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2011年11月20日『映画遍歴・その3』

【10年前の11月20日のコラム】

 三たび、映画。大学に入学した僕は念願の一人暮らしを始める。しかしビデオデッキは置けず、高校時代を彩ったテレビでの映画番組も、よりハマった柔道部生活にかき消され、一度は映画生活から遠ざかった。

 しかし、柔道は素晴らしく良かったのだが学業や私生活にはつまづくことばかりであった。

 自分とは何なのか、何故生きているのか考えはじめた。初めてのことだったろう。

 授業にはろくすっぽ出ず、図書館に入り浸り思索し、柔道により生きる。そんな毎日になるまでそんなに時間は掛からなかった。

 デッキが家にない僕は図書館の視聴覚室で館内にある映画のビデオを見る楽しみを発見した。見逃していた「ベルリン・天使の詩」が特に印象深い。

 まだこの頃は安く見られる映画館が市内にあったので昼間、よく繰り出した。大学生協でチケットを買うと気持~ち安くなるのも利用した。

 「ナイト・オン・ザ・プラネット」「夢の果てまでも」「ドアーズ」などが当時見た新作だ。一つの傾向と心情が分かる人には、分かって貰えるだろう。数は見られず高価でもないが、プレミアムな時間。

 これまでの人生、現在燃えていること、そして東京で始まりつつあった子供の頃憧れた世界の発展形。自分の中のマグマが音を立てて蠢いていた。

 映画によって自分が再構築されつつあった。自分が生まれ変わったかのように感じることのできる、手応えのある映画を僕は今もこよなく愛し、求めている。

初出:2011年11月20日のウォール

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