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The place you dream of is not frustrated act.13 PYRAMID featuring 福原みほ @BLUENOTE東京



PYRAMID、とはギター鳥山雄司さんピアノ&キーボード和泉宏隆さんドラムス神保彰さん、同じ高校に在籍した3人が時を経て2005年に組んだバンド。3人それぞれの活動がありひんぱんにライブ更にツアーを行っていない為、自分は彼等のライブを観損ねていた。6月にブルーノート東京で福原みほさんをゲストボーカルに招き、一日目はクロスオーバー系、二日R&B系でとライブを行うと告知ツイートを見たのは4月中旬。25日には両日共2ndステージは配信も決まり、動きづらい自分も含めた地方の人が喜んだ、その数日後だった。

26日、和泉さんが亡くなったと公式サイトで発表された。

両日それぞれゲストミュージシャンを迎えタイトルに『“ A Tribute to 和泉宏隆”』と添えられライブは行うと、その後告知が来て一日目の配信を見ようと、決めた。




6月3日夜7時、配信サイトに入り開演を待っているともう音が聞こえた。人の声、ざわめきや食器が触れ鳴る其れはSEかもしれないがまるで現地に、ブルーノートに居るような気分になり懐かしく音を聴く。東京はまだ未体験だが名古屋ブルーノートは別のバンドで何度か行ったが去年夏に閉じた。

開演時刻になるやブルーノート東京側が作ったのだろう洒落たオープニング映像が流れ出し、そのBGMと重なって声が聞こえてくる。人影が動く暗いステージが撮され、ライトが立つ人たちを照らし演奏が始まる。鳥山さんギター、神保さんのドラムス、サポートの須長さんのベース、マニピュレーターの加藤さんが出す“声” そして、ピアノはステージ向かって左の一角にキーボード、ローズピアノと共に有るが奏でる人の姿は無い、けど音が確かに聞こえ奏でている。ピアノの傍に立つ鳥山さんが視線を其方へと向けるタイミングでカメラが切り替わる。ピアノ越しからステージと客席を見るような撮し方、其処に座っている筈だったの人の視線をなぞるかのように。今は在りし日の氏の写真立てと花束が手向けられた場所から。後で音は過去の音源をマニピュレーターの加藤さんがピアノのスピーカーとサイドに置かれたローズは楽器そのものから出していた、とライブに直参した人のツイートで知ったがこの時チャットルームにいる誰もが言った。居る、と。戻ってきてピアノを奏でている、と。曲は和泉さんが書いた『TORNADO』、タイトル通りの激しいユニゾンから始まる。音そのものは荒れ狂ってはいない、研ぎ澄まされた演奏。静かに、熱い。終わりのピアノソロで鳥山さんがにっこりしたのが心に残った、始まり。

まずその鳥山さんがマイクを持ち、今回の趣旨と「強力な助っ人」とゲストの本田雅人さんをステージに呼び次の演奏へ。『GOLDEN LAND』ではピアノの音に寄り添うソプラノサックス。後奏、甘いギターソロで聞こえるピアノのバッキングはみたことが無いのに弾く姿が浮かぶ。『MOON GODDESS』はヴォイスに重なるギターが心地良い。アルトサックスを吹く本田さんの背を見るピアノからのカメラ。ラストは華やかに花が開くように音が広がった。

鳥山さんの楽器取り替えの間は本田さんと神保さんのトークに。本田さんがT-SQUAREにいた頃の話しから、3人に憧れやがて当時和泉さんも在籍していたバンドに加入し7年共に奏でたことも。互いのバンドで(以前は)キーボード担当がライブMC「司会」を務めていた事にも触れ、なんだか互いを謙遜し合いだし準備を終えた鳥山さんが「なんだこの会話」とツッコミ。本田さんは更にCASIOPEAが好きで神保さんの追っかけをしていた、都内でのライブに6~10回行き「サックス(のポジション)無いのに」けどサウンドが好き、と告白も。次の曲に行く前に本田さんが「もう一つだけいいですか」と話すは、悲しい気持ちになるけど和泉さんは楽しんでほしいと思っている、僕らも楽しんで演奏するから楽しんでほしい、と。チャット内もじんと気持ちが伝わる中奏でられるは『LOVE INFINITY』。ソロに入るや走るソプラノサックス。後半ピアノの“上”でギターの音が舞う。

ここからCROSSOVER NIGHTと冠した今夜のテーマ、フュージョンと名付けられる前にそう呼ばれた頃の音楽を取り上げるコーナーに。鳥山さん神保さんはフュージョンよりも言葉、名前としてはしっくりしていると言う中でクロスオーバーを「ボージョレヌーボー」と神保さんが例えた。-此れにあの方はどう返すか、は。自分的にはフュージョンは完成・確立されていて、その前史的なクロスオーバーは混沌としながらも手探りしていた感じかなと思った。『FEEL I MAKIN‘ LOVE 』ローズピアノの音にアルトが乗っかる。淡々と正確に刻まれるリズム、ローズがソロを取るとウッドベースがふわり絡んでゆきアルトへ。『CAPTAIN CARIBE』でベースはウッドからエレキに替わる。太い音が良き。カメラのスイッチングも気持ちよき。ローズの音の歯切れ良さも楽しげで。洗練された音で古き良き曲が生まれ変わった、そう感じた。

改めてメンバー紹介をしてゆきながら、今回フィーチャーするボーカリスト福原みほさんが呼ばれ神保さん作の『SEED OF HAPPINESS』を奏でる。華やかでいて可愛らしさを感じる声。ピアノのパートで寄り添うギター、そしてギターがソロを取る、バトンを受け取るみたいに。演奏後福原さんがPYRAMIDを不思議なバンドと話す。君付けで互いを呼び合うのがそう感じた理由、で当人たちは高校から当たり前で君付けをしていたそう。男の汗臭さというかありがちな空気とは違う感じは、今までの会話から確かに出ていると思った。次は福原さんのオリジナルで禍の最中に思う事を書いたという『SUN ON MY WINDS』。「世界のシロクロ」「覆る日常」と“今”を切り取った歌詞が刺さるが、アップテンポな曲調とパワフルな福原さんの声は挫けない意志の強さを感じる。ステージ背面のスライドには空と雲、跳ねる形をした光が撮されていた。再び福原さんがマイクを持ち神保さんの印象を語ると、神保さんも札幌の人から仕入れた福原さん情報を語る、という光景に鳥山さんが「端から見ているとこの2人面白い」と笑う。-それはきっと。

福原さんのオリジナルがもう一つ。シンガポールに住む人と作った歌でその人が親しく思っていた方に送ったラブソングを、この夜は和泉さんに捧げたいと『Ashes』。アコースティックギターと声だけで始まると共にスライドには雨粒が落ちる映像、まるで。やがてベースとドラムスが来て、空間をやさしさで包む声は祈りのよう。この曲の時、カメラはピアノ等を大きく撮したりそこに置かれた所からも撮ることはなかった。

再び本田さん登場、で福原さんと宮崎のジャズフェスで共演したのに吞んだコトしか憶えていない、という昔話に「以上こんなメンバーでお送りしてます」と締める鳥山さんに笑ってしまった。PYRAMIDの3人はそのクロスオーバー全盛期の只中にいた頃は出来なかった曲を「今だったら上手くいくんじゃね」という思いからバンドを始めた、という。そのひとつ、クルセダーズの『STREET LIFE』がラストナンバー。はじめはギターと声が重なり、ドラムスが引き金になり一斉に全ての音がこの場に放たれ、会場は華やかで喜びに満ちてゆく。-音源は過去のものでも、鳥山さんが話した気持ちと同じものが残っている音の中に在る、そう感じた。演奏に合わせチャットで掛け声を打つ人もいて、声出しが可能な頃は客席からそうしていたのかと知る。アルトソロを支える太いエレベ、笑顔で気持ちよく歌う福原さんは素敵だった。

アンコールの拍手が鳴り出し鳥山さんが指を一本客席の人たちに見せもう1曲やると告げると、神保さんがマイクを持つ。「和泉さんは稀有なメロディーメーカーだった」と彼を讃え「3人でPYRAMIDだったが此れからは2人と“PYRAMID Family”で、皆の力を借りながら今後も活動し続けたい」と宣言、決意が明かされ、客席からは拍手が起こりチャット内も喜びに沸いた。写真の中の和泉さんがはっきりと撮され奏でられるは『SUN GODDESS』 福原さんと本田さん、声とアルトの音が美しく絡み合う。ギターの心地良きカッティングに乗りアルトサックスが踊る。後奏のローズの音は自由に跳ねソロパートはアルトサックスへと渡る、託される。誰かの「イェーイ」と歓喜する声。ピアノを撮すカメラ。花が舞い降るようなライブの終わり。最後にメンバー紹介、そして写真をカメラが撮し、はける際に鳥山さんが写真立てを持って一緒にステージを去った時、配信も終わった。


初PYRAMIDのライブは心地良かったが、苦さも残った。其れは今後もずっと。



動画はアタマのが2020年12月配信分。ラストに付けたのは2021年6月、今回書いた配信。はった自分も色々きた。本編前にはったのは2018年に発売されたアルバムのプロモーションで撮られた動画の一つ、演奏ではなくアーティスト写真を撮る光景を。