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issue 14 「雨上がりの散歩道」 by ivy


自宅から徒歩圏内にある『上野恩賜公園』。
1日の始まりと終わりに、何も考えずに、ただただ歩く。

『不忍池』の周りをぐるっと一周。


それこそ、アメリカのバンド・Chicago(シカゴ)の『Saturday In The Park』でも聴きながら、自宅で淹れたコーヒーを持ち、ただただ歩く。犬でもいたら、なお良いのだろうけど、とりあえずは単身で。



さて、雨が増える時期ともなると、いよいよ散歩だって毎日は行きづらくなる。別に行けば良いのだけど、傘を持てば片手がふさがるし、億劫(おっくう)なことは否めない。

ただ、いつもは淀んでカーキ色をした公園のど真ん中にある『不忍池』の水面が、この季節になるとみずみずしいグリーンに変わるから、やはりたのしみは絶えず、日々足を運びたくなる。自然の変化を徐々に感じるというよりは、ある日、急に、その時は訪れる。

開花時期は7月以後、梅雨が明けて洗濯物が乾く頃。
この一面の緑に『蓮』の花が咲く。今か今かとその時を待つよりも、ある日突然咲くのだから、毎日足を運ばなくちゃ。

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会社が在宅になって久しいけれど、通う場所と理由があるのはありがたい。

で、最近思うのは、必ず求めているものに会えるとわかっている場所は、案外通わないこと。

自分のスマホをまだ持っていない頃、会いたい友だちとアポが取れないから、毎日同じ公園で待ち合わせて、時間を気にせず遊んでいた時のような、そんな『子ども時代』に近いかも。だいすきなことや、また味わいたいような楽しみがあるのは絶対条件だけれど、それが手に入る時と入らない時が五分五分くらいで、丁度いい。


不忍池の蓮が咲く様をいつか見たくて、この頃は毎日足を運ぶ。

ついにある日、その姿を見たら、いよいよさらにそこへまた通うようになる。だから『通う理由』というのは確約されていないくらいが、一番通う理由になる。



そういえば毎朝、池のほとりに椅子を置いて『スケッチ』をしているおじさんに会う。

まだ話したことはないけれど、あっちはどういう理由で毎日来ているのだろうか。



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ivy(アイビー)
会社員で物書き、サブカルクソメガネ。
自己満 ZINE 製作や某 WEB メディアでのライターとしても活動。
創り手と語り手、受け手の壁をなくし、ご近所付き合いのように交流するイベント「NEIGHBORS」主催。
日々出会ったヒト・モノ・コトが持つ意味やその物語を勝手に紐解いて、タラタラと書いています。日常の中の非日常、私にとっての非常識が常識の世界、そんな出会いが溢れる毎日に、乾杯ッ!
https://www.instagram.com/ivy.bayside​

イラスト:あんずひつじ

珈琲にまつわるウェブメディア「オトナリ珈琲」さんで、<ストリートとメシ>をテーマにコラム『路端のブランチ』も連載中です。こちらもぜひ。




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