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アンデルセンの「はだかの王様」

子どもの頃、アンデルセンのはだかの王様という話を読んだ時は、「そんなアホな話があるか?さすがにそんなの騙されないだろ!」と思ったものですが、大人になって社会に出たら、本当にみんなそんな風に騙されるんだ!と驚きました。

騙されているのか、自分を自分で騙そうとしているのか、本当に洗脳されていて王様が素敵な服を着ているように見えるのか、分かっちゃいるけど言ったら殺されると思っているのか?言いたいけどいまいち勇気が出ないだけなのか。誰かが言ってくれたら自分も応援するんだけどなあ、なのか。

私は、両親が少数派意見の支持者だったためか、寓話「はだかの王様」に見られるような同調圧力の影響が普通より少ないみたいです。

大手製造業のIT部門に出向していた時に、頭のいいちゃんとしたエリート君が、「僕の口からはとても、〇〇さん(その会社で権威のあるエンジニア)の決めた仕様を否定するような事は言えません」と言っていました。しょうがないから私が言ってやろう、と思って私が「たいへん恐縮ですが、〇〇さんの決めた仕様は検討の余地があると思われます」みたいな感じで丁寧に意見を言ったら、「あ~!言っちゃったよ・・・」と、まるで言ってはいけないような空気感が漂いました。

”おや、あなたの口から言えないみたいだったから私が言ってあげたのに。感謝してもらいたい所だが・・・”、と私は怪訝に思いました。だって、誰も言わなかったら問題が解決しないのよ。問題が解決しなかったら結果的に困るのは私たち全員なのよ?、と。

私はこの時の事を思い出す時に、いつも火事を連想します。火事が起きているのに、誰も通報しなかったら、全焼してしまいますよ?そうしたら私たちの家も、燃えてしまいますよ?!福島原発事故みたいなもんですよ。安全じゃないのに安全だって言って身内でかばい合ってたら、大災害ですよ。

もう一つ思い出すのが、20年ぐらい昔に、バグのあるプログラムを大々的に配布して、そのあと倒産してしまったソフトウェア会社がありました。自社の間違いを会社の中で指摘できなかったら、そんな風に倒産してしまうかもしれませんよ。

同調圧力、権威主義、縦社会、島国根性・・・。「権威ある〇〇さん」も、広い目で見れば「私たちの組織の一員」。私たちの組織がヘマをすれば困るのは私たち自身ですよ。どんなにエライ人だろうが、社長だろうが首相だろうが、間違ってたらそれを謙虚に認めて、修正しましょうよ。それがひいては自分たちのためです。

ちなみに、日本人だけが同調圧力に弱いと考える人が多いと思いますが、私が今住んでいるブラジルでも、似たような現象があります。ブラジル人は、近くにいる人の機嫌を損ねるのを極端に恐れていて、「これを言うと機嫌が悪くなるぞ!」と思われる事を言えない人が多いです。

「はだかの王様」もデンマークのアンデルセン作ですね。つまり、全世界的に何かしら「言いにくい真実」を集団ヒステリー的にごまかしてしまう風潮があるという事です。中世の魔女狩り、コペルニクスの地動説とか。キリストでさえ、権力者から罪人扱いされて死刑にされちゃったんですものね。

漫才コンビ、ツービートの「赤信号、みんなで渡れば怖くない」はそういう風潮を皮肉っていた名作でしたね。

読んでいただき、ありがとうございました。

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