「見返したい名試合」2008年 最終戦F1ブラジルGP
最終戦ブラジルGP。昨年、キミ・ライコネンの逆転チャンピオンの舞台となったインテルラゴス・サーキット。
わずか1ポイント差でチャンピオンを逃したルイス・ハミルトンは、2008年もチャンピオン候補として最終戦に臨む。
ハミルトンとチャンピオンの座を争うのは、フェラーリのフェリペ・マッサ。
母国であるブラジルで、アイルトン・セナ以来のブラジル人ワールドチャンピオンを目指す。
最終戦時点でのポイントは、ハミルトン94ポイント、マッサ87ポイント。
2人のポイント差は、7ポイント。
奇しくも昨年のライコネンが逆転を見せたポイント差と同じだった。
ブラジルGP決勝。スタート前に雨が降り出す。路面が濡れる。
しかしすぐ雨は止み、難しい路面コンディションでレースは始まる。
ポールポジションからのスタートを決めたマッサは、そのままトップを走る。
4番手スタートのハミルトンも順位をキープ。
雨の止んだサーキットの路面は乾き、各車ドライタイヤへ交換する。
このままドライ状態でレースは終わるかと思われた終盤、
再び雨がサーキットを濡らす。
ほとんどの車はウェットタイヤに交換するも、トヨタの2台はドライタイヤで走り切れると判断したのか、そのままステイアウト。
チェッカーまで残り2周。
マッサは首位を独走。ハミルトンは5位。
このままいけば、ハミルトンのチャンピオンが決まる。
しかし、ハミルトンのペースは上がらない。
後ろにつけていたトロロッソのセバスチャン・ベッテルがハミルトンにオーバーテイクを仕掛ける。
ベッテルは5位を奪取。
ハミルトンは6位に後退した。
このままで行くと、マッサがチャンピオンになる。
歓喜するフェラーリのピット。マッサの家族たち。
最終ラップに入る。
マッサはトップでチェッカーを受けた。
久しぶりのブラジル人チャンピオンの誕生の瞬間まで、あと少し。
中継カメラはハミルトンを捉える。
ベッテルを抜けず、6位のままのハミルトンが映る。
そして最終コーナーに差し掛かる。
雨足は急に強まり、ドライタイヤでは走行が難しくなっていた。
ドライタイヤでステイアウトし、4位を走行していたトヨタのティモ・グロックはペースが急激に落ちていた。
ハミルトンの前に、スロー走行状態のグロックがいた。
最終コーナー、そのグロックをハミルトンが抜いていった。
ベッテルは4位に、そしてハミルトンは5位に上がる。
マクラーレンのピットが騒々しくなる。
5位に上がったということは、1ポイント差でハミルトンのチャンピオン。
そのままチェッカーを受け、ハミルトンが最終ラップの最終コーナーでチャンピオンの座を勝ち取った。
マッサは1ポイント差で負けた。
ポールポジション、ファステストラップ、優勝と、得意の母国GPで完勝を見せたものの、チャンピオンには届かなかった。
小説のような展開
当時このレースを見た時に、あまりの展開に鳥肌が立ったのを覚えている。
ウェット→ドライ→ウェットという難しいコンディション。
天候が絡むと荒れやすくなるのはレースの常だが、それがチャンピオン決定戦で絡んできたことが展開を予測不能にさせた。
マッサはすべてをやり尽くし、完全勝利を目指していた。
対するハミルトンは防戦一方という展開。
見ていた僕としても、「マッサは母国だし、このコース得意だし、限りなく有利。ハミルトンは今年もチャンピオンは厳しいだろうな」と思っていた。
最終ラップまでは。
最後の最後、大逆転を生む展開になるとは。
こんな筋書き、だれが思いつくだろう…
レースは最後まで何があるかわからない。
だから、最後まであきらめてはいけない。
それを目の当たりにしたレース、そしてシーズンだった。
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