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お75話・女の子におんぶしてもらいたい男子~おんぶはこれが最後かもと女の子に言われた

 アンナとお手てつないで寝落ちし、いい気持ちて寝ていると、まだ夜も明けきらないうちに、ボクは、アンナに起こされた。
「彼氏が東京に今日出てくるっていうメールが来たのよ。仙台からなんで早くてもこっち昼すぎだけど、クロさん、朝早めに帰ってください、ごめんなさい、追い出すみたいで」
「こんな夜明け前からドタバタしなくても、ボク、8時ころに出れば大丈夫でしょ?」
「だめよ、数時間前まで他の男性とこのベッドに寝てた雰囲気を消さなきゃ。ほんとなら半日以上はほしいところ」
 たしかにそうだ。ボクが彼氏の立場だったら、彼女のベッドに6~7時間前まで他の男が寝ていたことなんて想像できるだろうか。さらに12時間前には、彼女は他の男が口内発射した精液を飲み込んでいる。
 そんなふうに自分や彼氏の立場を考えてみると、エロい女の子って、いいなぁ、と、新たなフェチが自分の中に芽生えているのを感じた。アンナのおクチや身体は入念に洗えばなんとかなる。しかしベッドにはボクの臭いが残るかもしれない。いや、このベッドにはさらに他の男も臭いを残していったかもしれない。
 そんなベッドを嫌がる男も多いだろうが、ボクは、そんなベッドにエロさの魅惑を感じ、そう、魅惑というふうに好感度とボクがとらえたのは、妄想の宝庫だから。アンナと他の男がなにをしていたか、これからなにをするのかの妄想なんかはたいしたことではない。
 その他の男が、アンナのベッドから、どのように自分以外の男の影を感じるのか、それを感じたら、ボクのことをどう妄想するのか。相手の男が、知り合いでないゆえ、妄想の方向は自由だ。そんな自由妄想の素となってるアンナのエロさにはさらに磨きがかかってるように見えてきてしまった。
「アンナ、わかったよ、今日は急いで帰るけど、またここに遊びにきていいのかな?」
「うん、また来て、今日はごめんなさい」
「駅まで、おんぶして」
「えっ、またおんぶ? わかった駅まではムリだと思うけど、できるところまで」
 ボクはアンナのおんぶに乗って耳元でささやいた。
「アンナの背中の上で、ボクはいま寂しくて涙出てきちゃってるんだよ。おんぶしてくれてクチでもやってくれた優しい女の子アンナに、ボクはいまこれから捨てられちゃうの・・・、こんな優しい女の子に捨てられちゃうぅぅ」
「捨てないわよー」
「また優しくしてくれる?」
「おんぶはこれが最後かも」
「やっぱ、おクチはよくても、おんぶはイヤかぁ。なのにまたこうしておんぶしててくれて、ありがとね。彼氏おんぶしちゃダメだよ」
「しないわよ」
「アンナのおんぶはボクだけのもの」
 おんぶで歩いてくれたのは今回は1分くらいと短かったが哀愁の心に包まれた感じが、別れを惜しむ恋人どうしっぽくて暖かかった。

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