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お76話・女の子におんぶしてもらいたい男子~セルフレジ隣の女性に2度おんぶ縁

 近所の食品スーパーのセルフレジで隣で精算している女性の醸し出すオーラが気になったので、横目でチラチラと彼女の顔を覗き見してしまっていると、そんな怪しい視線を向けるボクに対して、彼女のほうから「あっ」と言ってくれた。
 ヒントは、この一声でじゅうぶんである。過去の素敵な記憶が一気にフラッシュバックしてきた、全身にビビッとくるものをかんじた。お61話とお37話でボクをおんぶしてくれた、まだ名前も聞いてない女性である。
 女性は、スーパーでの買い物袋2つともう1つで3つの袋を持つことになりそうだったので、ボクは「1つ持ちますよ、以前におんぶしてもらったお礼に」と。
「私のうちまで来る気?」
「はい。ストーカーはしません。ボクも身元を明かします。すぐ近くなので立ち寄って、ボクの住んでるとこ住所も名前も確認してください、ボクの買い物そこに置いてから、あなたのうちまで荷物持っていきます、おんぶしてなんて言いません」
 彼女のアパートに着き、部屋に招き入れてもらえたことで、ボクの心は、おんぶしてもらえたのとほぼ同程度に「女の子に受け入れてもらえた」という幸せ。ボクみたいな無礼なお願いをする見知らぬ男を受け入れてくれた女性は、女性の側にもボクとの唐突な出会いになにか「断り切れない」運命的ななにかを感じてくれたってことだろうか。
 夜道で出会って、なんの脈絡もなく「おんぶしてください」と頼まれたってことで、おんぶして歩き始めてくれちゃう女性。この「断ってもいいことなのに、なぜなのか断り切れず・・・」ってとこに女性の魅力を感じてしまうボクの性癖。
 その「断ってもいいことなのに、なぜなのか断り切れず・・・」が、2度目にもまた繰り返される。1度目と2度目での、断り切れなかった理由は、同じような理由なのだろうか、それとも異種なのだろうか。おんぶしてもらえたボクの心のほうは、1度目と2度目では、けっこう違う種類の幸せ感のような気がする。2度目のおんぶオーケーによって、1度目のおんぶも肯定された感。女性に言わせれば
「肯定なんかじゃないよ。2度とも、なんで私、男の人なんかおんぶしてんだろ? って、自分のやってることバカみたいって・・・」
 その「バカみたい」って思いながらも、男をおんぶという、ふつうは女性は、やらない大変な肉体労働をしてくれちゃう・・・そこにボクは、女性らしさの魅力を感じてこんな女性にワガママ言って甘えたい、ってなっちゃう。
 ワガママ言ったことは、もし全部断られても、相手してもらえるだけでも、ボクはそんな女性の魅力にやられて萌えちゃう。できれば、たくさんのワガママから1つだけでもいいから、ボクの望みをかなえてくれるとすごく嬉しいんだが。
 今回は、3回目は、部屋にまで入れてくれた。なぜワガママな要求ばかりしてきてるボクを、この女性は受け入れてくれたのだろうか。そこには過去2回のおんぶによって「まあ、この男なら、いいっかぁ」と許される存在になれた。おんぶは、身体と身体の触れ合う行為としては、全体重でくっつきあう行為。
 おんぶしてもらう、という120%ただ単に貴女に負担をかけていただけの行為なのに、貴女にとっても、なにかちょっとでも好感と捉えれる点もあったっていうことかな、と。好感なんかゼロよ、大きな勘違いってことなら、そう言ってください
「そこんとこが、私にもわかんないのよ、なんで私たちこんな関係になっちゃってるんだろ。少なくともなぜか貴方には、ストーカー的な粘着は感じてないからここに。でも、おんぶしてって乗ってくるって粘着ともいえるし、不思議・・」
「部屋にまで入れてくれて、ありがと。今日はおとなしく帰るね。かえって、キミとあんなことやそんなことしてもらう妄想を巡らせながら今夜はひとりで寝ますね。
もし、帰らないでー、私をひとりにしないでーっていうなら泊まってくけど」
「そんなことあるわけないでしょ・・」
「うん・・」
 2度もおんぶしてくれた女性がご近所さんってこと確認できただけでも、ボクはこの街で幸せに暮らしてける。名前も、カナコさんとわかり、携帯スマホでメールやり取りできる仲に。通話はいきなりはしないで、と。こういうルールを守れば、ボクのワガママを受け入れつつ相手してくれる女の子であってくれそう。

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