【映画感想】「枯葉」ーカウリスマキのチャップリンに対する返歌と感じた (ネタバレあり)
「枯葉」を見たのは、昨年末だ。
迷わず、自分の中の昨年度NO1の映画とした。
無表情な中の豊饒な感情のやり取り。細部までに凝りに凝った色のデザイン。小津を敬愛するカウリスマキらしい役者たちの眼差しのやりとり。
たまに入るラジオのウクライナの戦況、音楽のセンス。
何をとっても、久しぶりのカウリスマキに楽しみ、往年の『君の名は』のような、男女のすれ違いの妙も感じ、なんと素敵な映画だこと・・と思った。
しかし、白眉は、なんといってもラストシーン。
(ここからはネタバレします)
男「犬の名前は?」
女「チャップリン」
…ここで、僕は不覚にも急に涙があふれて止まらなくなる・・。
二人は、カメラ手前から奥のほうに歩いていく。そして、映画は終わる…。
・・・チャップリンの名言のひとつ
「人生は、クローズアップで見ると悲劇だが、俯瞰でみると喜劇である」
という名言を、映画のラストに絡ませた、と僕は読み取った…。
確かに、二人の人生は過酷なもので、なんらいいことはない。
おまけに、すれ違ってばかりで、男は事故にも遭う。
だけれども、ようやく会う事が出来、ささやかな幸福を得ることが出来るかも知れない・・・。
それを暗示するかのように、カメラ前に後ろ姿で歩いていた二人は、
犬の名前を聞き・答える会話があったあと、遠景に去っていくのだ。
つまり、「チャップリン」という犬の名前の告白を前後して、
ふたりはクローズアップからロングショット(≒俯瞰)へと、なるのだ。
今までの「不幸」が「幸福」になればという、二人の願いを示すように。
そして、観客のそうであって欲しいという「願望」をも象徴するように…。
チャップリンを敬愛するというカウリスマキが、極上のラストシーンを作り上げたと感じた・・。
僕は、「チャップリン」というセリフを聞いた瞬間から、これを感じた。
感情が奔流のようにほとばしった・・・。
見事なラストだと思った・・。
最近の映画でこれほどの完成度を示したラストシーンをなかなかに思い出せないほどである。
お見事!!カウリスマキさん。