「頭の形がいびつなんですが大丈夫ですか?」
「頭の形がいびつなんですが大丈夫ですか?」
という質問は乳児健診などでしばしば相談されることです。
研修医の時に教わったのは、「頭の形がいびつでも脳の発達に問題ないし、年齢があがれば目立たなくなるので大丈夫」というものでした。
私も最初の頃は「様子をみてください」と説明していたのですが、自分も人の親になって「親の立場では赤ちゃんにどうしてあげたい?」と自問自答しているうちに、だんだんと認識がかわってきました。
頭の形がいびつな時、多くは向き癖などの体勢が原因となっていて頭位性斜頭とよばれます。
(まれに先天的に頭蓋骨の発育が阻害されている頭蓋縫合早期癒合症もあります)
仰向け寝などで片側の後頭部に外圧が加わることで、後頭部が図のように平たくなりなります。
近年、乳児突然死症候群の予防のために仰向けが推奨されるようになり、
乳児突然死症候群は20%減少しましたが、頭位性斜頭の子は6倍になったといわれます。
もちろん乳児突然死症候群の予防が第一に優先されるところですが、仰向け寝によってこのような影響が出ているということは意外でした。
一般的には頭の形がいびつであっても脳の発達には問題ないといわれていますが、
大きくなってから頭の形をコンプレックスに感じるかもしれないし、
帽子や眼鏡など頭につけるものが限られてしまう可能性もあります。
(まっすぐかぶれないとか、長さの調整が必要になるとか。)
そういったことから、医学的にというより親だったらどうしてあげたいかということに立ち返ると、予防法があるならしておきたいし、治療法についても知りたいと思うのが正直なところです。
頭位性斜頭については一部の施設でヘルメットによる形状誘導が行われています。
ヘルメットをかぶって平坦な部分にスキマを確保して、圧がかからないようにする治療です。
ただしヘルメットを作成しなければいけなくて、自費診療になるので費用がかかります。
(詳しくはわかりませんが30-50万円くらい?)
あと定期的な通院が必要なのと、夏などは汗でかぶれたりといったこともあるので、
機能的に問題がない患者さんに、そういった治療を積極的にすすめるかというと、悩むところです。
ただ「知ってたら治療を受けたかった」というのは避けたいところですので、今は選択肢の一つとしてご紹介しています。
治療をするかどうかは、いびつさの程度であったり保護者の意向にもよるので十分相談していただいたうえでしていただきますが、
向き癖に対する予防法は今から簡単に始めることができるのでいくつか紹介します。
<向き癖の対策例>
① 横抱きをいつもと逆の手でしてみる。
利き手により、自分がやりやすい抱っこの方法はあると思います。私の場合は図のように赤ちゃんの頭が左側がやりやすい。
逆だと違和感があると思いますが、あえて逆の手で抱っこしてみてください。
② 興味あるおもちゃを逆側に置く
いつも右を向いているなら左側に、いつも左を向いているなら右側におもちゃを置いてそちらを向くようにうながします。
③ 添い寝をいつもと逆にする
赤ちゃんが最も興味があるのは親かもしれません。興味ある人のほうを向きますから、いつもと逆側に添い寝してみます。
④ バスタオルなどで赤ちゃんの向きを調整する
右の向き癖がある時は右側に丸めたバスタオルなどで「堤防」をつくって、左側を向きやすいようにします。
このときの「堤防」が柔らかいクッション等ですと、顔がうもれて呼吸ができなくなる可能性があるので注意してください。
そのほかラッコケアというものもあります。
これは親のお腹の上で赤ちゃんを腹ばいに載せる姿勢を1日5分くらいするもので、6ヶ月まで行うことが推奨されています。後頭部に外力が加わらないので斜頭の予防になるだけでなく、親子の遊びとしても楽しいものです。
私は頭の形については専門外ですので、治療の詳細や頭蓋縫合早期癒合症との区別などについて専門の先生にお譲りするとします。
ただ小児科で診療していますと、頭の形のことを気にしてらっしゃる保護者の方は多く、一つの情報提供としてブログを書きました。
頭の形については一部の脳神経外科で診療が行われています。
「頭蓋変形外来」などで調べていただくとお近くの施設がわかります。
治療について考えてらっしゃる方はまずかかりつけの小児科などから「頭蓋変形外来」へ紹介していただくようご相談ください。
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