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鹿児島ユナイテッドの今と未来

2021年のJ3リーグも終わりました。昨年一年間鹿児島ユナイテッドの戦い振りを全戦フォローさせていただきました。つきましては今シーズン全体を振り返って見ましょう。

(ちょっと遅いという突っこみはなしにしましょうww)

まず私が今年、急に鹿児島ユナイテッドをBlogでフォローしようかと思ったかというと、それは横浜FMのヘッドコーチだった、アーサー・パパス氏が監督に就任したからです。横浜FMは攻撃的なサッカーで2019年シーズンに最強の川崎フロンターレを退けて優勝したクラブです。また横浜FMのポステコグルー監督はは今世界的にブーム(?)になっているポジショナルプレーを採用している監督です。

そんなクラブからヘッドコーチが鹿児島の監督に就任するというのは期待するなと言う方が無理でしょう。ただコーチと監督は仕事の内容が違うことも承知しています。一見するとこのふたつの仕事は同じように見えるかもしれませんが、まったく別の仕事になります。

簡単にお伝えするとコーチはトレーニングをする人で、監督は決める人です。これがややこしいのは、これを1人の監督がやる場合もあれば、完全に分ける人もいます。なのでコーチとして優秀でも、監督しては優秀ではない場合もありますし、その逆も当然あります。さらにいうと両方優秀という人も稀にいます。

監督は基本的なチームの戦術や誰を先発され、誰をベンチにいれ、誰を途中交代させるかと言うことを決めなければなりません。監督が決める基本戦術をトレーニングに落とし込んで、選手が試合で実行できるようにするのがコーチの仕事になります。

そういうわけで、パパス監督のサッカーを読み解いて、鹿児島ユナイテッドのサポーターの皆さんにわかりやすく紐解こうと考えたのがこのブログを書き始めたきっかけでした。

このブログを最初から読んでいた人(多分あまりいないとは思いますがww)は、途中から内容が変化したことに気がついた人もいるかもしれません。それについても後々お話しさせていただきます。

今年の鹿児島を大きく分けるとパパス監督が退任される前の前半と上野監督が就任後の後半に別れるのは異論がないと思います。途中の大島コーチが就任していた時期は短いので、ここは対象には含めないとします。

なのでまずはパパス監督が就任されてからご家族のご都合で退任された前半部分を振り返ってみます。まずはパパス監督は言及はされていなかったと思いますが、ポジショナルプレーの考えをチーム戦術に取り入れようとしていたと思います。彼はインタビュー等でもそのようなことを離していませんが、試合を見ているとそう感じました。

ただブログの中でも指摘していましたが、このポジショナルプレーは監督が来て1ヶ月練習したからと言って、簡単にできるようにはなれません(正確にはポジショナルプレーは戦術ではありませんが、わかりやすくするためにこう標記させていただきます)。だから今年一年かかったとしても、この戦術を身につけることができればと思っていました。J3は降格もないですしね。

パパス監督の下で、GKからショートパスをつないで主体的に攻める戦術はJ3でやるのは簡単ではありません。J1レベルのでも難しいかもしれません。正直、J3で勝つことだけ考えれば守ってカウンターの方が効率がいいと思います。ただそれでは見ているサポーターからするとおもしろくないですよね。なので昨年は負けていても、どの程度チームが成長しているのかという視点から論評をさせていただきました。

実際、昨年の鹿児島は連勝が少なく、安定した戦いができていたわけではありません。

ポジショナルプレーはかなり頭脳を使う戦術になります。基本的には個人戦術やグループ戦術は身につけた上で、チームとしてどのようにボールを前進させて、フィニッシュに持ち込むか緻密に設計されています。日本では育成年代からそのようなトレーニングを受けてきていませんので、これを短期間でできるようになるのは、かなりの困難を伴います。

ポジショナルプレーで名をはせたペップ・グラウディオラ監督でさえ、イングランドに行った1年目は優勝を逃しています。それくらいものにするのが難しいやり方です。

育成年代でかなり自由なプレーを許されてきた選手達にとって、これはかなり堅苦しく感じる選手もいたかもしれません。

サッカーはチームスポーツです。これは一見当たり前の事のように思えますが、実際これをプレーで表現するとなるとかなり難しくなります。

これは個人を殺してでもチームに貢献しろというわけではなく、チームとしてある選手の欠点を補いながら、選手の長所を活かすための戦い方でもあります。なのでよくある個人か組織のどちらを優先するのかといったレベルの低い話ではなく、個人を活かしながら、チームが活性化して勝つことを目指すことになります。

ところがそのパパス監督がシーズン途中で離脱という予想外の出来事が起こりました。

上野監督が7月に就任されてすぐに東京五輪開催のためにリーグが中断して、1ヶ月ほどトレーニングする機会がありました。これは新監督にとってはすばらしいプレゼントでした。毎週、リーグ戦を戦っていると強度の高い戦術的な練習ができるのは週に1回か2回くらいですから、集中的に練習できる機会は幸運だったと思います。

ただその後も上野監督が指揮されてからも、チームとしての成長は見られず、勝ったり負けたりの試合が続きます。これも監督が代わったばかりなので、仕方のない面もありました。上野監督的には、シーズン途中から引き継いだわけですから、今あるチームのベースを活かしながら指揮をしていくしかないわけです。シーズン途中からまったく別のサッカーをやるのも現実的ではありません。

他のクラブは鹿児島がGKからパスをつないでくるのがわかっているので、前からプレスをはめてくるのが対鹿児島の定番戦術でした。そして残念ながら鹿児島は多くの場合でそのプレスをはがすことができませんでした。

ポゼッション率がリーグでNo.1となり、攻撃的なサッカーを見せてくれた鹿児島。しかしながらなかなか結果には結びつけられませんでした。

▽今シーズン展望

J2から降格した1年目と2年目は補償金のような形でリーグから資金補填があります。そして3年目からはゼロになります。鹿児島は来年J3降格3年目のシーズンになります。それはつまり選手に払える資金が少なくなると言うことです。

酒本選手は自分でもまだやれると言っていますし、私もできると思います。ただ推測するに酒本選手は鹿児島の中でも高給だったので、鹿児島としては予算的に契約できなかったのだと思います。

J3沼という言葉がありますが、J3へ昇格してきて資金も増え、選手も獲得し勢いでJ2へ昇格するも、J3へ降格した場合、さきほどの補填金がなくなる2年目までが勝負だと思います。3年目になると資金的に厳しくなり、選手の補強どころか、現有戦力を維持するのも難しくなります。

そうすると資金的に余裕のある他のクラブと競争してJ2に上がるのが難しくなり、J3に長期的に留まってしまうことを言います。この2年間はコロナ過もあり、クラブの財政状況も厳しかったと思います。

個人的には鹿児島がJ1に行って優勝争いをして欲しいとまでは願っていません(そうなったらうれしいですが)。基本的にサッカークラブは資金面で優位なクラブが強いです。サッカーというゲームは優秀な選手を集めた方が勝つ確率が高くなりますし、欧州で選手の移籍に100億円とかの大金が動くのはそのためです。

ただお金が全てではないも事実です。そこがサッカーの面白いところですよね。戦い方次第では資金が豊富なクラブと戦うこともできます。ただ大分を見ていても長期的には厳しかと思います。

鹿児島県は県別のGDPでいえば26番目です。農業は盛んですが付加価値の高い製造業やIT産業はそれほどではないですからね。J1で下位を争うくらいならJ2やJ3で優勝争いしてもらった方が、いいと思っています。

これは大きな希望を持つなという意味ではなく、現実的にそうだということです。

ただ鹿児島に希望があるのは、鹿児島の観客動員数が一番だったということです。やはり地元に根付かないクラブは長期的には厳しいですからね。なにより地元に愛されないクラブは存在価値がありません。そういう意味では鹿児島の将来は楽観しています。私がいつもブログで鹿児島県民160万の方へと呼びかけているのはそういう意味があります。

ただ今年に関しては正直かなり厳しいかなと思っています。チームの主力がクラブを去り、補強も限られた状況では。契約更新のニュースより期限付き移籍終了や完全移籍で出て行く選手の方が多い感じです。

正直、攻撃の選手はほぼそう取り替えの状況で、どういうチーム構成になりそうなのかもまだわかりません。

1月10日時点でクラブから移籍する選手が13人、新たに移籍してくる選手が13人。酒本選手が引退というのが、現時点での選手構成です。すべての選手が揃ったわけではないのですが、昨年までのチームとは大きく変わったチームになるはずです。特に前線の選手はほぼ総入れ替えの状態です。

今年は大嶽直人氏が新監督となります。

少し心配なのは「ハードワークが強くアグレッシブに闘えるチーム作り」と言われていることです。プロなのでハードワークをするのは当たり前という前提に立てば、そこからどうするかを聞きたいところです。ただここは開幕を待ってから判断したいと思います。

昨年の鹿児島はボールをポゼッションはできているけど、守備のフェーズでアグレッシブだったかというと、疑問符がつく場面もあったので、うまく融合できればいいのですが。

昨年までの攻撃的なサッカーに、アグレッシブな守備が追加されると、いいかなと思います。昨年優勝の熊本などもアグレッシブな守備で失点数が少ないのが優勝の大きな要因でした。

シーズン前の展望は、また機会があれば書かせていただきたいと思います。それではまた今年もよろしくお願いします。

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