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段階の設計で、変化を飼い馴らす

 先日、とある場で受けた質問の話。

仮説検証をプロダクトオーナーと一緒にやりたいと思っても受け入れてもらえない場合、効果的な交渉方法はありますか?

 まず、「交渉方法」この言葉から分かることがある。ともに考えたり、ともに作っていこうという中で「交渉」という言葉が出てくるのに違和感がある。なぜ、より筋の良いプロダクト作りを行おうという文脈で、交渉が必要なのだろう? 本当に交渉が必要な状況ならば、その場で「われわれはなぜここにいるのか」という問いに向き合うことから始めたい。

 プロダクト作りで、仮説検証という活動が受け入れられない理由はいくつか考えられる。

・時間がかかりそう。今目の前のことで忙しく、時間が取れない。
・得体がしれず、価値が分からない。
・どうやって進めていくかイメージが無い。
・それは開発チームの役割ではない。

 まず、ぼんやりとしたイメージだけで話していても前に進むことはないから、どういう活動で、どうやって進めていくのか一歩具体化する必要がある。ここはお誘いする方が何らか手がかりを持っておきたいところ。仮説検証の情報も世の中に転がり始めている。私の提供物でいうと、「カイゼン・ジャーニー」や「正しいものを正しくつくる」がある。

 後者の青い本は、まさしく仮説検証の必要を説くために提供したものだが、厚みがあるのでサマリを知るにはSlideshareの方をあたってもらいたい。

 もう3年前の内容ではあるが、説明を駆け抜けるには私の提供するslideの中では収まりが良い。

 理解を耕したところで話が進めばよいが、それでも仮説検証を日常に取り入れていることにまだ抵抗を感じるだろう。どのくらいの時間をかけて、どういう展開を期待すれば良いのかがピンと来ない。見切り発車すると、途中で頓挫するか、ろくに結果も出ずに残念な終わり方(評価)がくだされる。

 ここまで来ると「アジャイル開発にどう取り組めば良いか分からない」といういつもの問題とだいたい構図は同じになる。思い描く理想的な状況に対して、現実の出発点がかけ離れすぎている。勢いで乗り越えようとするが、求められる「変化の傾き」が急すぎて、思うような結果が出せない、周りがついてこない。

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 やがて、「これまでの何か」からの重力にひかれて、新たな一歩は無かったものとなっていく。

 必要なのは「段階の設計」だ。理想的な状況に至るまでの「段階」を構想し、最初の段階に必要な敷居を圧倒的に下げる。仮説検証で言えば、まずは青い本を輪読しようでも、チームで研修を受けてみる、識者の話を聞きに行ってみる、そうした知識固めから入る段階が一つ考えられる。

 これを期間をおかずにぼんやりと進めてしまうと、だらっとなりがちなので、一つのプロジェクトのように扱う。「時間がかかりそう。今目の前のことで忙しく、時間が取れない。」こうした答えにも、活動の段階化は一つの合意手段になるだろう。

 つまり、段階の設計とは、ある到達したいところまでに必要な段階を設置し、そこに時間軸を与えて、変化に必要な傾きを調節する試みと言える。もちろん、こうした活動を最初に作った青写真どおりに行うことが目的ではない。最初の段階を終えた段階で、全体の青写真を見直す。必要な変化を加えながら進めていく。

 2月に出す本はこの段階をテーマにしている。詳しくは書籍にあたってもらいたい。


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