揚水発電所の同期電動機の始動方式について

揚水発電所の揚水時における同期電動機の始動方式に取りまとめてみました。それぞれの特徴に加え、始動時にどのような影響があるか要点を抑え、イメージできるようになりましょう。

【制動巻線始動方式】
突極型同期発電機の回転子磁極頭部に制動巻線を施し、界磁回路を短絡し、かご型誘導電動機のように自己始動する方式です。

〔制動巻線とは?〕
制動巻線は、かご型誘導電動機の回転子末端に取付けられる短絡環のような役割を果たしています。

かご形誘導電動機の始動時のように、突入電流が大きくなるため、減電圧始動方式が採用されます。電動機容量が大きくなるほど、負荷も重たいので、始動トルクを確保しつつ、始動入力を小さくなるするため、減電圧するための装置(リアクトル始動、コンドルファ始動装置等)が大型になりますので、設備コスト、保守面から、小中容量機に対して採用されます。
また、他の始動方式と比較して、最も経済的になります。

【同期始動方式】
同期電動機とその他の発電機(構内に隣接する発電機、近傍の発電所にある発電機)を停止した状態で、電気的に接続し、同期化力(同期速度に引き込むための力)によって、周波数を零から定格値まで徐々に上昇させていく始動方式となります。
電気的な接続さえすれば、電動機に励磁できますので、設置面においては、物理的制約がないため、直結電動機始動方式と比較して有利になります。

【直結電動機始動方式】
同期発電機と、巻線型誘導電動機を同軸上に接続し、巻線型誘導電動機の二次側抵抗を変化させることで、始動トルクを制御し、周波数を低周波から定格値まで上昇させる始動方式です。
同期発電電動機と巻線型誘導電動機の軸を直結するため、軸長が長くなるので、建屋が大きくなり、振動面で不利になります。巻線型誘導電動機は系統から電源を受けていますので、投入時に若干の系統の動揺を与えてしまいます。

【サイリスタ始動方式】
サイリスタを予め励磁しておき、サイリスタで発生した交流電力を同期発電電動機に加え、徐々に加速する方式です。
保守がやや煩雑です。

[H28.第一種]

次の文章は,揚水発電所における揚水時の同期発電電動機の始動方式と水車の動作に関する記述である。

①発電電動機の界磁回路を短絡し,回転子の(1)を利用してかご形誘導電動機として始動するのは(1)始動方式である。

②発電電動機と他の発電機を停止状態で電気的に接続し,両機に励磁を加えた後に発電機を始動し,発電機の周波数を零から定格値まで徐々に増加させて始動するのは(2)始動方式である。

③発電電動機と同軸上に直結された巻線形誘導電動機の二次巻線に接続された(3)で始動トルクを制御して始動するのは直結電動機始動方式である。

④発電電動機の停止中にあらかじめ励磁を加え,(4)変換装置で発生した交流電力を発電電動機に加え,その周波数を低周波から定格周波数まで連続的に変えて加速するのは(4)始動方式である。

⑤フランシス形ポンプ水車の揚水始動時には,始動トルクを軽減するため,(5)を用いて吸出管の水面を下げる。
[解答]
1.制動巻線
2.同期
3.抵抗器
4.サイリスタ
5.空気圧縮機