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美波町を通して学んだこと

1.地方創生ってなんだろう

実は美波町のプロジェクトが始まる前は地方創生は過疎地域の人にしか関係のないことで、”地方創生”に興味のある人が関わるものだという印象があった。地方創生と調べても、曖昧な言葉で結局地方創生の実態はつかめなかった。

少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めをかけるとともに、東京圏への人口の過度の集中を是正し、それぞれの地域で住みよい環境を確保して、将来にわたって活力ある日本社会を維持していくことを目指すものです。 
北陸財務局HP 地方創生って?
(http://hokuriku.mof.go.jp/soumu/pagehokurikuhp013000091.html)

 しかし、教授から地方創生の定義を聞いてからは私の中で地方創生に対するイメージがガラッと変わった。これから始まる地方創生のプロジェクトにワクワクしたきっかけであった。

”地方の問題=都市の問題”だ。ヒトはお金と経済のある中心部に移る。地方の人間が都市部に集まってきた結果、過疎問題は起こるのだ。これは国内でのグローバリゼーションで、地球的に産業資本主義が進歩した国では共通で抱える問題である。日本は産業資本主義社会として、まだ経験してない国のロールモデルとなり得る。
だからこそこの国で起こっている現象をミクロで考えることをしよう。

地方創生について考えることが都市部のこと、そして世界規模で考えることにつながることはあまり知られていないのではないだろうか。

こうして地方創生に対する気持ちが大きく変わった中で、始まったのが美波町のプロジェクトである。

2.徳島県美波町のフィールドワーク

町長を始め、美波町の方々とZoomでつながり全6回に渡ってお話を聞いてきた。

ゲストは様々で「波乗りオフィスへようこそ」の映画監督、漁師でもあり造船業を営む方、町会の方々などなど…。

美波町の”売り”を探してきた。どんな特徴があってどのような点をアピールしているのか。

・ウミガメ・サテライトオフィス・古民家をリノベーションしたカフェ

美波町には「にぎやかそ」にぎやか+過疎というユニークなコンセプトがある。HPにもあるように「にぎやか」としている点は以上の3点などであった。

しかし、GoogleMapを用いて美波町を歩いたり、実際に町会の方が撮ってくださったビデオを基に美波町を覗いてきたが、正直に言うと閑散としている印象を受けた。私からすると「にぎやか」の印象に残るものがなかったのだ。

そこで7月の中間報告では美波町の「にぎやか」とわたしたち(都心部)の「にぎやか」にギャップがあると考え、私たちから見てもっと活かすことができると感じる美波町の資源、そしてその活用例を挙げた。

3.過疎地域のオリジナリティ 北海道下川町を引用して

この発表を終えて1つもやもやしていたことがあった。それはにぎやかだけ推し進めては「にぎやかそ」では無くなることだ。美波町らしい、美波町にしかないコンセプトである「にぎやかそ」が崩れてしまうのではないか。そんな考えがよぎった。人口減少は大きな問題ではあるが、美波町の過疎を生かした開発が必要なのではないか。人口減少・過疎化を悲観するのではなく、むしろ現状を前向きにとらえたコンセプトこれを活かすことこそが、美波町のオリジナリティを確立する可能性につながるのではないかと考えた。

その例の一つがサテライトオフィスだと考える。

中心都市から離れている美波町は、利便性という面では欠点かもしれないが、逆からみれば手つかずの自然が残されていて、田舎暮らしを満喫できるという長所にもなる。

東京でIT企業を営んでいた同町出身者が町内にラボを設置(13年には本社も移転)したことを皮切りに、サテライトオフィスへの問い合わせが増加。セキュリティやクラウド、ソフトウエア開発を行うIT企業を中心に、2019年4月現在で県内最多の19企業が美波町にサテライトオフィスを開設している。

そして徳島県は北海道に次いでサテライトオフィスの誘致数は全国2位である。徳島県の「にぎやか」にサテライトオフィスが入っているのも納得だ。

地方型サテライトオフィス開設数

引用:総務省Webサイトより(https://www.soumu.go.jp/main_content/000713091.pdf)

北海道のサテライトオフィスで注目したのが下川町である。

下川町は人口は約3400人と美波町より少ない町である。下川町と聞いてもピンとくるものがない様に、下川町の9割が森に囲まれている。しかし森しかないという欠点ではなく、9割が森であることを活かし、豊富な森林資源、バイオマスを中心としたエネルギー産業などの地域資源を活かしつつ、ソーシャルビジネスなど地域課題解決をビジネスとする企業の誘致を目指している。小規模な地域ならではの意思決定の早さを売りにしている。

この地方創生において重要な視点は「逆から見れば」であると感じた。何もないかもしれません。でも「逆に何もないのがいいターゲットはいないだろうか。」という視点。また、何もないです。と言っている過疎地域に対し、「いやいや、逆に(第三者のわたしたちから)見れば、これってすごく魅力的ですよ。」という逆の視点も必要であると感じる。

サテライトオフィスは企業をターゲットにしているものであるが、オンラインで授業を受けることができる学生やリモートワークが導入されている会社が増えていることで個人にもターゲットを絞ることができるのではないかと考える。周りに誘惑のない環境で勉強ができることを売りに受験生や資格取得のために勉強している人向けのプラン、都心部のリモートワークで疲れ切った社会人などにとって、このコロナ禍で新しいライフスタイルが定着しつつあるからこそ、「何もない」地方に価値が出てくるのではないだろうか。

4.おわりに

都心と同じような人の集め方では結局中心部にヒトは流れてくるので意味がない。地方に行かなければ経験できない要素を見出すことが地方創生において重要な観点であるということが分かった。今回美波町という町を見ることで見えてきた地方創生の姿があった。地方創生を考えることが単に過疎地域を救うことではないことを多くの人々に知ってもらいたい。そして私たちが地方に関わることの出来るきっかけがもっと増えていくことを期待する。

最後になりますが今回のプロジェクトに関わってくださった皆さま、そして美波町の皆さまの多大なるご協力に感謝いたします。

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