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えかきもじ展によせて ⑮

えかきもじ展
いい企画だといろんな関係のひとたちから言ってもらえていてとてもうれしい。同業者はもちろんですが、特にデザイン関係のひとの反応が大きいみたい。コロナでなかなか人と会えない毎日に、ぬくもりのある手書き感。広告やエディトリアルでの需要が確実にあるのだと思います。

さて、文字を仕事にするイラストレーターと聞いて1番最初に思い浮かぶのが(ぼくだけじゃなく業界中が)、オルタナティブ姉妹イラストユニットの STOMACHACHE. 。ここ10年で彼女たちの文字を見ない日はないのではないかというくらい、音楽媒体から雑誌、広告へと活躍の幅をどんどん広げています。

皮肉にも STOMACHACHE. 風のイラストにも出会うようになったし、STOMACHACHE.さんみたいな文字を描けるひと知りませんか? と広告代理店に言われたりもするようになりました。ちなみにえかきもじ展には妹のトモエちゃんが参加してくれています。

知り合ったのは2009年くらい。まだ下北沢だった頃の commune で、植本一子ちゃんの紹介だった気がする。手作りの ZINE をくれて「東京に来ようと思ってる」と言っていたから、すぐに売れてしまうだろうなと思った。その時「マガジンハウスに売り込んでみるといいよ」、とアドバイスじみたことを言ったらしいけれど、ぼくの小言はむなしく、あっという間に雑誌で見ない日はない存在になった。2014年頃にパークとしてインタビューをしていて、いま読んでも面白いのでぜひ。彼女たちの日本人離れしたオルタナティブな精神が垣間見えるインタビューになっています。

今回はそんな STOMACHACHE. タイポグラフィの『まとめ』のような『もじ』の作品が届きました。STOMACHACHE. ファンと世界中の『ともえ』にはたまらない作品です。きみの恋人が「ともえ」ならいますぐこれを手に入れてプロポーズを。

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トモエちゃんにはイラストでいろいろ助けてもらっていて、いまでも印象に残ってるのは、L'Arc~en~Ciel の CD のパッケージの仕事をお願いした時のこと。彼らがツアーでまわった11カ国のあいさつやその国の象徴的なモチーフをとにかくひたすら描いてもらうという仕事でした(どんな)。『もじ』に圧倒的な個性がある、というのと、日本人ぽくなくていいね、とメンバーに言わせた卓越したセンスがあってこそ実現した仕事でした

STOMACHACHE. の文字のおかげでデザインがよくなったり、グッズが売れたりと、恩恵を受けたひとたちがたくさんいると思います。クイーン・オブ・えかきもじ、としてこの何十年も突き進んでほしいなと思います。(ちなみに TBS ラジオリスナーにはたまらない、トモエちゃんによる『えかきもじ』な作品を所有しています。見たい人は声かけしてください)。

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トモエちゃんの時みたく、このひとにイラストを描いてもらったらクライアントが喜んだ、という例でもう1人紹介させていただきます。イラストレーターの相馬涼さんです。

一番最初に彼女の絵を知ったのは、この作品。

漫画や映画でよく見かけるベタベタなワンシーンを描く『BETTERシリーズ』が悶絶するほど好きで、いつか仕事をお願いできないかなと思って勝手に思いを寄せていました(めちゃいいよね)。

これも最高。

2019年に三重県のいなべ市の里山の魅力を伝える冊子の編集を担当することになったタイミングで、ぜひ彼女の絵を起用したいと市に相談したら、快諾してくれて、相馬さんに勇気を出して相談してみたところ、なんと三重県出身。縁を感じてくれたみたいで、運良く実現しました。その仕事がこちらでした。

似顔絵と、『えかきもじ』を描いてもらったのですが、クライアントのいなべ市の方々はもちろん、冊子に登場してくれたみなさん「似てる似てる!」と笑いながら大喜びで、本当にすてきな仕事になったなと思います。ぼくの人生の成果物の中でも、特に自慢の1冊です。

相馬さんのえかきもじはコチラ。

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好きな映画『MY FRIEND AND ME』のシーンイラストと『感想=もじ』がぎっしりと詰まったキュートな1枚です。映画のレビューの仕事があったら絶対にお願いしたい。『BETTERシリーズ』もそうですが、相馬さんの絵からは「描きたい」という純粋な気持ちが伝わってくるのでいいなと思っています。意外とその純粋さを忘れてしまったのかなっていうような作家さんもたまにいて、なので、背筋がまっすぐ伸びるというか、みんな好きだと思います。相馬さんの絵を見るの。原画で見られるのは明日までなのでお急ぎを。

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今日は「もじ」を描くイラストレーターをもう1人。

パークで2度ほど、2人展というかたちで、個展に近い熱量で展示をしてくれているおざわさよこさん。小澤佐代子さん、SAYOKO OZAWA さん。イラストレーターだけではなく、ベーシスト、草木染色によるアクセサリーブランド yamawarau を手がけるなど活動の幅も広ければ、京都、岐阜、富山と、活動の拠点の変化もアクティブ。

一番最初に会った時、まだ絵のタッチというか描きたいものが不安定に見えていて、たぶん彼女の「やりたい」「クリエイティビティ」が爆発せずにマグマのように小さな体の中で沸いてる時期だったように思います。展示の最終日、表現しきれない思いや感情に対して素直で、きっと時間をかけてでもいいクリエイターになる人だろうなと確信したのをいまも昨日のことのように覚えています。

その後、富山に移り住みながらも精力的な活動は SNS からも伝わってきて、ことあるごとに声をかけさせてもらって、作品をみんなに見てもらう、触れてもらう機会を作っています。そんな彼女が、去年、コロナ禍でアップしていた絵に、思わず「おー」と声をあげました。それがこれ。


まさにえかきのもじ。

この時「最高」と2文字、コメントを残していますが、1枚の「レコード」のようだし、ていねいに描かれた手紙のようだし、自然を大切にする彼女の息づかいにも思えたし、現時点での<おざわさよこ>の魅力がすべてここに詰まったんじゃないかとさえ思ったのでした。文字がこんなに『絵』を生き生きとさせるのかと。今回『えかきもじ展』でも、このシリーズの延長のような作品が送られてきて、とてもうれしく思ったのでした。富山の雪の深さ、寒さ、自然の力強さを思うと、この作品の深みがぐっと増します。

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この作品も売り切れてしまったのですが、今回、彼女がつくる『石』の作品がものすごい勢いで売れています(追加分もなくなりそう)。

たぶん、おざわさよこという人の体に流れるプリミティブな部分と、表現欲(アート性)が、見事に合致して、ナチュラルな魅力が石に練り込まれているのだと思う。みんなもそれに気づいたのかと。文字のシリーズもきっとそうなってくると思いました。引き続き応援しています。また東京で展示をぜひ。

さて、今日ももう夕方。残すところあと1日とちょっと。さみしいな。

この週末は来れない人のための作品の取り置きや、通販での対応も行っているので、気になってる作品あれば、いつでもメッセージください。

好きな人の手に渡ればいいなと思って、すべての作品を5000円で値付けしていますので(破格!)。

よろしくお願いします。


加藤でした。




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