第二代パピーパイオニア王決定戦カバレージ
By Tsutomu Date
はじめに
先日SNSでも発表させて頂きました通り、弊店パピー弥富店は大規模な盗難被害を被りました。
担当者は泣いていたとのことです…。
本記事は最後まで無料でご覧いただけますが、記事を読んで「面白かった」と感じた方や、パピー弥富店を応援頂ける方は記事の購入をいただけますと幸いです。
また、記念撮影のためマスクをされていない画像があります。
こちらは記事作成者が外すことを依頼した上での撮影となっています。
パイオニアの現環境について
第二代パピーパイオニア王決定戦は、2/4(日)に弥富市産業会館にて行われた。
王を志すプレイヤーは17名。
昨年11/17の『イクサラン:失われし洞窟』のリリースで、パイオニアはその環境を激変させた。
早々に発見された《地質鑑定士》や《クイントリウス・カンド》を中心とした「発見」デッキは、直後の11/25のPC名古屋では合わせてシェア率3割に及ぶ程であった。
しかし12/4の禁止制限告知で環境はまたその姿を変える。
《地質鑑定士/Geological Appraiser》と《大いなる創造者、カーン》の禁止により「発見」と「緑信心」は屋台骨を抜かれることとなった。
同時に《密輸人の回転翼機》の解禁により、可能性を見出したデッキも多い。
そして、本イベントのデッキの分布はというと…最多がラクドス、次点がイゼットフェニックスと既存の強力なアーキタイプ。
続くのは『イクサラン:失われし洞窟』からの《アマリア・べナヴィデス・アギーレ》を擁したアマリアコンボ(探検アブザン)、
そして新しい《アーティファクトの魂込め》こと《生命ある象形》を擁したイゼットエンソウル。
PC名古屋では「いかに発見に立ち向かうか」がデッキ構築のテーマであったが、現在は特定のデッキへの対策を極端に強いられる環境でなく、概ね良環境と言ってよさそうだ。
スイスラウンド5回戦を勝ち抜いたプレイヤー達のプロフィールと使用デッキについてはこちらを御覧いただきたい。
TOP8ブラケット
シングルイリミネーションの2ラウンドを終え迎える最終戦、第二代パピーパイオニア王に王手をかけるのは…
イヌイタカシ(ラクドスミッドレンジ)
と
山田優斗(アゾリウスコントロール)
だ。
イヌイタカシ
イヌイはスイスラウンドを3-0から2回のIDで抜け、決勝ラウンドは勿論2勝とここまで一度も土を付けられることなく無敗で上がってきた。
イヌイはスタンダード、パイオニア、モダン、レガシー、リミテッド…どんなフォーマットでもプレイする競技プレイヤーだ。
「暇なときなEDHもやりますよ。ヴィンテージは流石にやれませんけどね」
先日もパピーで行われたチャンピオンズカップ店舗予選(スタンダード)も突破している。
シーズンに合わせてプレイするフォーマットを変える競技プレイヤーは多いが、ここまでのオールラウンダーはなかなかいない。
マジックを骨の髄まで味わい尽くすイヌイだが、そのプレイ歴はどのようなものだろうか。
「一番最初に買ったのは『ウルザズ・サーガ』で、当時は持ってるカードで遊んでました。その後はスーサイドブラックを組んで大会に出たり…高校生の頃までやって一度やめたんですけど『ミラディンの傷跡』で復帰しました。あれは(最近閉店した)美嶋屋のプレリでしたね。
気付けばそれからずっと続けています。あれからもう十年以上ですか。なんてこった、思えば怖い話です」
今回のデッキ選択はラクドスだが、なぜそのような選択になったのだろうか。
「ボロスヒロイックを使っていた時期もありましたが…あちらは発見コンボが多かった頃が強かったですね。
白青に特に強くて《失せろ》を撃たれて嬉しいぐらい。
でもそういう、狙いすましたタイミングでしか使えないデッキですし、今のようなミッドレンジが多い環境だとだとふっとばされますね。
それ以外は基本ずっと…最初のチャンピオンズカップからラクドスを使っています。
一つのデッキをずっと回すのが好きですし、どのフォーマットでもミッドレンジが好きです」
ミッドレンジ好きというのは、彼のX(元twitter)のアカウント名(@G00D_STUFF)からも察することができる。
決勝戦の相手、山田優斗の白青コントロールについてはどのように考えているのか。
「白青コントロールはまだいい。
《魂剥ぎ》が勝ち上がってきたらやばかったですね。
カードの選択次第ではいけるんだけど、効くカードはあまり入れてない。
場合によっては大虐殺で…概ね負けるマッチアップだった」
山田優斗
一方、こちらはスイスラウンド8位の山田優斗。
つい先日の『第二代パピーレガシー王決定戦』でも活躍を見せてくれた。
惜しくも決勝戦にて一歩届かず優勝を逃したが、今回はなんとレガシーではないパイオニアで決勝まで勝ち上がってきた!
山田の経歴は前回のカバレージもご覧頂きたい。
「パピーなんで、そりゃあ来るっすよ、パピーなんで!」
とまずはインタビューにあたり店舗への愛を語ってくれた。
「パピーはアクセスがとにかくいい。岐阜の仲間と車で一緒に来れますしね」
主戦場はレガシーの印象があったが、本イベントはどのような意気込みで参加してくれたのだろうか。
「一番やってるのはレガシーですけど、次に好きなのはパイオニアですね。
パイオニアはフォーマットが出来た頃からずっとやってますよ。
聞くと、昨年の『The Last Sun2023』の参加権利もパイオニアの予選で取ったという。
「パイオニアは好きですが、むしろ…フロンティアがめっちゃ好きで、エスパードラゴンが好きでした。
パイオニアでもエスパーのようなデッキを使いたかったんですけどフェッチランドもないし、マナベースが良くなくてしばらくは黒単を使っていたかな」
「それから、パイオニアで白青コントロールが使えるようになったのはずっと後でしたね。
『イニストラード:真夜中の狩り』で《記憶の氾濫》が入って、『神河:輝ける世界』で《放浪皇》や魂力土地が入って、そのあたりから白青コンが使えるようになってきたかな」
白青コントロールをこよなく愛する山田だが、今回はどのような調整を行ってきたのだろうか。
「元々は白青ロータスを使っていて、今の環境的に厳しいと聞いてコントロールにしました。
実は今回、そこまで勝てるとは思ってなかったので、昨日の12時頃に組んだんですよね」
十分とは言えない準備にも関わらず、二度続けて決勝卓に座っているのは地力の高さ故だろう。
決勝の相手、イヌイのラクドスミッドレンジとの相性はどのように捕らえているのだろうか。
「五分五分ですかね。
《鏡割りの寓話》はまず通したくない。
後は相手のミシュランをうまく対処したいですね。
《廃墟の地》はありますが《冥途灯りの行進》がもう1枚欲しかった。ミシュランにはこれが強いです。
負けるときは大体《鏡割りの寓話》かミシュランなのでそこをうまく捌いて、1:1交換を繰り返した中盤以降がこちらの土俵になると思います。
ロングゲームになった後に《記憶の氾濫》で取り返していくことが理想です」
決勝のマッチアップについても、長年の対戦経験によって的確に分析できているようだ。
「ラクドスは苦手なデッキとは思っていません。ただ、今日は土地を沢山引きたい。土地だけはハンデスされませんからね」
互いに「悪くないマッチアップ」と考えているラクドスミッドレンジと白青コントロールの最終決戦となった。
その結果はいかに。
頂上に立った二人の戦いを見守ろう。
決勝戦
Game1
先手はイヌイ。キープした7枚のハンドは以下。
対白青コントロールには無駄カードと言っていい《致命的な一押し》2枚を含む7枚だが、2マナと序盤から動ける上にルーティング能力を有するカードが3枚。
対する山田もマリガンはせず、以下の7枚でスタートする。
「土地を沢山引きたい」の言葉に応えるかのように、しっかりと4ターン目まで土地をプレイし続けることを約束するハンド。
クリーチャーに対しては無防備だが、4ターン目以降《記憶の氾濫》で巻き返すことも可能。問題はそれまで軽量除去を引いてこれるか。
決勝戦のファーストアクションは、先手のイヌイの2ターン目に《密輸人の回転翼機》。
3ターン目には《太陽の執事長、インティ》召喚から即搭乗しアタックを仕掛ける。
そこでそれぞれの誘発型能力がスタックに乗るが…。
イヌイ「先にコプターから解決されるようにスタックに乗せます。インティの能力の対象はコプター。ドローして捨ててインティで追放、インティの能力でディスカードして追放、コプターに+1/+1カウンターを乗せます」
と、《密輸人の回転翼機》を強化しながら手札を高速で回転させていく。
この動きはラクドスが得た新たな武器…それをイヌイはいかんなく発揮していく。
ここまではイヌイの思惑通りだ。
山田は静かに土地のプレイを続け、対応は行わない。
続いて4ターン目のイヌイの《鏡割りの寓話》に《ドビンの拒否権》でカウンターするのが山田のファーストアクションとなった。
イヌイは構わず再び《太陽の執事長、インティ》を《密輸人の回転翼機》に搭乗させ、先程のムーブを繰り返す。
これで《密輸人の回転翼機》は既に5/5。
山田のデッキには《冥途灯りの行進》や《失せろ》、《一時的封鎖》のような対抗策があるはずだが、デッキは土地は与えてくれるものの、除去を与えてくれない。
山田は4枚目の土地をプレイし、またもそのままターンを返す。
除去が今まで撃たれる事のなかったイヌイとしては、
(流石に除去は引かずとも《放浪皇》ぐらいは引いているのではないか?)
と警戒していたに違いない。
返ってきたターン、イヌイはまずは4マナ立った山田に対し《強迫》で対処を迫る。
山田は対応することなく、即座にテーブルに6枚のカードを広げるが…広げた6枚には除去も、そして《放浪皇》も含まれていなかった。
山田「マジで何もないんですよ」
若干の驚きを見せつつイヌイは
イヌイ「じゃあ行くか」
と先程と同様に搭乗を絡めてアタックしていく。
4点、5点、そして6点…と毎ターンその脅威を増していく《密輸人の回転翼機》。
ここで山田のライフはここで5点まで減少する。この状況を対処できなければ次ターンで畳むしかない。
ここから満を持して山田はイヌイのエンドステップに《記憶の氾濫》をプレイ。
山田「やっと動ける…」
とこぼす山田は返ってきたターンのメインで待望の《放浪皇》をプレイし、即[-2]能力で《太陽の執事長、インティ》を除去する。
まずは若干のライフをゲインしつつ脅威をひとつ取り除いた。
だが、まだイヌイには十分に強化された《密輸人の回転翼機》と、先程プレイした《バグベアの居住地》が控えている。
《バグベアの居住地》をクリーチャー化して山田本体へアタック、生成されたゴブリントークンを《放浪皇》へと差し向けてこれを落とす。
山田は《廃墟の地》で《バグベアの居住地》を対処、《密輸人の回転翼機》は《サメ台風》サイクリングで生成したサメトークンでチャンプブロックして凌いでいくが…
それ以上抗うことができずに投了となった。
山田「負けですね、除去がなかった」
イヌイ 1-0 山田
山田「さあどうしようねえ…いいサイドないんだよなあ…だいぶ怪しいけどこれ入れとくか」
と思考を口に出すことで整理する山田に対し、まずは一勝、とイヌイは黙って目薬を差して気持ちを落ち着けているように見える。
互いのサイドのイン・アウトは以下。
重めのアクションとなるクリーチャーは対処されやすいと見たか、2マナの《暮影の騎士》と入れ替え、クリーチャー除去は手札破壊へと《勢団の銀行破り》へ。
山田は大きな変更は行わず、フィニッシャーとして巻き返しが図りやすい《威厳あるカラカル》を投入する。
Game2
先手は山田。
後がない初手の7枚は…。
土地が2枚と若干の不安は残るが、バランスよく対処ができるなかなかの初手をキープ。
対するイヌイの初手は…
色マナに不安が残るものの序盤から十分に主導権を握ることができるハンドで、こちらもキープ。
Game2は山田の《平地》プレイに対するイヌイの《思考囲い》から始まった。
イヌイ「メモさせてください」
とペンを取ると、即座に落としたのは《方程式の改変》。
山田は《島》でターンを返し、2マナを構えるが…。
イヌイは《変わり谷》プレイから《密輸人の回転翼機》を通す。
《思考囲い》を撃たれなければ順当に打ち消せたであろう一枚だ。
搭乗者として《変わり谷》も用意されている。
Game1ではここから《太陽の執事長、インティ》が通り《密輸人の回転翼機》とのコンボで大きくイヌイが押していった展開だが…
今度は山田が白青コントロールの本領を発揮していく。
初手から持っている《冥途灯りの行進》で《密輸人の回転翼機》を追放し、
続く《鏡割りの寓話》も《吸収》、
《黙示録、シェオルドレッド》に対しても《記憶の氾濫》からの《失せろ》でイヌイが盤面を作ることを許さない。
『ロングゲームになった後に《記憶の氾濫》で取り返していくことができれば』
を体現した形だ。
だが、イヌイも歴戦のプレイヤーだ。
サイドインした《真っ白》をプレイして《記憶の氾濫》分のアドバンテージを取り返し、フラッシュバックもさせないことに成功した。
続いて《太陽の執事長、インティ》を呼び込んで、《変わり谷》と合わせてまだまだ、とプレッシャーをかけていく。
2体のアタックに対して山田は《放浪皇》で応え、《太陽の執事長、インティ》を追放するが、《太陽の執事長、インティ》は山田が最も嫌う《鏡割りの寓話》をトップから呼び寄せ…キャストから着地を許してしまう。
山田「それめっちゃ強いんだよね」
更には《失せろ》で得た地図トークンから探索を行い、トップの《砕骨の巨人》を公開しながら
イヌイ「うーん、まあいいんじゃない?」
とさらなる脅威を見せつける。
受ける山田としてはなかなか盤面を制圧できない。
相棒の《孤児護り、カヒーラ》を手札に入れてそのままキャスト、《放浪皇》の[+1]能力で4/3警戒とした。
だがイヌイのコントロールするクリーチャーは探索で強化された3/3のゴブリントークンと《太陽の執事長、インティ》で強化された《変わり谷》。
相打ちは取れるが2つの脅威の両方を対処することができない。
イヌイは《鏡割りの寓話》Ⅱ章から《思考囲い》で《記憶の氾濫》を落としながら、3/3のゴブリントークンで《放浪皇》を打ち取る。
そして本ゲーム2体目となる《黙示録、シェオルドレッド》…サイドアウトして2枚しかデッキに入っていなかった強力過ぎるフィニッシャー…で山田に回答を迫る。
先程《思考囲い》で確認した山田の手札には除去はなかった。
つまり、フラッシュバックする《記憶の氾濫》次第と言ったところだが…。
想定どおり、イヌイのエンドに山田は《記憶の氾濫》をフラッシュバック、続いて自ターンのメインで更に4マナ払って《記憶の氾濫》。
都合、11枚のカードを掘り進めれば回答が手に入るのが順当なところだが、4枚のカードを見つめながらしばし考える山田。
山田「そうなるか…《至高の評決》だったら悩まないんですけどね」
イヌイ「そうですよね」
4枚の中に除去は含まれていた。
しかし…《一時的封鎖》ではゴブリントークンを除去することしかできない。
イヌイの《黙示録、シェオルドレッド》や《砕骨の巨人》、そしてそのコピー、
それらの圧倒的軍勢をレッドゾーンに送り出し…イヌイは山田の陣を蹂躙した。
イヌイ 2-0 山田
王の誕生
かくして、イヌイは第二代パイオニアパピー王の座を獲得した!
…いや、今やイヌイには「王」という名すら生ぬるい。
むしろ「魔王」という名がふさわしいように思える。
次回の『第三代パピーパイオニア王決定戦』は、魔王討伐のイベントとなるに違いない。
果たしてイヌイはまた決勝の場で鬼のような形相を見せてくれるのだろうか?
山田のリベンジはあるのか?
はたまた新たな挑戦者が現れるのか?
期待を胸に『第三代パピーパイオニア王決定戦』の開催を待とうではないか。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?