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お62話・女の子におんぶしてもらいたい男子~優しさと深みのある女性におんぶしてもらった

 都区内某路線バスでボクの隣の席に座った茶髪の綺麗な女性は、ボクのような甘えん坊男子にはキツい対応をしてきそうなオーラを放っていたので、ボクは、せっかく綺麗な女性の隣で彼女と腕くらいなら触れ合う関係だったのに、コチコチに緊張していた。
 そんな彼女が隣で、うつむきかげんで寝落ちしたのを見れて、幸せな心地になれた。いつも思うのは、男が幸せになるのって、こうも簡単なことなのか、と。もしかしたら、キツい側面を持ちつつも、かわいい性格も持ち合わせた女の子かもしれなない。綺麗なセミロングの茶髪に顔が隠されてるとこが、これまた妄想心をわきたてる。目の前に見える彼女の足は、ちょっと悪女風でなかなかいい。
 バスは、終点の某ターミナル駅に到着、ボクは思わず声をかけてしまった。
「寝落ちした姿すごくかわいかったのでドキドキしてました、すみません、勝手に感じちゃってて。寝落ちする前のキリッとした美しさとのギャップです」
「えへっ? 私そんなキリッとなんか」
「あっ、いまのその仕草もグッときちゃう」
女性が、身体をよじらせながら席を立とうとし、髪がフワッと乱れる絶妙な曲線美。そのよじらせ方が、モデルのような色気アピールではなく、ボクに褒められた言葉に対する、ちょっと恥ずかしいけど嬉しいってな自然の動きであるところがいい。
 しかも、ボクの誉め言葉によってなされた仕草ということは、ボクの作品でもあるわけで、という・・・、つまり、彼女の中にボクが入り込んでる。
 なんとかして自然な流れで2人でバスから降りると
「ちょっとしたお願いがあるんですけど・・」
「ナンパ? あまり時間ゆとりないんで、喫茶店とかはムリ」
「歩きながらで済むことです、5分もあれば・・」
「ハイハイ」
「あなたを隣の席で見ていた―てというか感じていて、恥ずかしいお願いなんだけど、こんな魅力の女性に、おんぶしてもらいたくなっちゃって・・。ボクをおんぶしてください」
「えっ、私があなたを??」
「そうなんです、ごめんなさい。。では、乗りますよ」
「ちょっと待って。こんな魅力の女性に、の、こんなってなんなのか教えて」
「ギャップ萌え。キリッとした美しさと、かわいらしさ、今こうしてボクの相手をしてくれてる優しさ。ギャップの大きい女性には広さ深みがある。そんな女性に甘えて包み込まれたい」
 そんな複雑なこといわれてすぐには言葉を返せないままでいる彼女にボクは
「乗るよ」と言って背中に飛び乗ると、女性は、なされるがままに、おんぶの体勢で、ボクの全体重を支えてくれた。この、知り合いでもなかった女性が、なんだかよくわかんないうちに、ボクをおんぶしてくれちゃうことになった瞬間の幸せ感は、女の子にどれほど感謝してもしきれない。
「キミの行く予定の目的地へ向かってくれてオーケーだよ」
「おんぶさせたうえに、歩けっていうの?」
「すません、歩いてほしくなっちゃってー・・・」
 女性は、ちょっとずり落ちたボクの身体ポンと高い位置に跳ね上げると、コツコツッと歩道の人混みの中を歩き始めてくれた。バスの席で約20分間悶々してた対象のその女の子が、今ボクをおんぶして歩いてくれてる・・、あの悶々20分があったればこその、今このおんぶの至福度4倍増。
 162センチはあるかと思える女の子のおんぶ上から眺める駅前の人混み景色は、すべてが、今のボクの幸せ感を支える部材のようで、街の景色も、すてきな女の子のおんぶから眺めると、こんなに快楽の遊園に変化するもんかと。
 女の子の「重いよ。もう降りて」という、先刻までとはまたかなり違う色っぽい声を聴いて、ボクは現実に引き戻されそうになったが
「あっ、今の色っぽい声でまた感じちゃったぁぁぁ。おねがいだから、まだ、おんぶ終わりにしないで~。重くて大変だよね、ごめんなさい。でも・・」
 この、追加ワガママに対して、女の子が1~2歩追加して頑張ってくれるだけでも、おんぶフェチのボクは感謝感激感動してしまう。ありがとう。

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