選択(租税)・第2問

1(1)A社がRに本件土地を譲渡する行為につき令和元年度のA社における益金算入されるか。益金とは「別段の定め(法人税法(以下「法税」22条2項))」があるものを除き、資産の販売、有償または無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものをいう。
 Rへの本件土地の9000万円で譲渡した場合、「有償による資産の譲渡(法税22条2項)」にあたり、時価の9000万円が益金となる。
 損金(法税22条3項)とは「別段の定め」があるものを除き、①原価(同項1号)、②費用(同項2号)、③損失(同項3号)をいう。
 原価には取得費が含まれ、A社は3000万円で取得しており、3000万円について原価として令和元年度においてA社に損金算入される(法税22条3項1号)。
(2)AB取引について、A社の令和元年度の所得について、まず益金について問題となる。A社はBに時価9000万円の本件土地を7000万円で低額譲渡している。7000万円分については、「有償による資産の譲渡(法税22条2項)」として益金算入される。
時価との差額の2000万円について、判例は「低額譲渡の場合には時価との差額については、法税22条2項が「無償による資産の譲渡」を益金算入していることの均衡から、低額譲渡の差額も益金算入する。また、それは法税37条8項が実質的に贈与したと認められる額を寄付金とする規定と整合する。(南西通商事件)」としている。
したがって、差額の2000万円についても「無償による資産の譲渡」として益金算入される(法税22条2項)。
 損金については、上述のとおりであるが、本件土地の取得費は3000万円であり、3000万円が原価として損金算入される(同法22条3項)。また、低額譲渡の時価との差額の2000万円について、「実質的に贈与…したと認められる(同法37条8項)」として、寄付金限度額の範囲において、損金算入される(同法37条1項、同法37条8項)。
 したがって、原価3000万円(及び2000万円のうち損金算入限度額の範囲内の金額)が令和元年度のA社において、損金算入される。
(3)本件A申告が「隠蔽・仮装(国税通則法68条1項)」にあたるか。隠蔽・仮装につき、最判平成7年4月28日判決(以下「本判決」)によれば、積極的な行為まで無い場合も、①過少申告の意図、②意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、③その意図に基づく過少申告をした場合には「隠蔽」・「仮装」といえる。
 本件A申告はたしかに、AB取引等をしたのみで、隠蔽仮装の積極的行為は無い。しかし、Aは①当初からRに直接に本件土地を売却することの税負担を免れるため、本件AB取引をはじめとした、本件各取引を計画したものであり、過少申告の意図を有する。②また、その意図は本件覚書等に外部からうかがい得る形で現れており、特段の行動がある。③そして、それに基づく過少申告をしている。
 したがって、本件A申告は隠蔽・仮装(国税通則法68条1項)にあたる。
(4)A社とP社の間に、何ら関係性のないB社を介在させ、本件土地の適正な時価が7000万円であると見せかけたことについて、隠蔽・仮装にあたる。
 ①まず、本件土地が時価よりも低額であることを装えば時価について課税される譲渡所得について税負担を免れることになり過少申告の意図があり、②また、AらがBを介在させたことは、本件覚書等、本件各取引の一連の経緯から明らかであり、③Aは、それに基づく過少申告をしている。
2.AB取引の、B社の益金について問題となる。B社は本件土地を7000円で購入している。これは有償による資産の譲受けであるが、益金の類型(法税22条2項)に無く、益金とはならない。
 もっとも、時価との差額の低額譲渡であることは上述したとおりであるが、譲渡人であるA社にとって差額は「無償による資産の譲渡」となるところ、譲受人たるB社にとっては、「無償による資産の譲受け」となり時価との差額2000万円は益金算入される。
 損金について、7000万円をA社に支払っており、7000万円は取得費であり、取得費も原価(法税22条3条1号)に含み、原価として損金算入される(同条3項柱書)。
 BP取引の、B社の益金について、B社は本件土地を7500万円で売却している。これは、時価9000万円からすれば低額譲渡となる。上述のとおり処理することになり、7500万円については、「有償による資産の譲渡」となり益金算入される。差額の1500万円については、「無償による資産の譲渡」として益金算入される。
 損金については、B社の取得費は7000万円であり、原価(同法22条3条1号)として損金算入される。
 時価との差額1500万円については、「実質的に贈与した額(同法37条8項)」とされ、寄付金限度額の範囲内で損金算入される(同法37条1項、8項)。
 したがって、BP取引の損金については、原価7000万円(及び差額1500万円については寄付金限度の範囲内の金額)が損金算入される。
3 本件リベートはCの令和2年分の、いかなる所得となるか。
 まず、事業所得(所得税法(以下「所税」という)34条1項)から検討する。事業所得とは、自己の危険と計算において継続し、社会的地位に基づく業務から生ずる所得である。Cが得たリベートは、たしかに、Cの代表を務めるB社の各取引に関する業務から生じる所得に思える。しかし、本件各取引は、A社が画策した過少申告を意図した一連の取り組みであり、リベートはそれらの感謝として、P社からCに交付されたものである。「業務」から発生したとはいえない。したがって、事業所得(同法27条1項)とはいえない。
 次に、一時所得(同法34条1項)について、①雑所得以外の他の所得に当たらないこと②非継続性要件と③非労務対価性要件が必要となる。
 まず、①上述のとおり事業所得にあたらず、他の所得にあたらないと考えられる。次に、②上述したとおり、本件リベートは、何等、継続する業務としての対価・報酬ではなく非継続性要件をみたす。さらに、③本件リベートは、P社がお礼としてCに交付したものであり、一時的・偶発的なものであり、労務対価性を有しない。非労務対価性要件をみたす。
 したがって、本件リベートは、Cの令和2年分の一時所得(所税34条1項)として課税される。(2520文字。)

再現度:90%

作成:1時間30分。終了と同時に終わる感じだった。ただし、最後の問題が、所得分類問題だったので、結論は何でもいいだろう、と思い、最悪雑に書いてもいいと思っており時間不足の懸念はなかった。
 隠蔽・仮装の思考問題は不明。特に1(4)は書き筋のっていない気がする。
他は無難ですかね。問題数多い・・・。

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