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issue 25 「鋼鉄の爪を隠した戦士たち。ヘヴィなメタルが空を飛ぶ!」 by ivy

キュイーン
ズドドドドド
ギャァァァ

激しい音楽、といわれて多くの人は、メタルを思い浮かべるんじゃなかろうか。

『X』が『天才たけしの元気が出る TV』で芸能人を早朝の枕元生演奏で叩き起こす企画をやっていたのは、その「激しさ」をコメディにしていたわけで。そのイメージがある程度一般的に共通認識としてなければウケないはずだ。

さて、今回は、そんなメタルを愛好する皆さん、「メタラー」についてのお話。

というのも、中学時代、私はメタラーだった。雑誌『BURRRN!』とユニオンのヘヴィメタル館に小遣いすべてを吸い込まれ、デスメタルを昼の校内放送で流して学年中に引かれた日々は、まるで昨日のよう。

当時の私や出会った大人たちから考えても、先ほど出したようなステレオタイプイメージの割に、メタルを聴いている人が私生活で「激しい」「過激」なタイプであることはあまりない。

中学時代の私は以前こちらでも書いたように友だちゼロ、1日誰とも話さない日多数、前髪は食えるくらい長い、そんなやつだった。明日事件起こして捕まったら、ニュースで当時の同級生に「あまり目立たない、暗い人でした」って100%いわれるタイプ。

ただ、勉強だけはできた。どの教科もしっかりやっていた。真面目だったから。あと、決して人を避けていたわけでもない。話したいことがないから、交わらないだけで話しかけられたら普通に話せる。そんなやつが、行き場のない感情をザクザクのメタリックリフに。

のちにバンド活動を始めたことで、ある程度友だちができ始め、色んな人とつるむようになった高校時代。この頃には既にメタルを聴かなくなっていたけれど、当然ながらまだまだメタルの話についていける。そして、徐々に気づいた。メタル聴いていたやつがみんな自分と似たタイプ、ということに。

メタラーは、自ら情報を掘り下げる時間があるやつ、真面目なやつ、コミュニティの中では案外人当たりのいいやつが多い。ただでさえマニアックなジャンルだから、そもそも人づてに情報を得る前に、自らアクションを起こす必要がある。それを実直に掘り下げるほど、世界史の如く煩雑なジャンルや流派の壁にぶち当たる…。それでも聴き続けた真面目なヲタク気質メタラー諸兄は、ようやく見つけたメタル友だちに、非常に寛大だ。なんといってもようやく見つけた好きなものを語らえる仲間、更にメタルは演る側にとって、間違いなく一人でライブができない音楽。仲間は貴重かつ不可欠な存在だ。

心優しき鋼鉄の戦士、メタラーたちは、その爪を研ぎ澄ましながら、世間では隠し続けている。そして、彼らがステージやフェスにひとたび集まれば、煮立った狂気が牙を剥くというわけだ。

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そういえば、アメリカのメタルバンド『Slipknot』のライブでオーディエンスが巨大な焚火を会場に組んだらしい。当然ライブは中断、騒然となったけど、どうやら他界したメンバーの追悼らしい。なんて心優しき、心温まる…いや、やっぱりおかしいか。


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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside​

イラスト:あんずひつじ

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