない。


もしそうだったとしても、それを確かめる方法はなくて、でもその可能性って結構あるんじゃないかと思うんだ。

目の前にスイカがあったとしよう、みんな、赤い果肉で、緑の皮で、両手いっぱいの大きな実を思い浮かべたとしてさ。でも、その「赤」って認識している色が私の目と他の誰かの目でまったく違う色を移している可能性って否定できないじゃない?人はすべて、自らの目を通して色を見る訳で。

だから、輪郭も、質感も、色も、光も、実は私たちみんなそれぞれ認識している姿は違うのかもしれない。


こんなことを幼い頃から考えたことがある。一生答えは出ないだろうけど、逆にいえば、じゃあ他の人の視界を見てみたいなぁなんて思うこともある。

さて、折田千秋さんのZINE「Image Picture」は、そんな素朴な好奇心を代弁してくれるような作品だ。

折田さんは大学で建築学・デザイン学を専攻、現在は人ともの、人と空間の距離感・認知の違いにフォーカスした表現を行っている。本作は茨城ひたちなか市で毎年開催されている芸術祭『みなとメディアミュージアム2019』に出展したアート作品をまとめた ZINEだという。

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内容は、ひたちなか海浜鉄道の車窓に浮かぶ田園の風景写真を元に、実際に鉄道利用者36名が印象に残った『色』を景色から抽出し、作り出した「Image Picture」36枚によって構成されている。同じ景色を見ているのに、抽出される色は驚くほど違う。絶妙な誤差といえる範囲のものもあれば、どう見てもそうはならないでしょ、って文字通り「目を疑う」ものまで、その振れ幅に圧倒される。

に残った『色』を景色から抽出し、作り出し「Image Picture」36枚によって構成されている。同じ景色を見ているのに、抽出される色は驚くほど違う。絶妙な誤差といえる範囲のものもあれば、どう見てもそうはならないでしょ、って文字通り「目を疑う」ものまで、その振れ幅に圧倒される。

いやあ、ある意味今年のコレクティブで一番の衝撃というか、手に取った瞬間に光が差したような、そんな ZINE。どうやっても形にできないと思っていた「他の人から見た世界」を見事に形にしていて、もしタイムマシンがあるなら、今すぐ飛び乗って幼い頃の私に見せてやりたい。

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人の頭の中には、言葉にしたくてもできない、言葉にしても理解されない、それでもずっと頭の中から離れない。そんな事柄が山ほどある。それは時として違和感であり、時としてワクワクするような好奇心であり、時として抑えきれない高揚感にもなる。


そんな感性が生み出すエネルギーが、何かしらの形で表現されたとき、人はこうも共感と興奮を覚えるんだ、ってハッとさせられた。片手の中に収まる、この夏一番刺激的な体験。


ZINE はカルチャ―として、自らの考えや感じたこと、もっと些細な伝えたいことをごく親密な相手や特定のコミュニティに届ける紙媒体、という出自がある。だから、「Image Picture」は、折田さんが感じていたことを誰の目にもわかる形で表現したという意味で、すごくプリミティブな作品だともいえる。


現に、ここで表現される認知の違いに胸の奥がスカッとした人、更に興味を惹かれた人、みんな折田さんに 会ったことがなくても、もはや他人には思えないんじゃなかろうか。


目から鱗、そんな感性の刺激と共に、一個人としての共感へと繋がる。会話をしたかのような充足感に満たされる。ZINE の面白さ、ZINE を手に取る楽しさを日ごろの創作活動の延長線上で実現した「Image Picture」。


ここまで読んでくれたあなたには、ぜひ作品を手にとって、その衝撃を味わってほしいと切に願う。

レビュー:ivy(ゲスト)


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ----

【 ZINE について 】

みなとメディアミュージアム2019 にて出展したアート作品「Image picture」の ZINE です。ひたちなか海浜鉄道の車窓から見える、黄緑の稲、茂った木々、青く広がる空。こののどかな風景がひたちなからしい風景だと感じました景色を構成する田・森・空から印象に残った色を抽出してもらい、印象の写真= 「Image picture」を制作しました。この電車を利用する人々36人に協力をお願いし、さまざまな景色の「Image picture」を集めました。この ZINE では、ひとりひとりの「Image picture」を収録しています。

価格:2000円(税込)
ページ数:カードタイプ38枚
カードサイズ:80 ×80mm
ケースサイズ:130 × 220mm *個体差あり


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作家名:折田千秋(神奈川県相模原市)

青森県生まれ。
静岡文化芸術大学、東北大学大学院工学研究科を卒業。
建築学及びデザイン学を専攻し、人ともの、人と空間などの関係性に注目。その距離感や認知の違いを表現しています。
sanwa company Art Award in The House 2021 ファイナリスト

https://www.instagram.com/ochiaki1129
https://twitter.com/ochiaki1129

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