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新刊『天国酒場』について

あれは2012年の夏の終わり。

若い頃のただ酔って騒げれば楽しいという飲みかたから徐々に、酒場で飲むという行為には「酒場自体の味わいを愛でつつ飲む楽しみ」があることに目覚め、あちこちの酒場を巡るようになっていた僕が、ある日出会ったお店がありました。今はなき、稲田堤「たぬきや」。

多摩川の広大な河川敷にぽつんと、ウソみたいな佇まいである掘立小屋のような“川茶屋”で、酒やつやみも豊富に揃っている。店内、テラス席、そして店外までもがシームレスにつながっていて、その境が明確でない。その頃「歴史ある名店こそが至上の酒場」というような、ちょっと危うい思想に片足をつっこみかけていた僕は、このたぬきやの存在に大変な衝撃を受けました。

「酒って、こんなに自由に楽しんでいいんだ!」と。

その日、日が暮れるまでたぬきやでぼーっと飲んでいたら、なんだか目の前の多摩川が三途の川に見えてきた。「ここはきっと、天国にいちばん近い酒場だな」と思った。

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と、それまで知らなかったタイプの店の魅力の洗礼を受けてしまった僕。元来“酒変態”の資質があったのでしょう。たぬきやだけに満足せず「他にも天国みたいな酒場ってないのかな?」と探してはじめました。するとこれが、意外なほどあちこちに、ぽつぽつっと見つかるんですよね。いつの頃からか、そういった酒場を自分のなかで「天国酒場」と呼ぶようになっていました。

2016年には、当時監修役をつとめていた『酒場人 vol.2』という雑誌で「天国酒場へようこそ」という特集も組みました(ちなみに同じ号で、初めて世に提唱する「チェアリング」特集もやっていたので、実はかなりその後の活動につながる1冊だったといえるのかも)。

画像2https://www.amazon.co.jp/dp/4775525506/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_3b-BFbS9ZN7S8

そして、初めてたぬきやに行った日から8年後の9月25日。

その間、誰にも頼まれず勝手に巡り歩いていた「天国酒場」への探訪記を、撮りためた写真たっぷり、オールカラーでまとめた初の本『天国酒場』が、柏書房から発売されました。

天国酒場表紙

担当のMさんからお話をいただいたのはもう2〜3年前だったかな? 酒場人を読み、その後の僕の活動なども気にかけてくれ、「一緒に天国酒場の本を作りたい」と声をかけてくださった。それから紆余曲折、停滞後退いろいろあったものの、こうして1冊の本という形になって、本当に感無量であります。

もちろんそれぞれのお店のインパクトがすごいし、写真、文章ともに、なるべく的確に魅力を記録しようとしてきたつもりではあります。が、それが1冊にまとまってみると、なんていうんでしょう、自分でもびっくりするくらい濃い。すごい店! またすごい店! またまたすごい店! って感じで、誌面から感じる圧がすさまじい。ありがたいことに、これまでにも何冊か酒場関連の本を出させてもらいましたが、純粋な「やばい感」という点では、この本は飛び抜けているかもしれません。

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そんな天国酒場をじっくりと全20軒。プラス、残念ながら閉店してしまったたぬきやを含む、今はなきお店を写真とともに回顧するコラムなどもたっぷり収録した1冊、『天国酒場』。書店などでお見かけの際は、よろしければパラパラっとでも眺めてもらえたら〜! m(_ _)m

出版社サイト
http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b529328.html
amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4760151486/


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