見出し画像

社会科学・行動科学研究について

今回は研究手法に関する話です。社会科学・行動科学研究(SBR:Social and Behavioral Research)とは、人間の態度や信念、行動に関わる研究を総称したものです。生命医科学や臨床医学の研究でも、SBRに用いられる手法や質問を取り入れることがあります。

例えば質問紙や面接、フォーカスグループ・インタビューなどが使われることもありますし、直接観察や参与観察が行われる場合もあります。いわゆる研究と言うと実験室で行うようなイメージがありますが、このような手法の研究もあるのです。以下研究の例をあげてみます。

詳細な観察を伴う記述的研究あるいは探索的研究

多くの場合、対象となるのは現実の世界です。例えば特定の文化・家族・集団あるいは個人が対象となります。研究対象者と直接接触しない記録ベースの研究も、このカテゴリーに含まれます。

例として:
・遺伝学的研究のための家族歴収集。
・家族内のやり取りの録画記録をもとに行う、薬剤、医療機器等が行動に及ぼす効果の記述。
・労災保険の支払記録や医療記録の分析をもとにした、労働災害に関する疫学的研究。

現行の医療・福祉サービス・教育事業の評価

「事業評価」と「研究」は区別がしづらいこともあります。データ収集の目的が、一般化可能な知識を得ることである場合や、得られた結果が研究環境や対象集団の枠を超えて広く適用可能である場合、データ収集活動は研究に相当します。他方、研究結果が組織内部の管理のみを目的として使用される場合、そのようなデータ収集活動は研究とは見なされません。

そのように、場合に応じて事業評価にも研究にもなりうる例として:
・薬局で喘息の薬を受け取る人に手渡される、コンピュータ処理された説明書がもたらす効果の評価。
・在宅高齢者に対する24時間看護サービスに関する評価。
・製造メーカーのマーケティング戦略の効果測定。

情報・教育・治療についての競合するタイプやプログラム間での比較

一般的に、この類の研究では研究参加者を、実験的アプローチを受ける群と標準的アプローチを受ける群の2群に分けます。さらにコントロール群を設けて3群に振り分けることもあります。

例として:
・腰痛に対するマッサージと教育指導の2群間で、効果を比較する。
・糖尿病管理における食事療法単独、食事療法と運動療法の併用の2群間で、効果を比較する。
・うつ治療について、新薬、汎用されている標準的薬剤、対話療法の3群間で、効果を比較する。

個人の信念・態度・感情・行動を実験的に操作する手法を用いた研究

看護学や医学、心理学、コミュニケーション学、言語聴覚学、教育学のような分野では、この類の研究手法が頻繁に用いられます。研究対象者は通常の日常生活では馴染みのない経験をします。時には、研究対象者に情報を与えなかったり誤った情報を伝えたりするディセプション(欺瞞的な手続き, deception)を取ることもあります。ディセプションを用いる場合にはインフォームド・コンセントが特に問題です。その場合、研究対象者にはディセプションを用いたことを必ずどこかで伝えなくてはなりません。

個人の信念・態度・感情・行動を実験的に操作する手法を用いた研究の例として:
・情緒的ストレスに曝露してコルチゾール値を測る。
・プラセボを使用して臨床試験を行う。
・イメージ映像を用いて疼痛管理の方法を探る。


以上のように様々な例がありますが、目的に合わせて適切に方法を選択する必要があります。参考までに知っておいてもらえたらと思います。

より読者のみなさまのためになる記事執筆の活動費にあてさせてもらえたらと思っています。もしよければサポートお願いします!