怠け癖

子どもの頃から両親は共働きで、会う時間がなかった。
ずーっと両親に飢えていた。

あれは何歳だったんだろう。
まだ小学校にも行ってないくらい小さい頃、
ある夜、どうしても母に会いたくて、家にいる祖母に泣きついた。
会いたい会いたいとごねる私を見かねて、祖母は私をおんぶして、母の職場まで連れて行ってくれた。

職場に着いて、母を見つけた私は満面の笑みで、母の元へ駆け寄った。
母は「おばあちゃんに迷惑かけたら駄目でしょう!」と私を叱った。
その後、ちゃんと母は私を抱きかかえてくれたけど。

やっと母に会えたのに、怒られてショックだった。


小学校の初めての夏休み、宿題をしなかった。
ほぼ全て。

普段の宿題はやってたけど、夏休みの宿題はしたくなかった。
100マス計算を1冊やるのが辛かったのと、絵日記を書くのが面倒だった。だってどこにも出かけたりしないし。ネタがない。

母に宿題してないのがバレて、夏休み最終日に泣かされた。泣きながら100マス計算をやった。怖かった。


母は怒ると怖い。

習い事が辛くて行きたくなくてサボってたけど、サボったのがバレる度に泣かされた。

怖かった。

そのうち、夏休みの宿題も7月中に終わらせるような子になったし、サボるのは悪いことだと思って頑張って習い事にも行くようになった。

母に怒られたくない。怖いから。

母に嫌われたくなかった。

駄目な私では、母は愛してくれない。

そう思ったから。


父は優しいが、子育ての面倒さからは距離を置いていたのだと思う。

父が私にいつも優しいのは、私を怒らなくてはならない場面を避けてきたからだ。

私を怒るのは、母もしくは祖母の仕事だった。


父にも母にも、愛されたかった。


いい子でいなきゃ、愛されない。


いつからか、そう感じて生きるようになった。


学校でももちろんいい子。
学校での行いや成績が、両親への信頼に響くから。

学校というのもなかなか面倒な場所で、
やるべきことをやってくれる子が先生も生徒も必要なんだよね。
その子がしっかりやってくれれば、
他の生徒は面倒な何とか委員をしなくてすむし、
先生も仕事が捌けて助かる。

家でもいい子、学校でもいい子。

みんなみんな、いい子な私に頼る。
いい子な私を、評価する。


だんだん腹立ってきて、
だんだん疲れてきて、


中学卒業した時、


あぁ、もう一生頑張らずに済む人生にしよ。
もう私、頑張らなくていいよね。
何もしなくていいよね。甘えていいよね。
ってか甘えさせてよ。

もう頑張れないよ。

って思った。


頑張りたくないからサボるじゃん。

そしたらさ、

もう頑張れないよって思う私と、
頑張らなかったら愛されないよって私が、

めちゃくちゃ喧嘩するわけ。


最初は周りも

頑張ってきたんだから休みなよ

とか言ってくれるけど、

休んでばかりいるとそのうち

いつまで怠けてんだよ
あんたは甘すぎるよ
そんなんじゃ生きていけないよ


とか言うわけよ。


は?


もう私はここまでの人生で一生分頑張りましたけど?
あんたらがやりたくなった分まで頑張りましたけど?
どの立場でそんな言葉言ってくるだよふざけんなよ。


私を頑張れなくさせたのは他でもないお前らだろうが。

何でお前らが順調な人生歩んで

こっちは取り返しつかないくらい躓いてんだよ。

ふざけんなよ。


何でお前らには価値があって、
私には価値がない、

そんな考え方しかできない私にしたのは、

お前たち環境だろうがよ。


ふざけんなよ。


私の人生かえせよ。


誰か何とかしろよ私のこの人生を。

私にも、私は頑張ろうが頑張らまいが愛される人間だと、存在していいんだと、

誰か思わせてくれよ。

お前ら散々私をこきつかったくせに、

散々寂しい思いしかさせてこなかったくせに、

誰も何もしてくれねえのかよ。

ふざけんなよな。


ふざけんなよな!!!

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