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オリジナルストロベルボード「スジオカボード」パフォーマンスレビュー

【物理で見るバスケ】エントレのぱらとです。
以前レビューを書いたカーボン製代用ストロベルボード「スジオカーボン」。

このベースモデルである通称「スジオカボード」のレビューを今回していきます。

カーボン製シートを張り合わせることで作製していたスジオカーボンに対して、スジオカボードはメッシュ形状に加工された樹脂にPPを浸漬させて平板状に加工した所謂「化繊ボード」をストロベルボード状に加工したものです。

作成元はスジオカーボン同様、フットプロンプター(https://footprompter.com/)の関さん。

フットプロンプター(関さん)SNSアカウント
X(旧Twitter):https://twitter.com/FootPrompter
Insutagram:https://www.instagram.com/footprompter_atoriseki/

ちなみに製品の名づけ親(名称元?)はバスケ仲間でもあるスジオカさん(https://twitter.com/attention2021)。
関さんとはシューズの構造や機能特性に関してよくやり取りをする間柄。
関さんの製品構想に対して材料的な知見を提供させてもらっているような形です。
知識提供と合わせて試作段階のスジオカボード派生品のトライ協力などもさせていただいています。
今回のレビューもトライ協力の一環として、スジオカボードを提供いただきました。
しかも、比較レビュー用にということで異なる足型(スジオカ/スジャオカ)のボードを提供いただき感謝の極みです。

本当は年度明け(24年4月)ぐらいに通常依頼で作製しようと思って相談させてもらっていたタイミングで、おべっかなしのレビュー作成を条件に提供いただけるということでありがたく頂戴した次第です。
そのため、提供品ではありますが忖度はなしに私の視点で見る情報を赤裸々に語ってまいります。

Xのバッシュ好き界隈を中心に盛り上がりを見せているとはいえ、インソール交換やシューレース交換のようなフィッティング調整方法と比べると一般的でない代用ストロベルボードの利用。
興味はあるもののどんなものか分からない・どう利用すればいいか不安といった人にこのレビューを通して少しでも参考人なれば幸いです。

今回のレビューでは以下5モデルでスジオカ型/スジャオカ型両方の検証を進めました。

・JA1 EP
・AJ38 PF
・LeBron20
・Harden vol.6
・Harden vol.7

また、以下5モデルでスジオカ型のみ検証しました。

・Rise MID
・AJ37 PF
・Kawhi3
・Luka2 PF
・KD16 EP

レビュー内容はスジオカボード使用による機能特性の変化に関する記述が中心です。
そのため、モデル自体の機能特性や特徴に関する内容は少なめ。
YouTube等でレビューアップしていないモデルも含まれますがご了承ください。


1.ディテール、使用方法

仕様としては冒頭説明した通りメッシュ状樹脂にPP(ポリプロピレン)を浸漬させて平板状に成型されたボードを足型に合わせて切削したもの。
工業的には浸透させる樹脂の種類やメッシュ状樹脂の編み方や種類を変えることで様々なボードの柔らかさや引張強度などを実現できるものです。
カーペットやラグの裏地として利用されることもあるもので板物・反物の強度を上げたいようなときによく利用される代物だったりします。
構造的にはCFRP(カーボンプラスチック)と近い繊維強化樹脂の類。
強度を出しやすい構造と言えます。

図1 化繊ボードを加工して作られている

材料自体はカッターや鋏でも加工できますが、そうすると端部が解れたり欠けたりする可能性があるので、不具合が起きないように端部は丁寧に切削処理されております。
抜型を作ってプレス機で打ち抜くだけの作り方もある中でこの仕上がりはとても綺麗かつ丁寧。
シューズの出し入れで端部によってインナーライナーがボロボロになるといった心配もほとんどないでしょう。

【仕様】
厚み:1.5mm(実測値平均1.47mm±0.03mm)
足型:ターンイン(スジオカ、KOBE型)
   ストレート(スジャオカ、JA1型)
※足型の違いについては後述

【使用方法】
シューズのインソールを外しストロベルボードの上に設置したうえでインソールを入れて使用します。
一応、裏表(荷重によって反りやすい方向)がありますが代用ストロベルボードとして使用する際にはあまり気にしなくて良いと思います。
ただし、使うたびに裏表が入れ替わるのはよろしくないので最初に裏表を決めて目印をつけておくと良いでしょう。

2.スジオカ(KOBE型)、スジャオカ(JA1型)形状比較

関さんの作製する代用ストロベルボードは2つの足型を基に形状を出して作製されます。
最初に作られた足型はKOBEモデルをベースにした足型のためKOBE型と通称されており、もう一方はJA1モデルをベースにした足型のためJA1型と通称しています。

・KOBE型形状的特徴
KOBE型は中足部(アーチ部)が細くつま先がターンイン(内側に婉曲)していることが特徴です。
また、ヒール部もやや細身の成型。
見方によっては前足部の足幅が広いとも取れますし、先細型のエジプト型(オブリーク型)の形とも取れます。
こちら、フットプロンプターさんでは「スジオカボード」(略称:スジボ)と呼んでいます。

図2 スジオカ・KOBE型(左)スジャオカ・JA1型(右)

・JA1型形状的特徴
JA1型はKOBE型に比べると後足部~中足部にかけて太くなっていてつま先はストレート形状となっていることが特徴です。
ヒール側はKOBE型に比べて太いといっても足型としては一般的な幅なので太めタイプというわけではありません。
こちら、スジオカボードに対して足型ベースとなったモデル「JA」の名称をもじって「スジャオカボード」(略称:スジャボ)と呼んでいます。

並べてみると形状的な違いはわかるものの、違いは軽微のように見えると思います。
単純なサイジング調整やフィッティング調整としての働きはほとんど同じですが使用感、特にソール剛性のところではこの微妙な違いからは想像できない程度には差が生まれました。
詳しくは後述。

3.効果確認、使用感

ここからは物性的な評価と着用時の感性的評価の2つの面からスジオカボードの特性を見ていきます。

物性評価①荷重に対するミッドソール圧縮量の変化

物性的評価としてスジャオカボードを入れる事で荷重に対して沈み込みがどの程度低減されるのかをまずは評価しました。
評価方法はスジオカーボンの時と同様に荷重に対してどれくらいミッドソールが圧縮されるか(変形するか)を機械的に測定する方法。

・評価結果
スジオカボードでは通常時と比べてミッドソールの圧縮量が7~9%低減するという結果に。
モデルによってバラつきはあるので、入れるモデルによって圧縮低減率は前後する点にはご注意ください。
先にレビューをあげたスジオカーボンでは10~15%ほど圧縮量が低減することが確認されていたので、低減率としてはスジオカーボンに劣るということが分かりました。

・結果から分かること(考察)
材料の特性上、やはりカーボンに比べるとボード自体が変形しやすいためスジオカーボンよりも沈みやすいという結果が得られました。
とはいえ、通常時に比べて1割近く沈み込み量が小さくなれば体感できるレベルで沈み込みが小さくなっていることが分かります。

また、スジオカボードが沈み込みを低減している原理が圧力分散(荷重を大きな面で受けることでミッドソールにかかる力を小さくしている)によるものなので実際の沈み込み低減量は測定結果以上に大きくなります。
体感上の反発レスポンスの向上という点では測定値以上の変化を感じられるはずです。
というのも、圧力分散されることで今までと同じ強さでクッションを押し込んでもミッドソールが圧縮されにくくなる効果+ミッドソールを変形させる力が小さくなる効果が合わさることになって、より変形しにくくなるからです。

少し蛇足になりますが、スジオカボード関連の質問やバッシュ相談を受ける中で圧力分散による反発特性の変化について勘違いしている方が多いのでここで改めて説明させてください。

・スジオカボードによる反発特性変化
先ほど説明したように、スジオカボードの使用によってミッドソールにかかる力が小さくなることで沈み込みを小さくしているのでバッシュの反発力自体は実はほとんど変化していません。
反発力が上がった、と体感のコメントをされている方が多いですが測定結果とスジオカボードの機構的には沈み込み量が小さくなっていることで反発力はむしろ低下しています。
原理的にはバネを小さく縮めて離すよりも大きく縮めて離した方が大きな力で弾けることを経験的に皆さん知っていると思いますが、それと同じです。

ではなぜ反発力が上がったと感じるか?
足裏に与えられる反発力自体は小さくなっているものの、沈み込みが小さくなると反発までのラグも小さくなるので反発の速度(レスポンス、復元力とも言う)は向上します。
プレイヤーの主観的な荷重(押し込む力)は変わっていないので沈みにくく反応が良くなり反発力の利用効率が向上することで、反発力自体は下がっても体感上の反発は上がったと感じる、というわけです。

仮にスジオカボードを入れた状態で同じ量沈ませると通常時よりもやや大きな反発力が発揮されることが測定で明らかになっています。
また、反発の速度(レスポンス)も通常時より上がるのでプレイヤーによっては扱いやすくなるといえるでしょう。
しかし、通常時と同じだけ沈ませるにはより強い力で荷重する必要があるので実際のところは沈み込み量と合わせて反発力も低減しているということになります。

つまり、厳密なところでいうと体感上の変化はバッシュ側ではなく荷重をかける我々の足側であるということ。
体感上反発力が上がってるならバッシュ側でも足側でも同じ事じゃん?と思う人もいるかもしれませんが、バッシュの機能適合を考えるときにデメリットがあるのでキチンと原理を理解したうえで調整を進めるのが良いでしょう。
デメリットについてはここでは割愛しますが、詳しく知りたい人は出張指導等でお伺いした際に現物を用いながら解説するので指導依頼をご検討ください。

物性評価②屈曲性(ソール剛性)の変化

反発力の評価に続いてソール剛性がどの程度向上するのか評価しました。

・評価結果
こちらの結果は予想外かもしれませんがほとんど変化なし。
スジオカボードを入れてもシューズのソール剛性に影響はほとんど与えられない結果に。

・結果から分かること(考察)
評価結果としては変化なし、とではましたが実際にスジオカボードを使用したことがある人ならソール剛性の変化も体感していると思います。
シューズ特性としてのソール剛性は変化しないが、実使用上の体感では変化がある、、、

体感上の剛性の変化について詳しくは後述しますが、実際にはソール剛性の変化が体感できるのは間違いないでしょう。
この差が生まれる原因はエントレのソール剛性の測定方法と私達の足の構造の違いにあると予想されます。

エントレではシューズのソール剛性を測定する際、ソール剛性測定用に作製した硬質なモック(木型)をシューズ内に入れて測定します。
シューズ内空間が空洞のままだとうまくソール剛性が測定できないためこのような方式を取っています。
しかしながら、実際にバッシュを着用する私達の足は骨と筋肉・腱によって構成されるモックと対になる柔軟な構造をしています。
柔軟な構造をしている足ですが、足趾部分(MP関節)を曲げるほど筋肉や腱の働きによって足の強度が上がります。
屈曲によって足の強度が上がるとともにアーチが高くなり足の厚みも増えるのでシューズを内側から強く外側に押し広げようとする力が発生します。
この押し広げようとする力が測定との差として発生しており、体感上は足が圧力を受ける形になるのでソール剛性の差を生み出す要因となっています。

スジオカボードは一定の厚みを持ったボードなので入れる事でシューズ内空間が高さ方向で小さくなります。
空間が小さくなった状態で足を強く曲げれば通常時よりもさらに大きな力でシューズを内側から押し広げる力が発生することに。
その結果、ミッドソールを圧迫しながら強く曲げる形になりこの時に発生する力がソールを曲げる硬さも通常時よりも上げてくれます。
なので体感上はソール剛性が向上したように感じやすい。

シューズ側の目線で簡単に言うとフィッティングの余剰スペースが小さくなることで足を圧迫する力が増してソール剛性が高まりやすい状態を作り出す、ということ。
一定の硬さで曲がるモックを用いた測定では足の強度が変わる部分が再現できないので測定上はソール剛性にほとんど変化はない、と出てしまうわけです。
ここまでの説明の通り実際のところは、ソール剛性が向上するといっても間違いではありませんが、どの程度向上するか?については測定できず数値化できませんでした。

ソール剛性の体感上の変化も突き詰めて考えれば反発力同様、バッシュ側の変化というよりはシューズ内空間の変化によってフィッティングが変化し起きる事象なので、足側の変化が要因で起きています。
なので、やはりバッシュ側の機能を変えているわけではない、という事が言えそうです。

感性評価:実使用感

物性評価のところでも実使用の感触についてちょこちょこ書いていますが、ここからは実際に着用した際の感触について、フィッティング・ソールの反応(反発性、ソール剛性)・グリップの3点でまとめていきます。

【フィッティング】
物性的評価結果を見ると、スジオカボードによって起こる変化で最も大きいのはフィッティングの部分と言えるかもしれません。

ソール剛性のところでも述べたようにスジオカボードは一定の厚みによって通常時に比べてシューズ内空間を高さ方向で埋めてくれます。
しかも、完全な板状で高さを埋めるわけではなく荷重によって若干足の形に合わせて変形してくれる材料でできているのでスペースの埋め方がスジオカーボンよりも自然かつ優秀です。
これによってソックスの厚みやレースアップによって埋めきれないシューズ内空間を減らし、よりシューズとの一体感を増すことが期待できます。
シューズ内空間を埋めることでフィッティングに変化が起きてソール剛性や反発性の部分で体感上の変化が起きている、と見るのが客観的な評価と言えそうだなと感じています。

特にフォア空間の部分でスペースの大きい造りのシューズが昨今は多いので、この部分にナチュラルにテコ入れができるという点でフィッティング調整の選択肢を増やしてくれる良アイテムと言えます。

注意点としては元々シューズ内空間に余裕がない状態でスジオカボードを入れると空間を埋める、を超えて足を過度に圧迫する可能性があるということ。
私の場合は普段バッシュを履く時、通常厚みのバスケット用ソックス(NIKE ELITE SOCKS等)を2枚重ねて履いているのでフィッティングがきつくなるようであればソックスを減らしたり薄いソックスの組み合わせに変更するなどで調整代があります。
しかし、元々薄手のソックスを履いてフィッティングしている人はこの調整代が少ないので下手をすると手元のモデルのサイズではスジオカボードを使用できない、という可能性があるということに。
その場合、対応するにはシューズ自体のサイズを変更することが求められます。

・フォア側のフィッティング変化
個人的にはスジオカボードによるフォア部分の空間を埋める効果は非常にありがたく、LeBron20やHardenシリーズでは若干あったフォア空間の余裕がピタリとなくなり、シューズ操作のレスポンスが大きく向上してより好感触になりました。
逆に元々空間が埋まっていたJA1やLUKA2については少し圧迫感を感じる状態になったのでソックスの調整によって対応することが必要でした。
元々フォア空間を埋めきれていたJA1、LUKA2のようなモデルではレスポンス面での劇的な変化はなく、多少変わったか?という変化。
フォアの荷重レスポンスはソール自体の機能というよりも余剰空間による影響が強くでるのだな、というのがスジオカボードの使用で体験できます。
また、スジオカーボンのように硬質なボードで空間を埋めるわけではないので空間の埋め方がナチュラルで履き心地の快適さにおいてもスジオカーボンの上位互換に感じました。

・ヒール側のフィッティング変化
中足部~後足部にかけては大型のスタビライザーが入ったインソールを入れることに比べれば影響は少ないですが高さ方向でボリュームが上がるのでヒールロックやミッドフットのロックダウンが合わなくなる可能性がある点に注意しながらフィッティングする必要がありました。

特にLeBron20、JA1のようなロウカットモデルでは純正インソールの厚みに対してパディングなどがちょうど踵骨をホールドするように設計されているので、スジオカボード+社外インソールのスタビライザーで厚みを増しすぎるとヒールの掴みが甘くなりやすいです。
私の場合はヒールがカパカパの状態でも問題なくプレイできるので足と相性の良いインソールを入れる事を優先しましたが、ヒールストライカータイプのプレイヤーや荷重移動に第二~第五足趾を使うタイプのプレイヤーは影響を強く受けるので気を付けてフィッティングしてください。

そんな注意点があるので、SuperfeetのGREENなどを使用していてフォアはいいけどヒールが、、、という人はインソールをスタビライザーのないもの(フォーム系インソール)に変更すると改善する場合があります。
選択肢としては純正インソールに戻す、他モデルの厚みの違う純正インソールに変更する、などです。
というよりもスジオカボードの特性を考えるとスタビライザーが入った社外インソールは基本的に相性が悪い、と考えておいた方が良いと思います。
基本的にはフォーム系材料のみで構成された純正インソール系と組み合わせるのがスジオカボードの特性を最大化できるでしょう。

インソール調整時の注意点として、社外インソールでプロネーション(回内・回外)を矯正していたり、踵骨のホールドを補正していたりする場合、スタビライザーのないフォーム系インソールに戻すことで矯正効果が失われてしまうのでスジオカボード使用でによって別の問題が発生する可能性もあるということです。
このあたりは個別に足の状態を見てシューズのサイズ変更含めて総合的に見ていく必要があります。

【ソールの反応(反発性、剛性)】
スジオカボード購入を検討している人や既に利用している人が最も期待しているのが反発や剛性の変化の部分だと思います。
実際SNSなどにあがっているインプレッションを見ると反発が上がった!というコメントは多くあがっています。
実際のところは前述したフィッティングの変化が要因で体感上の機能特性の変化は起きていますが、ここでは素直に体感上の機能について述べていきます。

とはいえ、私の場合はスジオカーボンや他の試作ボードの使用で凡その感触は知っているうえ、物性的評価による実情も予め見えたうえでの使用なのでサプライズ!とはなりませんでした。

事前にある程度の実情を知っていることで実際に使用した時の反発・剛性の体感変化についてはより精密に比較することができました。
物性的評価のところでは反発力は下がっているだのソール剛性に変化はないだの書きましたが、やはり素直に自分の主観で見ていくとバッシュ側が変わっているように感じられるのは面白いところです。

・反発性の変化
スジオカボードを入れることで体感的な反発力の向上を感じるわけですが、反発の感触の変化の仕方はモデル(ミッドソールの種類)によって少しずつ違いました。

LeBron20のようなターボズーム系のモデルの場合、通常時はズームの感触をしっかり感じつつ沈み込みと反発を順序よく感じるような反発でしたがスジオカボードを入れることで沈み込みによる感触が変化しまるで車のタイヤの接地面を踏み込むような感じに近い反発へ変化。
反発が強くなるというより簡単には押し込めなくなり、どっしりとしつつバツンと反発を感じるというのがより正確な表現になるかもしれません。
しっかり押し込めばグンという感触と共に大きな反発が返ってくる頼りがいのあるソールの感触になりました。
荷重の仕方によっては局所的に沈むこともあるターボズーム仕様のクッションですが、スジオカボードによってその懸念点を抑えレスポンスを促し個人的にはかなり動きやすい感触に。

JA1やLUKA2、Harden vol.7のようなフォームのみまたは小型のズームエアのモデルの場合、通常時はミッドソール全体で荷重を受け止めてしっかり反発を返すコシのある感触であることが多いですがスジオカボードを入れるとミッドソールのコシが強まりバネ感の強まりを感じる反発に変化。
通常時でも荷重に対してナチュラルに沈みを感じつつ反発に繋げられるソールの感触ですが、その感触がより芯のある感じになって動きに還元しやすい反発が返る感触になりました。

Harden vol.6のようなブーストクッションが搭載されたモデルの場合、通常時は常時強い反発感を足裏に提供するのでミッドソールの厚みやソールの形状によってはブニブニと少し感触の悪さを感じますが、スジオカボードを入れると常時感じられた反発が和らぎこちらの荷重に対してしっかりとした反発を返す感触に変化。
ブーストクッションの場合、沈み込み量に対する反発の強さの相関が強いためか反発速度や反発力の向上の体感は他の構成のモデルに比べると小さい。
しかし、足裏で常時感じる不快な圧力(それでもHarden vol.6はかなりマシ)が低減されることで動き出しのシューズの応答性という点ではかなり快適度が増します。
懸念点としてはブースト自体の押し上げる力が強いので、フィッティング調整が他のクッションよりきつめになりやすいので反発の快適度向上を越えて圧迫になりやすいという点でしょうか。

AJ37のようなフォアズームストロベルが搭載されたモデルの場合、通常時は体重である程度ズームを押しつぶした状態でReadyの姿勢を取らないと沈み込みに対して反発速度(レスポンス)の遅れが気になる感じですが、スジオカボードを入れると体重でズームを押しつぶす必要性が少なくなり強度の高い動きでも反発速度を追いつかせやすいと感じます。
元々反発力自体はかなり高い機構のためスジオカボードを入れても大幅な反発力の向上を体感はできませんが、反発速度の扱いやすさがナチュラルに上がるので万人に受ける特性になったなと感じました。

ちなみに、フォア/フルレングスズームストロベルのモデルにスジオカーボンを入れると圧力分散の効果が強すぎて沈みが低減する、というよりも水面に浮いたビート版に足を乗せるような感覚でものすごい浮遊感になります。
スジオカボードでは浮遊感はほとんどなくズームに対して荷重を受けさせやすい状態を作り出せるのでナチュラルにズームの沈みに対してテコ入れできるスジオカボードの方がバスケでの使用においては優秀だな、と比較して感じています。

試したモデル全般として個人的に快適に動きやすい方向に特性が変化したと言えます。
原理的には物性的評価でも書いたように返ってくる反発力が小さくなることで足・腰へのダメージ低減の効果がありますし、反発速度が扱いやすい速度にテコ入れされることで身体が反発を利用する効率が向上し動きやすさが上がる効果が期待できると感性評価の面からも言えそうです。

※反発性のスジオカ/スジャオカの違い
スジボについては10モデル、スジャボについては5モデルで反発力の体感変化について検証を行いましたが、足型の違いによる反発力の違いは軽微だと感じました。
ソール剛性を含めた総合的な違いについては結構違いがでたんですが、反発力に限定すると足型の違いは大きくはないと言えそうです。
詳しくはソール剛性の項目で。

・剛性の変化
スジオカボードを入れることでソール剛性の高まりを体感できます、反発の感触変化と違うのは剛性の変化の仕方はミッドソールの構成よりもアッパーの材料によって違いが生まれた点です。

物性的評価の部分でも書いたように剛性の変化はMP関節の屈曲による足の構造的変化に伴って起きる現象です。
そのため、アッパーの伸縮のしやすさや硬さによる影響を強く受けるようです。

例えばAJ37のように絡み織りによる柔軟なアッパーだとアッパー強度による足の押さえつけは弱めなので、スジオカボードを入れることによるソール剛性の高まりは他の検証モデルと比べてあまり感じられませんでした。
反発の部分での影響が強いので動きやすくはなることは間違いありませんが、ソール剛性の機能適合チェック法を行ってみると大きな変化はなかったです。

逆にアッパーとしては硬い材料であるシンセティックレザーで構成されたRise MIDやKawhi3はソール剛性がめちゃくちゃ高まったのか?と言われると、そこまでの向上は感じられない結果に。
ただ、これには原因があってRise MID、Kawhi3いずれも10回ほどの着用でミッドソールが圧縮されており高さ方向の余裕が大きくなっているため、スジオカボードを入れてもバチッと空間を埋める事ができずソール剛性への影響が小さく終わってしまいました。
圧縮されたミッドソール分以上の厚みをスジオカボードが持っているとはいえ、空間が埋まらない以上ソール剛性の体感向上の原理は働きにくいというのが結論です。
新品時ならかなりのソール剛性向上を感じられたのではないかと思います(特にKawhi3)。

最後に今回の検証でソール剛性の体感が最も感じられたアッパーの種類を述べておくと、織り数の多いテキスタイル系アッパーのモデルであるJA1やHarden vol.6、Luka2のあたりでした。
テキスタイル系アッパーだから、というと少し乱暴な表現になりますが若干の伸縮性を持ちつつ足の形状によりフィットすることができるJA1などのモデルの方がミッドソールへの押し付け力の向上に寄与できるのでソール剛性の体感向上に繋がりやすいと考えられます。
また、好感触だったモデルはミッドソールの圧縮に対して強いモデルで機能的耐久性も高いモデルである傾向にあります。
このことからも物性的評価の部分でも書いたように、シューズ内空間の現象によるミッドソールへの押し付けが強まることでソール剛性の体感変化を感じやすいと言えそうです。

※ソール剛性のスジオカ/スジャオカの違い
スジオカ/スジャオカの2つの足型でソール剛性の変化の違いについて検証したところ反発性の時と違いこちらは違いがみられました。

モデルによって違いがあったんですが、例えば、Harden vol.7ではスジャボ(JA1型)を入れたとき比べてスジボ(KOBE型)の方が剛性の高まりはあまり感じられませんでした。
JA1、LeBron20も同様の傾向。
一方でAJ38ではスジボを入れた時の方が剛性の高まりをより感じる結果に。

モデルによって剛性の高まりが逆転する場合が確認され、モデルの特性によって変わるものなのかな?と思っていたんですが更に突き詰めて検証してみると新たな発見がありました。

その発見とは着用者の荷重移動の癖によって足趾の使い方が違うんですが、それによってソール剛性の高まりやすさが変わるということ。
荷重移動の癖に関して詳しい説明は割愛しますが、スジオカボードは小趾球優位に荷重移動することを促すタイプのボードであり、スジャオカボードは母趾球優位に荷重移動することを促すタイプのボードです。
モデルが持つ足趾の使い方とボード側が持つ足趾の使い方と着用者の足趾の使い方の3つの組み合わせによってソール剛性の体感変化が変わる、ということが分かりました。

JA1を例に、スジオカボード/スジャオカボードそれぞれを入れて私(母趾球優位の荷重移動)が着用した場合を見てみると、

JA1⇒母趾球優位
スジオカボード⇒小趾球優位
私⇒母趾球優位
ソール剛性の高まりを感じるもののモデルとボード、ボードと私の間で荷重移動の特性が異なるためソール剛性が高まりにくい要因が生まれたことでスジャオカボードに比べてソール剛性の高まりを感じにくい。

JA1⇒母趾球優位
スジャオカボード⇒母趾球優位
私⇒母趾球優位
モデルとボード、ボードと私、モデルと私の全ての組み合わせで荷重移動の特性が合うためソール剛性の高まりを特に感じやすく快適にプレイできる。

ここで、私自身の荷重移動のタイプを小趾球優位の身体操作に切り替えてプレイしてみたところ、

JA1⇒母趾球優位
スジオカボード⇒小趾球優位
私⇒小趾球優位
母趾球優位の荷重移動で動いていた時に比べてソール剛性の高まりを感じますが、スジャオカボード程ではない感じ。

JA1⇒母趾球優位
スジャオカボード⇒母趾球優位
私⇒小趾球優位
ソール剛性の高まりを感じにくくなるとともに、モデル自体とも相性が悪いくなったのでは?と感じるほどソールを曲げにくくなる。

つまり、体感上のソール剛性をあげて快適に動きたければモデル⇔ボード、ボード⇔着用者、モデル⇔着用者の3つの特性の相性を見ていくことが重要であると言えそうです。
基本的なバッシュの機能適合においては着用者の特性とモデルの特性を合わせる事を第一に考えますが、ここにボードの特性の組み合わせも見ていく必要があるということです。

モデルと着用者の特性が合っていればボードの特性も合わせることでより体感上の機能向上を感じやすいですし、逆にモデルと着用者の特性が合っていない状態でボードとモデルの特性を合わせてしまうと特性の乖離がより顕著になってしまうことが今回の検証で分かりました。
モデルと着用者の特性が合っていなくてもボードを着用者側に合わせることで特性の乖離を縮小することができる、とも言えるのでデザインが好みだけど特性が合わない、なんてモデルにスジオカ/スジャオカボードを使用することで合わない程度を小さくできる可能性がありそうです。

足趾の使い方の優位による違いは下記ポストも参考にしてみてください。

【グリップ】
スジオカボードを入れるとグリップ力まで変化するの?と思われる方もいるかもしれませんが、物性的評価の部分で説明したようにボードによって圧力分散が起きるのでその結果ミッドソールを荷重する力がより面に広がります。
バッシュのグリップは荷重によってアウトソールが押し広げられることで発揮されるので圧力分散が起きるとアウトソールが押し広げられる力も分散しやすくなり、モデルによっては滑りやすくなると感じる場合があります。

私自身が検証するなかでは滑りやすくなったということは感じませんでしたが、スジャオカボードを使用している方からの相談で滑りやすくなったという人もいたので留意点としてレビューには記載しておきたいと思います。

反発性やソール剛性の体感変化が大きいのでグリップ力としての変化を感じにくいとは思いますが、ボードを入れることで滑りやすくなったと感じたなら「荷重が足りなくなったのかも」と頭の片隅で情報があるだけで対応の仕方も変わってくると思います。

4.耐久性

スジオカボード作製を検討している人で耐久性を気にされている人も多いと思います。

今回の検証でスジオカボードは30回以上、スジャオカボードは10回以上の使用。
1回2~3時間の使用で強度的にはドライブ動作やジャンプトレーニングなどの個人ワークアウトやゲーム形式の練習が中心。
シューティングレベルの軽い動きだけの使用ではありません。

そんな使用状況ですが、割れたり欠けたりといった不具合はなし。
使用に伴うシワなどは発生していますが、使用に差し支える現象は発生していません。

以前使用したスジャオカーボンや別樹脂材料で作られた試作スジオカボードは10回以内の使用で完全破断したり、屈曲部分に3cm以上の亀裂が入ったりしていますがPPで作られたスジオカボードは材料的にも屈曲に強いので耐久性は◎。

100㎏近い体重かつMP関節を強く屈曲させる動きが多い私が使用しての耐久なのでそれ以下の体格の人は安心して使用できると思います。
多少亀裂が入ったりしても使用自体は可能ですし、もし使用中に破断したとしてもインソールでしっかり抑えられているのでシューズ内で滑るといった不具合が起きる危険性も低いと思います。

とはいえ、樹脂材料である以上バッシュ同様消耗品なので屈曲部の折り目が強調されてペコペコに折れてしまったり破断した場合に買い替えが必要になるかと思います。
また、シューズフィッティングやサイジングが元々怪しい人の場合、屈曲部が適切でなかったり予測できない摩擦等の負荷が発生しボードの寿命が短い場合があるのでご注意ください。

5.使用にあたっての注意点

きちんとシューズに入れて使用すれば大きな注意点はないスジオカボードですが、樹脂材料(PP)である特性上、使用後は必ずシューズ内から取り出して乾燥させてください。

PPの劣化の原因は水分と日光(紫外線)なので、保管は風通しの良い日陰がマストです。

気温変化による劣化は少ないものの、車内放置などで60℃以上の環境に置かれないようにだけご注意ください。

6.お問い合せ、作製依頼に関して

ここまでのレビューを読んでスジオカボードを作ってみたい!と思った方はフットプロンプター関さんまでご連絡ください。
今回レビューしたのは1.6㎜厚のものですが、厚みの違うタイプもありますので要望に合わせてご相談いただければと思います。

フットプロンプター(関さん)SNSアカウント
X(旧Twitter):https://twitter.com/FootPrompter
Insutagram:https://www.instagram.com/footprompter_atoriseki/

使用にあたっての相談やモデルとの相性、着用者自信との機能適合に関する相談があればお気軽に私までご連絡ください。
ご相談は公式LINEまたは各種SNSのDMで受け付けています。

それでは、今回のレビューが皆さんのバスケライフに役立つことを祈って〆たいと思います。

サポートいただいた費用は今後の情報発信のために利用させていただきます。