見出し画像

【 レビューあり 】 Naoko Kayashima 『真夜中のドーナツ屋さん』 埼玉県

画像1


ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY)

中学生の頃、勉強嫌いなわたしはよく教科書の片隅の余白にらくがきをしたりして苦手な授業の時間を潰していた。よくあるパラパラ漫画とかも描いてみたり、らくがき程度のクオリティだけれど友だちにみせたりして遊んでいた。

その時感じていたささやかな楽しみの感覚に近いような、ちいさな物語をたのしめる1冊の ZINE が届いた。

Naoko Kayashima さんによる『真夜中のドーナツ屋さん』。

このお話は、Naoko さんの頭にふと浮かんだのがきっかけで生まれた作品らしい。農家に生まれたという Naoko さんは、牛、馬、鶏、放し飼いの猫達に囲まれて育ち、それがきっかけなのか気付いたら動物と人をよく描いていたという。その素直な言葉や感情が、作品にも表れている。

画像3


直径約12センチの、おしりのポケットにも入ってしまうようなちいさな ZINE。全ページ、モノクロのイラストでお話は進む。『真夜中のドーナツ屋さん』と、わたしが中学生に遊びで描いていたパラパラ漫画は比にならないけど、どこか近い懐かしさを感じるのは、教科書のちいさな余白に描かれているようなサイズ感からかもしれない。

内容は、ネコのドーナツ屋さんが、いろんな家に淡々とドーナツを届けるお話。

まずはじまる物語は、残すところ「あと2日」といったカレンダーを背後に、受験を控えた学生が真夜中まで猛勉強している様子。そんな中ふと居眠りしてしまったのか、おおきい口を開けて天井に顔を背けている。そんなところに、1匹のネコがやってくる。そのネコはドーナツ屋さん。届けられたドーナツを頬張り、受験勉強もう一踏ん張り!

画像4

画像5


これが、見開き2ページのテンポで主人公が変わっていくのだ。そのたった2ページで、主人公の感情の変化を感じさせる。そこには物語る言葉は添えられていないのに、不思議なまでにイラストの情景だけで感情が伝わってくる。

モノクロだけで描かれるこの物語には、 “真夜中” というその曖昧な時間に起こっている、喜怒哀楽とも言える様々な出来事が繰り広げられる。ただただ淡々と、いろんな人、いろんな状況の場面に案内してくれる。

主人公たちは皆、届いたドーナツを食べると、リラックスした表情になる。どんな状況であってもホッとさせる。ネコのドーナツ屋さんが現れると、なんだかセンチメンタルな気分になる。短編のドキュメンタリー映画を観ているような。

画像6


COLLECTIVE の期間中、おすすめの ZINE として『真夜中のドーナツ屋さん』をわたしはあげている。みんなにおすすめしたい1冊。

なにかあったその日の真夜中には、ネコがドーナツを届けにきてくれるかもしれないよ。

画像7

レビュー:いのうえ あかね(PARK GALLERY)


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ----

【 ZINE について 】

ネコがドーナツを窓から差し出す画がふと頭に浮かんだのが、この作品を作ったきっかけです。ネコのドーナツ屋さんが、いろんな家に淡々とドーナツを届ける話に仕上がりました。意外な結末になっていますので、ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

価格:¥500(税込)
ページ数:20P
サイズ:110 × 110mm


画像2


作家名:Naoko Kayashima(埼玉県入間市)

農家に生まれ、牛、馬、鶏、放し飼いの猫達に囲まれて育ちました。気付いたら動物と人をよく描いているのは、そのせいかもしれません。描きたいものをただ素直に描いています。その時間が幸せです。

https://www.instagram.com/naokokayashima

【 街のおすすめ 】
TREE … 実父がやっているカレー屋です。




🙋‍♂️ 記事がおもしろかったらぜひサポート機能を。お気に入りの雑誌や漫画を買う感覚で、100円から作者へ寄付することができます 💁‍♀️