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「丘の手から」 第4回 商店街がある

上永谷駅の駅前ロータリーから、一本のゆるやかな坂道が伸びている。両側は低層の商店街である。イチョウの並木が坂道の両側に続くので「丸山台いちょう坂商店街」という。

登り始めてすぐのところにドイツ・ハム&ソーセージの専門店がある。ここが再開発されて直後の開店だったらしいから創業40年にはなるだろうか。美味しい!実際、ドイツ人の友人も絶賛する。でも、イトーヨーカ堂で販売されているものに比較すればやはり高価なものになる。つまり、この周辺には、そうした差を超えて、この店のハム&ソーセージを選ぶ人が一定量暮らしているといるということだ。ここに、駅を降りた周辺のファスト風土とは異なる、この街の顔が覗く。

いちょう坂商店街には、個人店のパテシエさんが3軒、ブーランジュエリーさんが3軒、和菓子屋が2軒ある。いずれも、きのうやきょうの店ではない。商店街の主役はあくまでも「個人店」で、モスバーガーさんでさえ、うちの奥さんが子どもの頃からある店舗。常連さんがいて、お客さんと会話があるお店だ。

(歴史な連続性にも奥行きがある。あるコンビ二のオーナーは江戸時代から、この地で酒屋を営んできた一族の末裔だ)

こういうことって、お店側の努力もさることながら、周辺の住宅地にも、こうした店舗を支える力があるということだと思う。「よりいいものをよりやすく」では、人間的な店舗は保たない。すぐにシステマチックなチェーン店にやられる。だからこそ、商店街が商店街の体を保っているところがレア・ケースっていう時代になったのかもしれない。

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