【 レビューあり 】 はるやまひろし 『PINK SMOKE EPS』 千葉県

ZINE REVIEW by いのうえ あかね（PARK GALLERY）

ZINE の作り方、表現の方法は作家によって様々なのだと、今年の COLLECTIVE で改めて実感する。紙や印刷方法を細かく印刷業者と打ち合わせながら完成された綺麗な仕上がりのものや、コンビニや自宅でプリントして手製本された温もりをかんじる仕上がりのものとか。どれも作家の個性や情熱が感じられるものばかり。

そんな中でまた１冊、ひときわ ZINE という紙媒体での表現にこだわりの詰まった ZINE が届いた。

パークでもおなじみのイラストレーター・はるやまひろしさんによる ZINE『PINK SMOKE EPS』。本人いわく「作り手兼鑑賞者として、色や形の境界線、タイトルとしての投影をああしてみたり、こうしてみたり、楽しみながら作成しました。」とのこと。ページをひらくと、最近のはるやまさんの作品の特徴のひとつ「ステンシル」の技法で制作された作品がたのしめる１冊なのだけれど、なんと驚くことに、１ページずつはるやまさんの手によって ZINE がステンシルで刷られている。コピーではない、つまり世界に一つだけの手作りの『作品集』が、この１冊の ZINE になっているのだ。その作業量からか生産部数は数少ない。その完成された１冊１冊には、はるやまさんの手作業による熱が伝わってくる。１冊１冊がとても貴重な ZINE となっている。画材の手触りや原画だからこその風合いがダイレクトにこの ZINE でたのしめるので、アートに触れてみたいと興味があるひとにも、とっておき。

さらに手にしてみるとわかるのだけど、紙の断裁はハサミやカッターなどの刃物を使わずに器用に手でカットされており、紙の材質までも伝わってくる。そこまでアイデアに頭がまわるのは、才能だと思う。

ちなみに、はるやまさんは音楽好きとしても有名。この ZINE も、音楽家からの影響を受けながら完成させている。

その音楽のラインナップは 、

・ジョアン・ジルベルトのベストアルバム「ジョアン・ジルベルトの伝説」

・バズコックスのシングル集「SINGLES GOINGSTEADY」

・ダーティ・プロジェクターズの最新アルバム「5EP」




体から直球に感じた率直なテンションや思いがイラストレーションとして落とし込まれている。

あえて不揃いにカットされた断面は、これらのミュージックから得たノイズ好きを再確認するための作業でもあるという。「楽しみながら制作」が、ここにまた現れている。

ZINE のタイトルは『PINK SMOKE EPS』。

PINK な SMOKE とは、はるやまさんらしい。ちなみに、はるやまさんは、非喫煙者。「吸わなそうな人がつくる ZINE ですね。」と、この ZINE を手に取っていた人が言葉にしていた。このタイトルからモクモクと発生する微粒子＝ミュージックなのかな。体に自然に染み込んだものを発信している。

『PINK SMOKE EPS』この１冊から流れてくるミュージック＆アート、全身で思う存分受け取って！

レビュー：いのうえ あかね（PARK GALLERY）

---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ---



【 ZINE について 】

作り手兼鑑賞者として、色や形の境界線、タイトルとしての投影をああしてみたり、こうしてみたり、楽しみながら作成しました。
紙の断裁からは自分のノイズ好きを再確認。

音楽家からの影響として、
・ジョアン・ジルベルトのベストアルバム「ジョアン・ジルベルトの伝説」
・バズコックスのシングル集「SINGLES GOINGSTEADY」
・ダーティ・プロジェクターズの最新アルバム「5EP」

ベストアルバムやシングル集として一つ一つ粒がたった楽曲ながら、流れが良くフィーリングとして一体感があるようなZINE（EPS）を目指して作成しました。ジョアン・ジルベルトの魔法のようなギターや歌には驚かされました。バズコックスからはパンク（ZINE）スピリッツを。ダーティ・プロジェクターズからはモダンミュージックの在り方の一つを。

価格：¥1650（税込）
ページ数：8P
サイズ：170 × 170mm

はるやまひろし『PINK SMOKE EPS』

作家名：はるやまひろし（千葉県浦安市）

静岡県生まれ、千葉県育ち。
好きな音楽のアートワークとTシャツに憧れてイラストレーターの活動をはじめる。シンガーソングライター気分で絵を日々レコーディング中。

2021/3/31〜4/11
個展「あおときいろはならんでおどる」PARK GALLARY（東京都 末広町）
〜8/31
巡回展「あおときいろはならんでおどる」gura yamagata（山形県 山形市）

https://www.instagram.com/hiroshi_haruyama

【 街の魅力 】
海をすぐ見に行けること。

【 街のおすすめ 】
① 浦安市中央図書館 ... 貴重な本がいっぱいある。
② 泉銀（魚屋）... 美味しいお魚を提供してくれます。知識が豊富。
船長（店主）森田釣竿さんはロックバンド「漁港」もやっている。