選択(租税)・第1問

[第1問]
1(1)AがBに本件土地を引き渡したことについて、Aの課税関係はどうなるか。所得税法は、「別段の定め(所得税法(以下「所税」という。)36条1項)」がない限り、個人に帰属する経済的利益に課税する包括的所得概念を採用している。
 また、利子所得(所税23条)から雑所得(同法35条)までの10種所得に区別されるところ、AのBになした財産分与はいかなる所得になるか。
 問題となるのは、事業所得(同法27条1項)と、譲渡所得(同法33条1項)と、雑所得(同法35条)である。
 まず、本件土地は棚卸資産(同法2条1項16号)ではないため、本件土地の譲渡は事業所得(同法27条1項)とはいえない。
 次に、譲渡所得(同法33条1項)該当性を検討する。「資産」とは、有形無形に関わらない金銭評価可能な財産をいう。本件土地は、金銭評価可能な財産をいう。「譲渡」とは、譲渡所得がキャピタルゲイン課税という趣旨に鑑み、有償無償に関わらない財貨の移転をいう。財産分与は無償の財貨の移転であるものの、婚姻中の土地の資産の増加益を観念しうるため、「譲渡」といえる。
 もっとも、Aは本件土地を譲渡した側で対価を得ていないことから、経済的利益を有するのか
 この点、財産分与は分与義務を免れるものであり、免れた分与について「経済的な利益(同法36条1項)」といえる。つまり、時価5000万円について財産分与義務消滅としての経済的利益といえる。
 そして、本件土地は取得日から5年が経過しており、長期譲渡所得(同法22条2項2号、同法33条3項2号)により、2分の1の2500万円が総収入金額となる。
 譲渡所得は、取得費及び譲渡費用、特別控除額(同法33条4項)を控除した額をいう。本件では4000万円が取得費として控除される。
 したがって、Aの平成18年分の譲渡所得は、2500万円から取得費4000万円と特別控除額50万円を控除した額となる。
(2)Bが本件土地を譲渡したことについて、いかなる所得となるか。10種所得のうち、問題となるのは、事業所得(同法27条1項)、譲渡所得(同法33条1項)、雑所得(同法35条)である。
 事業所得該当性について、本件土地は棚卸資産(同法2条1項16号)ではないため、本件土地の譲渡は事業所得(同法27条1項)とはいえない。
次に、譲渡所得(同法33条1項)該当性を検討する。要件及び計算方法は上述のとおりである。本件土地は金銭評価可能な財産であり「資産」である。Cへの対価を伴う譲渡は、「譲渡」にあたる。
 Bが時価より高い5500万円で譲渡したことについて問題になるが、高額譲渡であっても、その分も含めて、譲渡所得となる。
 取得費について、Aが本件土地を取得した際の取得費の4000万円も算入できるか問題となるものの、取得したのは夫婦婚姻中であり、4000万円についても取得費にあたる。
 したがって、5500万円から取得費4000万円から特別控除額50万円を控除した額が、Bの、平成20年分の譲渡所得となる。
2 必要経費(所税37条1項)とは「別段の定め」があるものを除き、売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(債務の確定しないものを除く。)の額をいう。
 以上により、必要経費算入されるための要件は、①事業関連要件、②直接関連要件、③債務確定要件をいう。
 まず、Cがはり師及びきゅう師の国家資格取得のための学費から検討する。これは、平成27年分の事業所得の必要経費算入されるか。①はり師きゅう師の国家資格取得は、Cの事業に関連し、②その学費は資格取得という事業に寄与するものに直接関連し、③学費として債務が確定している。
 したがって、はり師きゅう師の資格取得のための学費は、平成27年分の事業所得の必要経費(同法37条1項)として算入される。
 次に、生花の専門学校の学費について、平成26年分の事業所得の必要経費算入されるか。①生花の技術については、Cの事業における売上の一部を向上させるものであったが、一部に過ぎず、事業に関連しているとまでは認められない。
 したがって、はり師きゅう師の学費は、平成27年分の事業所得の必要経費として算入されない。
3.まず、本件建物による賃料(以下「本件賃料」という。)は、何所得にあたるか。10種所得のうち、事業所得(所税27条1項)、不動産所得(同法26条1項)、雑所得(35条1項)が問題になる。
 事業所得該当性を検討する。事業所得は、自己の計算危険において独立して、反復継続し、社会的地位として認められる業務により生ずる所得である。本件土地をCを賃貸していたものの、それは社会的に業務と認められる態様ではなかった。したがって、事業所得とはいえない。
 次に、不動産所得とは、不動産の上に存する権利等の貸付けによる所得をいう。本件土地の貸付は、「不動産の上に存する権利」であるCは本件土地の所有権について、それに基づいて借主に賃貸しており「貸付け」にあたり、不動産所得(同法26条1項)にあたる。
 もっとも、不動産所得は、事業に係る不動産所得と、業務に係る不動産所得に区別される。本件土地は、部屋10室を備えており、事業に係る不動産所得といえる。
 では、令和2年分の本件賃料について、誰に帰属するか。所得税法における、所得の帰属主体は居住者である(同法5条1項)。そして、本件賃料はD名義の振込みとなっていることから、名義人Dについて全て帰属するように思える。しかし、相続人はDとEであり、Eも法定相続分を有する共有者である。実質所得者課税(同法12条)の適用が問題となる。上述のとおり、本件賃料は、事業に係る不動産所得であり「事業」から生ずる収益といえる。そして、Eの持分について、その収益について、Dは代わりに受領する「名義人」として、本来はDが利益を享受せず、実際に収益を得るのはEである。
 したがって、所税12条の効果として、Dが受領した令和2年分の本件賃料の、Eの持分については、Eに帰属する。
(2433文字。)


再現度85%

本番における作成時間1時間30分。
財産分与は譲渡所得というイメージはあったが、財産分与する側の課税関係に悩んだ。財産分与義務の消滅という言葉を思い出してよかった。
高額譲渡の処理はよくわからなかった。
生花の専門学校の学費を①事業〜②直接関連〜のどちらで切ったかは忘れてしまった。
問3の処理は不明。どうすればよかったのか。

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