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issue 43 「念願叶って初フジロック!帰宅直後の雑感」 by ivy

フェスは大抵、途中から一人行動になる。これは、同行者が初めての人でも、長年の友人でも毎変わらない。ついに参戦が叶った憧れの『フジロックフェスティバル(以下フジロック)』でも、やはり変わらず...。パークでもお馴染み花屋の287さんについていく形でようやくフジロックへ行けたんだ、今年。

目当てのアーティストは、『Vampire Weekend』。言わずと知れたゼロ年代~10年代インディーロックを代表するバンド!10代の頃、学校の図書室にあった『ロッキングオン』を読み込み、放課後は神保町のレンタル CD 店ジャニスへウォークマンで Inter FM の洋楽番組を聴きながら駆けつけていた私にとって、もう無意識化で脳内プレイリストに刷り込まれているバンド。それ以外にもここ最近染みるようになった Originai Love、グルーブ感たっぷりのネオソウル Hiatus Kaiyote、久々の「逆来日」となる UK 拠点の日本人サイケバンド Kikagaku Moyo まで ... 洋邦問わず、安定感あるラインナップだ。

朝から晩まで、夢中ではしゃいだし、ステージを見ていない時間も、脳内に音楽が鳴り止まない、夢のような一日だった。それでも一番印象に残ったバンドは … と聞かれたら、やはり目当てだったグリーンステージ(メインステージ)のトリ、Vampire Weekend 以外には浮かばない。
キラキラしたポップネス、繊細なサウンド、明るく夢見心地で切ない世界観 … 決して古臭くはないが、今のトレンドとは違う。ものすごくいい意味で一昔前を想起する、そんなバンドなんだ。映画でも少し前、多かったじゃない?そんなテンション。『500(日)のサマー』とか『ルビー・スパークス』とか …。大の大人が夢見がちで、ちょっと笑っちゃうくらい甘酸っぱくて、切なくてロマンティックなやつ。そういう雰囲気が色濃い。だから、CD やサブスクでは何年経っても変わらない彼らが生で見たらどうなんだろ、って内申怖さもあったんだ、ステージが始まるまでは。

結論としてはもう、至高のステージで大満足。完璧だ。これ以上はない。

大仰な SE に乗って威風堂々の登場して歓声に応える姿はインディーロック界屈指のスターバンドに相応しいし、序盤は機材トラブルで一時中断したけれど「かわいそう …」「悲しい …」なんていう声が周りからポツポツ漏れるのも彼ららしいし。そして何より、柑橘の香りが山の風に乗って弾けるように、曇天に見える流れ星のように、彼らのキラキラメロディが真夏の夜空を舞ったことが何よりもの感動だ。湿気でジメジメ、夜になって冷え込んで観客も疲れきっている。そんな時間を任されたのが彼らなのは、やっぱり納得できる。

彼らが FM ラジオに乗って彗星の如く現れたゼロ年代末期、日本もアメリカも、どこか疲弊した空気の流れていた時代だった。リーマンショックにサブプライムローン、東日本大震災 … 個人的にも踏んだり蹴ったりな時期で、音楽に救いを求めていた。まるで花が咲くように明るい、かといってきらびやかなエンタメとも違うどこかナヨっとした音こそ、時代のナードたちを救った音楽だった。
まさに当時、たった一人で帰り道に聴いていたあの音と全く一緒。奇しくも閉塞感のある今日この頃、私たちが求めていたんだ、きっと。この日も一人で聴いた。彼らのライブはそれでよかったと思う。たまたま私が単独行動をしていた時間だっただけなんだけど、終わってみたらそう思った。

強いて言うなら、10代初め、うつむきながら聴いていた当時の私と一緒に踊りたかった。

来年も行きたいなあ …。
次は泊まりで!日帰りはしんどい。

イラスト:あんずひつじ

ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!

https://www.instagram.com/ivy.bayside 

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