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法定雇用率の計算式やカウントについて

今回は企業や行政などにおいて障害者を一定数雇う必要があるという制度である「法定雇用率」に関して現実的な計算方法や、カウント方法などをまとめてみようと思います。

法定雇用率の計算式

法定雇用率は、常用雇用で働いている障害者の人数」と「失業中の障害者の人数」の両方を考慮した上で設定されています。法定雇用率の計算式は、以下の通りです。

各種障害者の常用労働者数・失業者数 / 常用労働者数・失業者数

※ 「常用雇用で働いている労働者の総数」とは、週30時間以上勤務している「常用雇用労働者」と、週20時間以上30時間未満勤務している「常用雇用短時間労働者」の人数を足したものです。

障害者を1人以上雇用する必要がある企業の規模

2019年現在、障害者を1人以上雇用する必要があるのは、常用雇用で働いている労働者が「45.5人」以上いる企業に限られています。しかし、2021年に法定雇用率が引き上げられることで、常用雇用で働いている労働者が「43.5」人以上いる企業が対象になります。そのため、常用雇用で働いている労働者が43.5人以上45.5人未満の企業の場合、現行では障害者を雇用する必要はありませんが、2021年以降は障害者を1人以上雇用する必要があります。

グループ会社における法定雇用率は?

法定雇用率は、事業主ごとに適用されます。そのため、通常の「親会社」「子会社」といったグループ会社では、グループ全体ではなく各社ごとに法定雇用率を満たす必要があります。「企業グループ算定特例(関係子会社特例)」が認められるのは、「親会社が、当該子会社の意思決定機関(株主総会など)を支配していること」「親会社が障害者雇用推進者を選任していること」など、特定の要件を満たしている場合に限られます。
(参考:厚生労働省『「企業グループ算定特例」(関係子会社特例)の概要』)https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/dl/71.pdf

事業所が複数ある場合の法定雇用率は?

法定雇用率は、企業全体で満たしていれば問題のないものです。そのため、「本店」「A支店」「B支店」といった事業所ごとに法定雇用率を満たす必要はありません。

障害者のカウント方法

実雇用率を計算する場合、通常は常用雇用で働いている労働者の人数をそのままカウントします。しかし勤務形態によっては、1人を2人分としてカウントする「ダブルカウント」や、0.5人分としてカウントする「0.5カウント」になるケースもあります。さまざまなケースで、どのように障害者のカウントを行うのかをご紹介します。

ダブルカウントになるケース(重度身体障害者、重度知的障害者)

「重度身体障害者」と「重度知的障害者」を雇用している場合には、1人当たり2人分としてダブルカウントします。なお、重度身体障害者に該当するのは身体障害者手帳の等級が「1級」「2級」の人、重度知的障害者に該当するのは療育手帳の区分が「A」の人です。

0.5カウントになるケース(短時間労働者)

「短時間労働者」の場合には、「1」ではなく「0.5」としてカウントされます。短時間労働者に該当するのは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の労働者です。ただし、「新規雇入れから3年以内または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内」かつ「2023年3月31日までに雇入れ、精神障害者保健福祉手帳を取得した」精神障害者は「1」としてカウントすることができます。なお、週20時間未満の勤務の場合は、カウントから除外されます。(参考:厚生労働省『障害者雇用対策について』)https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000482197.pdf

業種により除外率の設定も

企業によっては、障害者の雇用が難しい職種が大半を占めている場合もあります。そのため、「障害者の就業が一般的に困難であると認められる業種」については、法定雇用率を算出する際に計算から除外できる「除外率制度」が設けられました。除外率制度自体は、ノーマライゼーションの観点から2004年に廃止されました。しかし企業への負担が大きいため、段階的な除外率の引き下げ・廃止を念頭に置きつつ、現在では経過措置として除外率設定業種ごとに除外率が設定されています。実際に、2004年4月と2010年7月に、一律10ポイントずつの引き下げが実施されています。たとえば、常用雇用労働者が1,000人の企業で比較すると、除外率が0%の企業の障害者雇用義務数は1,000人×2.2%で22人になるのに対し、除外率20%の企業の場合には(1,000 人-200人)×2.2%で17人になります。
(参考:厚生労働省『除外率制度について』
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/4-1-2_5.pdf


法定雇用率の制度を理解して、自社の状況を見直していただけたらと思います。



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