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issue 23 「高2、渋谷ハロウィンの思い出話。」 by ivy

「待ち合わせはモヤイ前、東急百貨店のトイレで着替えて集合!地下の食品売り場奥がおススメです」

古いグループラインのノートに残されていた青臭い文言。絵文字とか文体とか、テンションのアレコレが7年の月日を経て酸化し、悪臭を放っている。東急百貨店は、この間なくなったよね、確か。

高校2年生のとき、渋谷駅前ハロウィンに参加した仲間のグループチャットだ。一昨日、メンバーの一人(現在は音信不通)が退会した通知で思い出した。よせばいいのにアルバムも見たら、ますますかぐわしい。みんな髪はワックスで束感セットでブリーチか、校則が厳しい学校の子は「パルティー(カラーワックス)」で一層派手な色にしている。やけに鮮やかな血糊をぶちまけていて、チカチカする、目がやられそう。ひたすらに、写真がうるさい。

当時、私が通っていた高校は公立の共学。ほとんどの生徒は校内でコミュニティを形成していたけれど、全く馴染めなかった私は周辺の男子校と女子校とバンド練習や文化祭、塾を通して交流していた。放課後はスタジオか予備校へ逃げるように向かい、授業後は閉館ギリギリまでバカ話。大体集まっていたメンツは、真面目な進学校や自称進学校でちょっと浮いている、でもなんやかんや育ちがいいからヤンキーやギャルとは棲む世界が違って関わりがない、そういうタイプ。その点だけでは妙にシンパシーを感じていたし、当時はそのまま大学でもつるんでいるんだろうなって考えていた。みんなで同じことに取り組んでいるから嫌でも共通の話題があったし、話そうと思えばいくらでも雑談をできたわけだ。

ハロウィンは、その延長で、集大成。いつものメンバーで、ただ仮装して街に繰り出すだけなのに、異様な熱気を帯びているのが7年前、粗い iPhone の自撮りからでも伝わってくる。

高2のハロウィンは、文化祭やクリスマスより重要性が高い。当時の私たちにとって受験前最後のバカ騒ぎができるタイミングだったから。受験勉強や学校生活といったしがらみや抑圧からの解放を求めて当てもなく街をさまよう、その様はまるで、本物のゾンビ!

しかしまあ、あのハロウィンは本当に楽しかった。今じゃ連絡を取っているやつすらほとんどいないし、大学に入ってから行った渋谷ハロウィンは地獄みたいなつまらなさだったけれど、少なくともこの年だけは、熱狂のうちに幕を閉じた。

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当時は普段着や街着も海外ファストファッションが全盛期で、質は最悪で値段は最低限、来年にはほぼ間違いなく着られないであろう服が主流。まさにその消費感覚で、時間と若さを燃やしていたんだろうなあと思い返す。持て余したエネルギーの矛先に、その日だけ違う「何か」になれるような祝祭と仮装はうってつけだった。

今じゃ同じことはできないし、したいとも思わないけれど、行き場のないエネルギーが爆発する快感は10代の特権だったといえる。そういえば最近の高校生ってどういう遊び方をしているんだろうか。ふと気になった、24歳、10月の終わり。


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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside​

イラスト:あんずひつじ

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