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嬉しい風

なんとも嬉しい出来事だったので、
忘れないように記す。

四年ぶりに盛大に行われた氏神様の例大祭。
我々夫婦も地域の一員として祭りの賑わいの一端を担い責務を果たし安堵した。

思うほどには疲れも出ず、日常にペースを戻すためにバタバタ一日の用事をこなし、里子の少年が塾に行ってる間に夕食を摂りながら夫と雑談をしていると…私の携帯に着信。
関東に長期研修に行っている息子からだった。

なんか用事かな?

息子が引っ越して行ってから、ちょっとしたやりとりや事務連絡はLINEでしているが電話がかかる事はあまりない。

「埼玉(私の弟の居住地)の法事はいつだったっけ?」
「あとは、生存確認も兼ねて、たまには電話してみたわ」
…と息子。

生存確認されるほど年老いちゃいないが、口実としては、まるで私が言いそうな事だなと内心可笑しかった。口調は似るもんだ。

私の実家は両親も亡くなっているため実質既に無い。そのため弟の居住地のお寺で年忌法要を行い我が家もほぼ毎回参列している。
祭りではないが、こちらも何年かぶりに計画してくれているので、その際に我々と息子とでお邪魔する事になった。その日程の確認を息子はしたかった?らしい。

電話はそれから約20〜30分間、お互い近況を色々訊いたり答えたり。文字では伝わりきれない事を改めて報告しあった。
スマホをスピーカーにして夫も加わり三人で話した。

正直、最近は息子に彼女も出来て、そちらの方ばかりに気持ちが向き、おそらく家族の事は居て当たり前位の存在。それも自律している証しだからな〜位に思っていた。男の子だし、寧ろ、そんなそっけなさも成長の内だから寂しいとも別に思ってなかった。

ところがこの電話は、驚く位にまた違う意味での大人な印象。

えらい大人になったね〜と、冗談ぽく私は照れ隠しした。我ながらかわいい。

聞けば研修生活も寮生活も至って順調。
もう二ヶ月も経って早いな〜と感じているらしい。

そして、地元の空気が懐かしい。
今すぐにでも帰って空気が吸いたいと。

それってまさしく、普通にホームシックじゃ無いのかね?とまたからかったが、真面目に、都会と、育った地元の違いを肌で感じ得た率直な気持ちだったらしい。

息子は貴重な経験をさせて貰っている。
仕事とは言え有難い。
図らずも地元を離れる経験をして、改めて外側から自分のアイデンティティや家族を思うきっかけを頂いた。

この電話ではっきりと息子の成長を確認出来た。

「身体に気をつけて」と息子から。
「電話をありがとう」と私から。

祭りが過ぎた静かな秋の日、
この家にふわりと明るく嬉しい風が吹いた。

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