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issue 19 「夏の隙間に手持ち花火を」 by ivy

とうとうやってきたよ。夏の終わり。この週末が最後だね。

不思議なもので、小さいころに比べて夏は全く恋しくない。フェスは実際のところ夏じゃなくてもやっているし、夏休みは長くないし、かき氷なんて食べたくないし、プールはここ3年入っていない。それなのに、夏の終わりは寂しいんだ。

さて、夏の終わりといえば、やっぱり花火。特に線香花火(手持ち花火)だと思う。これに関しては、逆に幼い頃はあまりやらなかった。火が怖いし、大きな花火に比べてしょぼいじゃん?

やはり、誰かと一緒にきゃあきゃあ言いながらやるからいいんだよなぁと思う。

今年は花火大会もないからさ、河原に集まって焚火と手持ち花火をやることにしたんだけど、色々あって親友のコウキ(ポッドキャストを聴いてくれているみんなにはお馴染み)と2人きりになった。今回は、その時の話。

アコースティックギターに焚火台、スピーカーを持ち寄って、持ち物は半分キャンプ。近場のスーパーで食料と可燃物を調達して、日が暮れるのを待ったらスタート。BGM はスチャダラか、久石譲か、サザンか、Beach Boys か。とりあえず夏っぽいものをかけてみる。

周囲には何組かの親子とか学生がいて、わいわいやってる中、私たちといえばややしっぽりモード。焚火でホットドッグを焼いて、ぱちぱちする音に耳を傾けながらそろそろ花火か。

いうまでもないけれど、線香花火って色々と自分でやることが多いので、「隙間」「余白」が多い。火をつけるためにチャッカマンの調子や風の強さに翻弄されるし、片方が花火をしている間もう片方は写真を撮っている、とか。で、途中途中に花火を変える時間もあるし、そういう隙間時間が一定の間隔で挟まると、隙間にする話や行動もリズムが出てくる。

何が言いたいかというと、この隙間のおかげで、夏の思い出が嫌でも思い浮かんでくるよね、という話。わいわい縁日で旧友と今の友だちが打ち解けたり、盆踊りに繰り出したりしているとさ、気が付いたらお開きの時間になっていて、夏の思い出って大抵そんな感じだと思うんだ。

手持ち花火を持ちながら、だんだん慣れてきて、その一定のペースで話も尽きてくると、ぱちぱちという乾いた音と共に、暑くなり出したころ、まだできていないこと、やりたかったこと、種火と共にいちいち浮かんでくる。

大したことをしていない夏だったけれど、思い返すと色々あったなぁって。夏だから、じゃなくて、それを夏にやったから意味があると思えてくる。

IVYLOOK_花火


1年で一番好きな季節はクリスマス前なんだけど、その割に終わりのわびしさは夏が大きい。あっという間に過ぎて、その割に最後をゆっくり迎える、その隙間こそが魅力なんだろうな、って。

そういえば大学の夏休みとか、隙間だらけだったもんなぁ。ひたすら暇で、楽しい日は一瞬で終わって、その繰り返し。

だから、退屈な日々、何もしていない時間は無駄じゃないし、花火なんて手際が悪いくらいでちょうどいいのよ。きっと。


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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside​

イラスト:あんずひつじ

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